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2020年12月03日 10:03

耐震強度不足に加えマンション全体で7,000本鉄筋不足 驚愕の“殺人マンション”パークサンリヤン大橋の裁判(1)

 違法で不適切な設計に起因する耐震強度不足と柱の鉄筋不足(マンション全体で7,137本)が判明し、福岡市南区のマンション「パークサンリヤン大橋」の区分所有者が西鉄らを相手取り提訴した損害賠償事件。この裁判では、構造設計一級建築士の仲盛昭二氏ら4名が原告側の技術意見書を作成し 原告側弁護士より裁判所に提出されている。Net IB Newsでは、訴状と技術意見書の内容について詳細に報じていきたい。

 パークサンリヤン大橋(以下「本件マンション」)は、2001年3月に竣工した鉄骨鉄筋コンクリート造(以下「SRC造」)15階建てから12階建ての4棟の建物で構成されるマンションで、西日本鉄道(株)(以下「西鉄」)により分譲された。施工は西鉄の子会社・西鉄建設(株)(マンション建設当時の名称は西鉄産業)元請設計は(株)福永博建築研究所、構造設計は(有)松藤構造設計となっており、これらの企業が裁判の被告となっている。

 パークサンリヤン大橋全体で鉄筋が7,000本以上も不足していることは先日お伝えした。鉄筋不足といえば、ネクスコ中日本の高速道路工事においても、福岡の建設業者が必要な鉄筋を入れていなかったという手抜き工事が発覚し、実際にひび割れなどが発生しているところだ。ネクスコ中日本だけでなくネクスコ西日本もこの手抜き工事に対して調査を開始しており、大きな問題となっている。パークサンリヤン大橋の鉄筋不足も、根本的には、高速道路における手抜き工事と同じ次元の重大な瑕疵である。

訴状の要旨

 訴状によれば、原告は令和2年10月、自らが居住するために本件建物(パークサンリヤン大橋の原告が購入した部屋)を購入。原告が本件建物を購入する際に受領した重要事項説明書には、「本件建物には耐震性に問題がある旨のネット上の記事があるが、実際には問題はない」旨の管理組合の意見が記されていた。ここにある「耐震性に問題がある旨のネット上の記事」とは当サイトで2019年9月25日に報じた「【サンリヤンシリーズマンション】設計ミスによる耐震強度不足~違法建設危険マンションの放置は重大犯罪~」を指すものと思われる。

 原告は、管理組合の意見が記された書面を信用して代金を支払い、所有権移転登記も終えた後、インターネット上で、当サイトの上記記事を見つけ、耐震性の問題を指摘している構造設計一級建築士である訴外の仲盛昭二氏に相談し、本件マンションの耐震性に問題がないか調査を依頼した。

 仲盛氏による調査の結果、本件マンションの鉄骨柱については鉄骨部材が耐震壁方向に配置されておらず、単なるH型鋼単材の配置になっているため、耐震方向の保有水平耐力計算においてはRC造の構造特性係数を用いなければならない。しかし、SRC造の構造特性係数が不正に用いられた結果、建築基準法第20条1項2号および同施行令第36条2項1項、同施行令第79条の4,同施行令第81条2項1号イ、同施行令第82条の3,昭和55年建設省告示第1792号が定める構造耐力についての基準を満たしていないことが判明した。

 さらに、鉄筋コンクリート造(以下「RC造」)の建物である本件マンションの鉄筋コンクリート柱については、本来これをコンクリート断面積の0.8%以上の鉄筋の断面積を有していなければならないのに、0.307%の鉄筋の断面積しか有しておらず、規定に対して62%もの鉄筋が不足している状態となっていることが判明した。

 本件マンションの構造耐力では、震度6強の地震があった際に、最悪の場合は倒壊する恐れがあり、これを是正するには建替えしか方法がない。そのため、原告は被告らに対して本件マンションの建替えを要求したいと考えたが、それには本件マンションの他の区分所有者の同意が必要になるため、建替えではなく建替えのために必要な費用分の損害賠償を請求するに至ったとされている。

被告らの不法行為

 さらに 訴状には、被告福永博建築研究所および代表で管理建築士の福永博氏、被告松藤構造設計および代表で構造設計者の松藤嗣寛氏は、RC造の構造特性係数を用いるべきところ、SRC造の構造特性係数を用いた結果、建築基準法が求める構造耐力を備えないマンションの設計を行った。この係数の入れ替えは、故意でも過失であっても、「建物の建築に携わる設計・施工者等は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負っている」(平成19年7月6日最高裁判決)という判例にあるように、構造耐力の計算に使用する係数を間違い、その結果震度6強で倒壊しかねない不十分な構造耐力のマンションを設計したのであるから、被告福永博建築研究所および被告松藤構造設計らの注意義務違反は明らかである。

 被告・西鉄建設は、構造耐力が不十分な設計図面を基に施工を行い、その結果、建築基準法が求める構造耐力を備えないマンションの建築を行ったのである。同社は建築の専門家で、一級建築士を8名も擁する建築会社であり、一級建築士事務所として登録されており、本件マンションの構造耐力が不十分であることを認識していたにもかかわらず建築施工を行っており、故意が認められると考える。仮に過失であったとしても、上述の注意義務は施工者である被告西鉄建設(株)にも課せられており、構造耐力が不十分である点を問題とすることなく建築施工を行った被告西鉄建設(株)の注意義務違反は明らかである。

 被告・西鉄は、建築基準法に違反した事実を購入者に伝えることなく、分譲販売したのであるから不法行為であるとされている。

 建築基準法施行令が定める構造耐力についての基準は、震度6強~7程度の地震時において、部分的なひび割れなどは生じたとしても、最終的に倒壊、落階等の崩壊から人命を守るための最低基準を定めたものであり、これを満たしていないということは、地震時に倒壊や落階の現実的な恐れがあるからである。

 震度6強の地震で倒壊する恐れがあるという瑕疵は、マンションの倒壊が居住者および周辺住民等の生命身体財産に重篤な被害をもたらすものである以上、これを放置すればいずれは居住者等の生命、身体または財産に対する危険が現実化することになる場合に該当する(平成23年7月21日最高裁判決)といえ、平成19年7月6日最高裁判決がいう建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する。

 そして、当該瑕疵は補修工事により回復することができず、構造耐力を建築基準法上適法なものとするには建替えが必要である状況にある。原告は上記瑕疵を知らずに本件建物を取得し、本件マンションの区分所有者となった。そのため、原告には本件建物の所有者となった時点で、本件マンションの建替え費用のうち、本件マンションの区分所有の割合に応じた損害が発生している。

 原告の損害は、被告らが耐震性に問題のある本件マンションを設計、施工、販売したことに起因するのであるから、被告らの不法行為と原告の損害には相当の因果関係が認められ、被告らの共同不法行為といえるとしている。

(つづく)

【桑野 健介】

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