2024年04月19日( 金 )

コロナ禍にあっても変わらないもの 「お客さまの想いに実直に応える」

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(株)アートライフホールディングス
(天国社グループ本社)

「コロナ蔓延下」での葬儀のかたち

 天国社は現在、福岡県内に姪浜会館、福岡会館、油山会館、春日会館、伊都会館と5つの葬祭場を構え、葬祭をはじめとした関連事業を展開している。

オンライン葬儀の様子

 コロナ蔓延下において同社が執り行う葬儀もかたちを変えてきており、お通夜は親族のみが参列し、一般の参列者には午後6時から午後8時までの間といったように時間をずらして参列してもらっているという。会場の至るところに消毒用アルコールを設置したうえで、参列者にはマスクの直用を義務付けている。マスクを忘れてしまった参列者に対しては1枚30円でマスクの販売も行っている。また、参列者に席と席の間隔を空けて座ってもらい3密を避けるなど、万全のコロナ対策を講じている。

 また、「遠方にいて葬儀に参列できない」「コロナ感染が気になるので葬儀の参列を自粛したい」という要望に応えるべくオンライン葬儀も開始した。オンライン葬儀はカメラを会場内に設置し、同社スタッフが葬儀を撮影。動画をライブ配信するもので、利用者はZOOMを利用し、パソコンやスマートフォンからの視聴が可能。つい先日も東京に住む大学生がオンライン葬儀を利用したという。

 新型コロナウイルス感染拡大が契機となり、前述のように葬儀のかたちも変化している。「今後、葬祭事業者に求められるものも変わってくるのではないか」という問いに同社の中井健雄社長は「もちろん、時代に応じて変えていく部分もありますが、決して変わらないものもあります。我々の基本姿勢は、これまで通り、お客さまと真摯に向き合い、お客さまが求められるものを提供していくことです」語る。

 天国社では家族葬、社葬、友人葬など、さまざまな葬儀プランを用意している。そのなかの1つである「オリジナル葬」は故人の趣味、好きだったものに囲まれた葬儀を提案するプランで、たとえば故人の好きなものがビールであれば、遺族から好きな銘柄を聞いて祭壇をビール樽のようにつくる。ゴルフが好きな人だった場合は、ゴルフボールを思わせる祭壇にするなど、故人の想いに寄り添った葬儀の提案を行っているという。

本業に邁進 小規模葬儀にも対応

天国社 福岡会館

 人口動態統計によると福岡県における死亡者数は増加傾向にあり、2006年は4万人台前半だった死者数が、15年には5万人を突破している。死亡者数の増加にともない、天国社での葬儀件数も右肩上がりとなっており、03年ごろまでは月70件でも多いぐらいだったものが、現在は月100件超。19年12月は132件の葬儀を行ったという。

 現在、葬祭場の数は増加傾向にあるというが、「私たちの業界は先行者利益が大きく、これから地価の高い福岡都心部に大きな斎場を建ててもメリットは少ない」と中井社長は語る。

 天国社の今後の展望について尋ねたところ、飲食業など他業種に進出する予定はまったくなく、本業である葬祭業とそれに付随する関連事業に今後も力を入れていくとのこと。15年に設立された持株会社(株)アートライフホールディングス(HD)には、不動産事業部である(株)アートエステートがある。アートエステートでは、たとえば「家主である夫が亡くなったが、子どもは東京にマンションを購入し、帰ってこない。残された妻が1人で住むには広すぎる」などのケースで家の売却を迫られた場合に買取を行っている。

 「我々は不動産が本業ではないので、そこで利益を出す必要がありません。だから高い価格での買取が可能なのです。不動産事業は、あくまでもお客さまのために行っています」(中井社長)。

 アートライフHDでは15年に日本人の葬儀に対する意識の変化に対応すべく、直葬、家族葬を扱う(株)市民葬祭を設立。現在、福岡西ホールと福岡南ホールという2つの葬祭場で葬儀を執り行っており、今後ますます需要が拡大していくだろう直葬、家族葬に対するニーズに対応していく構えだ。

質の高い人材教育 優秀な人材が結集

 中井社長に職員の採用状況について聞いたところ、「例年になく好調で、今年は非常に優秀な新卒4人が応募してくれ、内定の受諾をいただきました。新型コロナの影響で買い手市場となったことも影響しているのかもしれません」と中井社長は推測するが、買い手市場であることだけが、優秀な若い人材が集まる要因ではないだろう。

 同社では新卒の採用が決まると7月から入社するまで、彼ら彼女らに月に1回集まってもらって食事会を行い(今年は新型コロナの影響で実施できていない)、翌2月には同社が全額負担して旅行に連れて行くという。「昨年はディズニーランドに連れて行きました。旅行場所の選定にあたっては新卒社員に『なぜ、その場所に行きたいのか?』をプレゼンしてもらいます。そうすることでプレゼンテーション能力の向上も図っています」(中井社長)。入社後は、まず1週間「合宿研修」を行い、なるべく早く現場に出られるようにトレーニングを行っているという。

 こうした同社の質の高い人材教育が評判を呼んだ結果、次世代を担う優秀な人材が続々と集まるようになったことは想像に難くない。「地域トップクラスの葬祭業者」という地位を確固たるものとしている同社。今後も優秀な多くの人材とともに進化・発展を続けていくことだろう。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中井 健雄 
所在地:福岡市西区姪浜駅南2-20-25
設 立:1987年6月  資本金:2,000万円
TEL:092-883-4949
URL:https://www.tengokusya.co.jp


<プロフィール>
中井 健雄
(なかい たけお)
1974年7月14日生まれ。福岡市西区出身。イギリスパングボーンカレッジ卒。メリルリンチ証券を経て、2001年に天国社に入社。14年6月に代表取締役社長に就任。趣味は旅行、食べ歩き

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