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2020年11月17日 13:50

「後出しジャンケン」のニトリが勝利~DCMとの島忠争奪戦の顛末(2)

 (株)ニトリホールディングス(以下、ニトリ)とDCMホールディングス(株)(以下、DCM)による(株)島忠の争奪戦では、島忠がDCMと一度結んだ経営統合の合意を撤回し、より好条件を提示したニトリに乗り換えた。 北海道発祥の2社による異例な買収劇となった。DCMによる友好的なTOB(株式公開買い付け)が進んでいたなか、「後出しジャンケン」のニトリに軍配が上がった。

島忠と大塚家具は、桐たんすの三大産地、春日部市が発祥

 島忠と大塚家具の発祥の地である埼玉県春日部市は家具の歴史をもつ街であり、静岡県藤枝市、新潟県加茂市と並んで、桐たんすの三大産地である。
 春日部はなぜ、桐たんすを主産業としてきたのか。その由来を江戸初期までさかのぼると、17世紀前半に日光東照宮の造営にかかわった宮大工が、桐が自生していた「糟壁(かすかべ)」に住み着いたのが始まりとされる。

 春日部で生まれた家具専門店には、桐たんす職人を創業のルーツにしているという共通点がある。島忠は1893年に島村忠太郎氏が「島村箪笥製造所」を立ち上げたことが起点。大塚家具は1928年に、桐たんす職人の大塚千代三氏が開業した工房が前身。両社とも桐たんすの製造から家具の小売に転じた。

 島忠は90年代まで、家具専門店として日本一の売上高を誇っていたが、2000年に大型店を次々とオープンした大塚家具に首位の座を奪われた。08年のリーマン・ショック後には、その覇者は低価格を標榜するニトリホールディングスへと移っていった。

 大塚家具は(株)ヤマダホールディングスの傘下に入り、創業家出身の大塚久美子社長は退任し、島忠もニトリの完全子会社になる。奇しくも、春日部発祥の2社は、その歴史を閉じる。

島忠は家具とホームセンターの関係が悪かった

 島忠は1960年以降、家具製造から家具小売に転じ、78年にホームセンターに進出した。「家具の島忠」という圧倒的な知名度をもつ島忠が大塚家具やニトリに敗れた原因は、家具とホームセンターが、互いにライバル視する関係であったことによる。家具出身者は、祖業の家具と後発のホームセンターを一緒にすることに抵抗があった。島忠の取締役や社長はかつて家具出身者で占められており、2017年に就任した岡野恭明社長も家具閥だ。

 「家具と日用品は一緒に会計できません」。島忠の店舗にはこのような注意書きまで掲載されており、本社の商品開発や人事、営業、仕入れから会計、販売スタッフまですべて別々であった。

 島忠の家具事業の落ち込みは激しく、17年8月期は、ホームセンターは前期比で5%増えたのに対し、家具の売上は(同)10%減った。加えて、家具の売上はホームセンターの4割しかない。18年にようやく部門統合に踏み切り、好調のホームセンターが不振の家具を救済した。創業事業である家具出身者のプライドの高さが、島忠の凋落の原因であった。

 新型コロナの感染拡大で、日用品や園芸などを扱うホームセンターの需要が伸びたため、島忠の20年8月期決算は、営業収益は前期比5%増の1,535億円、純利益は同6%増の64億円と増収・増益となったが、それでも生き残りをかけて、買収提案を受け入れた。
 ホームセンター部門は同業のDCM、家具部門はやはり同業のニトリの傘下入りを望んでいたという。

ホーマックを中核にホームセンターが統合

 ホームセンター業界は2000年代に入り、市場の成熟化で伸びが止まった。ドラッグストアの市場規模は、03年度まで4兆円弱とホームセンターと拮抗していたが、現在は7.5兆円を超える。
 ドラッグストアは採算の良い医薬品や化粧品という「ドル箱」をもち、さらに日用品や飲食料品を安く販売して、スーパー、コンビニ、ホームセンターから顧客を奪ってきた。

 その状況に危機感を抱いたホームセンター企業は再編に動いた。06年9月、業界6位のホーマック(株)(札幌市)、同7位の(株)カーマ(愛知県刈谷市)、同9位のダイキ(株)(松山市)が経営統合し、持株会社DCMジャパン・ホールディングス(株)(現・DCMホールディングス)を設立した。

 中核は売り上げ規模がもっとも大きいホーマック。ホーマックは1951年に北海道釧路市で設立された金物店「石黒商店」を由来とする。これら3社を単純に合算した売上高は、1位のカインズを抜き、業界トップに躍り出る。

 DCMは15年7月には、青森地盤の中堅でジャスダック上場の(株)サンワドー(現・DCMサンワ)を傘下に収め、16年8月には流通大手のユニー(株)から、ホームセンター8社を買収し、16年12月には、山梨県地盤の(株)くろがねや(現・DCMくろがねや(株))を株式交換で完全子会社化した。

 3社統合は“弱者連合”と揶揄されたが、DCMは今やホームセンター業界のトップランナーとして快走してきた。

(つづく)

【森村 和男】

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