2024年03月29日( 金 )

杉田副長官招致無き国会審議無し

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 NetIB-Newsでは、「野党は杉田副長官の国会招致を求めて、与党が応じなければ、臨時国会に提出される正当性のない法案の審議に応じないことを示すべきだ」と訴えた11月9日付の記事を紹介する。


IOCのバッハ会長が来日して菅義偉首相や東京都の小池百合子知事と会談するという。
11月15日に来日し、18日まで滞在すると報じられている。

菅内閣は2021年の五輪開催を強行する姿勢を示しているが、欧州ではコロナ感染が急拡大している。
日本でも陽性者数が急増している。
20年秋から21年春にかけての感染再拡大が懸念されてきたが、その懸念が早くも現実化しつつある。
欧州各国は再び行動抑制を強めている。

この状況下でのバッハ会長の来日であるために、五輪中止の打診ではないかとの憶測も生まれている。

1日当たりのコロナ死者数は再拡大に転じている。
昨年4月に1日当たり死者が週平均で6,799人のピークを記録して以来、5,000人規模に減少していたが、10月末から11月初めにかけての1週間の1日当たり死者平均値が6,586人に達した。
昨年4月のピークを更新する勢いが示されている。

東アジアでのコロナ死者が少ない状況に変化はないが、菅内閣は五輪実施に向けて海外から日本国内への人の移動制限を緩和する方針を示している。

感染が急拡大している欧州からの人の移動を拡大させれば、連動して国内での感染が再拡大する可能性は高い。
また、菅内閣はGo Toトラベル事業を全国展開しており、この結果として日本全国に感染が広がっている現状もある。

菅内閣はコロナ感染拡大の影響が限定的であるとの判断を前提に置いて、Go Toトラベル事業の全国展開を推進し、感染拡大に対する警戒姿勢を示していない。

日本のコロナ感染死者数推移から見れば、過度の警戒強化は必要ないといえるが、その一方ですべての国民に対するワクチン接種を政府が無償で実施する方針を示している。

2つの施策は完全に矛盾する。

コロナ感染拡大に対する警戒を緩めるなら、国民全員に対するワクチンを政府が一括買い上げる必要は生じない。
ワクチン接種にかかる事故発生時の損害賠償責任を国が肩代わりする必然性も生じない。

ところが、菅内閣はコロナ感染拡大に対して警戒的な姿勢を取らないのに、ワクチンについては巨額の財政資金を投じて一括買い上げ、賠償責任肩代わりの措置を取ろうとしている。
コロナ騒動を背景にワクチン事業者が濡れ手に粟の巨大利得を獲得することを政府が全面支援しているように見える。

コロナ感染拡大の影響が欧米と東アジアでまったく異なる様相を示す。

欧米の被害状況は極めて深刻である。
この被害状況が存在するなら、感染拡大阻止に対する徹底的な政策対応が必要になる。

他方で、東アジアの被害状況は極めて限定的だ。
通常のインフルエンザによる被害をはるかに下回っている。
この状況を踏まえるなら、政府が巨額の財政資金を投下してワクチンを一括買い上げる必要性は乏しい。

五輪開催の場所は日本だが、観客ありでの開催を強行するなら、人の移動がもたらす影響を考慮する必要が生じる。

欧州で再び感染が拡大し、コロナ死者数も再び増加している。
この状況下で海外からの観戦者受け入れは感染者受け入れになってしまう。
欧州の現況を踏まえてIOCが有観客開催に難色を示す可能性は高い。

無観客での開催が検討される可能性があるが、五輪開催は五輪開催時だけを考慮して決定できない。
五輪参加選手が確定していない競技種目も多数存在する。
これらの競技種目では十分な準備期間が必要になる。

予選に参加する選手が十分な事前練習を実行できなければ公正な代表選出を行えない。
五輪競技を有効なものにするためには、五輪開催前に十分な練習期間が確保される必要もある。

20年秋から21年春にかけて、欧米で感染の本格的な再拡大が生じる場合、これらの条件は満たされない。
これらの状況を踏まえてIOCが21年の東京五輪について新たな提案を示す可能性は低くないと見られる。
日本政府は現実的な対応を検討すべきである。

新型コロナについては未知の部分が多い。
人口推移の統計から想定される死者数に対して現実の死者数が上回る「超過死者数」の推移を見ると日本と米国で著しい相違がある。

日本では大規模な超過死者数が観測されていないが、米国では本年に入ってからの超過死者数が30万人に達している。
コロナによる死者が30万人規模で存在するとの推定が行われている。
欧州の超過死者数は17万人程度とされている。
日本におけるコロナ死者数は限定的だが、欧米におけるコロナ死者数は大規模であると推定されている。

コロナ被害が軽微であるのは東アジアの特徴である。
中国、台湾、韓国の被害が限定的だ。
しかし、世界規模でみると被害は軽微であると言い難い。

行動抑制すれば感染が抑制される。
しかし、行動抑制が行われなければ感染が拡大する。

感染拡大は下記よりも冬季に顕著である。
冬季のほうが室内の換気が行われにくいこと、冬季のほうが湿度が低くなることが影響していると考えられる。

菅義偉内閣はコロナ被害が軽微であるとの判断を基礎に置いてGo Toトラベル事業の全国展開を推進している。
しかし、その代償として日本国内でも感染再拡大が観測されている。
しかし、菅内閣は反応しない。
感染再拡大を容認するスタンスを示している。

日本国内の被害状況を見るならば、コロナに対する過度の対応は不要と考えられる。
しかし、この政策スタンスとコロナ感染症を第2類相当感染症と指定していることは大きな矛盾だ。
コロナ感染症を第2類相当感染症と指定したことが大きな混乱を生む背景になってきた。

また、コロナ感染拡大を容認するなら、コロナワクチンを政府が一括買い上げすること、コロナワクチンの損害賠償責任を国が肩代わりすることは矛盾する。
コロナワクチンを政府が巨大な財政資金を投下して買い上げる正当性がない。
菅内閣がワクチン買い上げを強行するなら、それは、ワクチン事業者に対する不正な利益供与になる。

また、安全性が確立されていなワクチンを国が買い上げて、ワクチンで事故が発生した場合の損害賠償責任を国が肩代わりすることの正当性も存在しない。
感染拡大を容認する感染症について、安全性が確立されていないワクチンを政府が一括買い上げる正当性も存在しない。

菅内閣が示す施策の矛盾を明らかにする必要がある。

臨時国会に提出される法案・条約批准案は10本に絞られたと伝えられている。
このなかに、ワクチン接種の損害賠償責任を国が肩代わりする法案が含まれている。

臨時国会では日本学術会議会員任命拒否問題が最重要事案として取り上げられている。
菅義偉首相は日本学術会議が提出した105人の会員候補名簿を杉田官房副官が精査して、5人を候補から除外して、菅義偉首相が99人の候補者を任命したことを明らかにした。

杉田和博官房副長官の行動は明白な違法行為である。
野党は杉田和博官房副長官の国家参考人招致を求めている。
しかし、与党がこれを認めていない。

臨時国会ではワクチン損害賠償責任免責法案以外に種苗法改定案が提出されている。
いずれも正当性のない法案だ。
野党は杉田副長官の国会招致を求めて、与党が応じなければ、他の法案審議に応じないことを示すべきだ。
数で劣勢な野党陣営は効果的な国会対応を展開する必要がある。

与党が杉田副長官の国会招致に応じない正当な理由がない。
与党が国会に真摯な姿勢で臨まないなら、野党が悪法の審議に応じることを拒絶することは正当化されるはずだ。

判断するのは主権者である国民だが、野党の条件闘争を主権者は支援すべきだ。


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