2024年03月29日( 金 )

サムスン、イメージセンサー1位のソニーの牙城に挑戦(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 「第4次産業革命の目」と呼ばれるイメージセンサーは、スマートフォンの普及により市場が急激に拡大した。イメージセンサーの需要は今後、自動運転、ドローン、産業機器にも拡大すると予想されており、イメージセンサー市場への注目が格段に高まっている。

 ソニーのイメージセンサーの主要顧客はアップルとHUAWEIであるため、米国の対中制裁により、売上高の20%ほどを占めていたHUAWEIへの販売に支障をきたした。ソニーは市場の先行きが不透明であることを勘案し、来年3月まで投資予定額を400億円縮小し、6,500億円に変更したと明らかにした。また、2021年竣工を目指して1,000億円を投資し、長崎工場の増設を進めているが、増設のスケジュールも少し遅らせる可能性があることをにじませた。

 専門家は、サムスンのみでなく、SKハイニックスもイメージセンサー事業に投資を拡大しており、市場競争が激しくなる可能性があると指摘。一方、ソニーは数多くのブレイクスルーを引き起こし、業界をリードしてきた存在であるため、いまだに堅調だという評価もある。

 ソニーの強みは、動作スピードが速くノイズが少ないことだ。一方、ソニーに対抗するサムスンの強みは、画素数の多さとメモリ事業で培った工程技術などである。

 業界は、イメージセンサー市場におけるソニーとサムスンの対決を見守っており、ソニーが首位の座を守り続けるのか、それともサムスンの追い上げが続くのか、目が離せない。

 最後に、今後のイメージセンサー市場のトレンドを紹介する。

 カメラに複数のイメージセンサーを搭載して高画質を実現する「多眼化」の流れは、今後も止まらないだろう。Omdiaの調査によると、1台に2つ以上のカメラを搭載したスマートフォンの比率は、18年には全体の半分以下であったが、20年には約8割を占めるまでに増えた。現在はイメージセンサーが3つ以上搭載されたカメラの付いた機種がスマホ業界をリードしている。

 コロナ禍によりスマホの需要は一時的に減少しているものの、スマホの需要は、24年に16億台、29年に18億台と今後も拡大すると予測されており、イメージセンサー市場が急速に拡大することが容易に想像できる。

 さらに、スマホ以外でもっとも有望視されるイメージセンサーの将来の市場として、自動運転などの車載半導体があり、その動向にも注目すべきだ。イメージセンサーは、画像を判別する「目」として自動運転に欠かせないためだ。ソニーは車載半導体市場においてはまだトップではないが、トヨタなどと協力して取り組んでいる。サムスンにとって、ソニーを追い抜くためにも車載半導体において成功することが重要であり、同様に注力している。

 イメージセンサーは、その他にも工場自動化などの産業機器、ドローン向けなどの大きな需要がある。イメージセンサーという大きな市場をめぐるソニーとサムスンの闘いは熾烈さを増していくだろう。

(了)

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