2024年03月29日( 金 )

新社長「新しいことにチャレンジ」 マンション新築ベースに土木強化へ

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)旭工務店

創業73年のゼネコン 実績は地場トップクラス

 1947年5月、吉弘七平氏が建築工事を目的に個人創業したのが旭工務店の始まり。96年4月には吉弘直彦氏(現会長)が実質2代目の代表取締役社長に就任し、吉弘一族による経営体制が築かれていった。

 同社は分譲マンション建築工事を主体とし、近年の売上高は100億円超で推移。採算性も好調に推移してきた。リーマン・ショック直後は、民間・公共ともに建築工事が減少した影響から、業界他社と同様に採算性が低下し、目標を大きく割った時期もあった。しかし、原価の見直しなどにより採算性は回復傾向で推移しており、2019年8月期にはついに目標を達成した。 

業績向上と比例するように、同社の財務内容は飛躍的に改善。地場トップクラスゼネコンの地位を確たるものにした。マンション新築主体ながら、公共事業の受注も増加しており、公営団地、高等技術専門学校、市総合体育館、市場解体工事などで幅広く実績がある。19年2月には、福岡市から公営住宅新築工事について、「工事成績優良業者」として表彰された。

危機を乗り越えた旭工務店の資産

 「福岡市内のマンション建築工事は、4月ごろから受注〈競争〉が始まっていた」――こう話すのは、今年4月に旭工務店の社長に就任した吉弘真二氏だ。超低金利が後押ししたことで、アベノミクス以降は福岡市内のマンション供給量が大幅に増加。地場ゼネコンにとっても大いに追い風となっていた。しかし、歴史的にもマンション供給量は約10年で一巡する傾向にあり19年末以前、すでにピークは過ぎていた。冒頭の言葉はこうした状況をふまえたもので、もちろん、長くマンション建築を手がけてきた同社にとっては、これも「折り込み済み」だ。

 これまでの実績から、地場のマンションデベロッパーが同社に寄せる信頼は厚い。マンション建築工事の発注先として、第一順位に旭工務店を置くデベロッパーは市内に1社や2社ではないはずだ。また、リーマン・ショックの経験から金融機関との関係構築も一日の長がある。その効果が財務体質やキャッシュフローの改善に現れているといえるだろう。これらは、先代(現会長)と執行部がつくり上げてきた旭工務店の大きな資産となった。

4月就任の吉弘真二新社長 初仕事は組織改革とコロナ対策

 コロナ禍で見通しにくい市況が続くが、マンションデベロッパー、金融機関との関係構築は、このような市況のために行ってきた。だからこそ、緊急事態宣言直前の今年4月に社長交代を成し遂げられたともいえる。

 新社長・吉弘真二氏は、「引き継ぎの準備は(今年)年初から始めていましたが、コロナ対応に追われて社長らしいことはできていません」と謙遜するが、「今期(9月)から執行役員制度を導入しました。このような改革を進められたのは、先代(現会長)ほか前執行部が体制をつくっていたからです。そのような基盤を社長として引き継ぎ、改めて身が引き締まる思いです」と続ける。

紫外線照射装置「ルマリエ」

 感染者数が増加傾向で推移していた時期も、出社する人員を半減させただけでなく、多くの会議をオンライン化することで可能な限りの感染対策を行ってきた。これにより、今のところ工期の遅れはほとんどないという。同社には、近年頻発する災害に備えて防災担当を置いていたが、これをコロナ対策担当とすることで比較的スムーズに乗り切ることができたという。

 コロナ対策では、関連会社の(株)ナップスが代理店となって販売している紫外線照射装置「ルマリエ」への問い合わせが増加しているという。室内の天井に近い壁面に取り付けたルマリエが紫外線を照射することで、空中に飛散したウイルスや菌対策ができるというもの。コロナ禍以前から、医療機関や、保育園、食品工場などへの設置実績があったといい、今では、ホテルやオフィス、マンションモデルルームの設置について問い合わせが増えている。

既存を軸に新規事業を強化 土木、改修、不動産、環境

吉弘 真二 社長

 創業から73年を越えた同社・吉弘真二社長は今後強化していく事業について、次のように話してくれた。「土木分野を強化していきたいと考えています。たとえばマンション新築では、まず宅地の造成工事が必要ですが、造成工事から建築工事までを我々で完結できれば、工事を全体でコントロールできるようになります。これにより、コストや工期がさらに柔軟になり、これまで以上に施主の満足度の向上を図ることができるようになると考えています」――M&Aも含めて土木分野の強化を進めていくという。

 また、大規模改修・リフォーム事業の強化も図る。短期間で安定的な受注が狙えることや、これまで竣工させてきた建物へのアフターフォローの側面もある。さらに、不動産事業を強化し、近年需要が高まっている倉庫建築への対応も進める。関連会社が手がけるルマリエの販売など環境事業も強化ポイントだ。

 マンション新築事業を基盤に、土木分野や大規模改修・リフォーム事業、不動産事業の強化などで見通しにくい市況に備える同社が、創業100周年を迎えるころにどのような変化を遂げているのか――「新しいことにチャレンジしていきたい」と締めてた吉弘真二社長の手腕が試される。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:吉弘 真二
所在地:福岡市博多区博多駅南5-10-13
設 立:1953年9月
資本金:1億2,000万円
TEL:092-431-4131
URL:http://www.napsnet.co.jp


<プロフィール>
吉弘 真二
(よしひろ しんじ)
1957年3月、福岡市生まれ。九州産業大学卒。(株)旭工務店の協業企業を経て同社に入社。社長室長、専務取締役、代表取締役副社長を経て、2020年4月に代表取締役社長に就任した。趣味は旅行とドライブ。

関連記事