2024年04月20日( 土 )

アビスパ、J1昇格への執念見せる 金沢2-2福岡

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 サッカーJ2リーグのアビスパ福岡は6日、ホームのベスト電器スタジアムにツエーゲン金沢を迎え、第39節の試合を行った。この日の天候は快晴。澄みわたった冬の青空に雲はほとんどなく、ピッチには陽射しが降りそそいだ。しかし、いったん風が吹くと急に寒さを感じ、ピッチ上ではあわててダウンジャケットを着こむカメラマンの姿も見られた。

 昇格を目指すアビスパイレブンにも、冷たい風が吹き荒れた。北国・加賀からやってきたツエーゲン金沢は、ジュビロ磐田やコンサドーレ札幌などを率いた歴戦の名将・柳下正明監督が率いる好チーム。今期13ゴールを挙げているFW加藤陸次樹、左サイドから正確なクロスを供給するDFホドルフォら要注意プレイヤーが揃い、順位こそ下位に沈んでいるものの、油断ならない相手だ。

 アビスパの先発メンバーには、FW遠野大弥、MF増山朝陽、GKセランテス、FWフアンマ・デルガド、MF前寛之、DFエミル・サロモンソンらが名を連ねる。一戦必勝の覚悟を感じさせるラインナップだ。

スピードに乗って仕掛けるFW遠野大弥
スピードに乗って仕掛けるFW遠野大弥

 最終ラインでボールをつないでチャンスをうかがう金沢に対し、パスカットからカウンターを狙うアビスパだが、両チームとも相手のストロングポイントはわかっているだけに容易に得意パターンには持ち込めない。アビスパはセカンドボールを奪えず、苦しい展開が続いた。

 13分、MF石津大介が中央に長いスルーパスを入れ、FWフアンマが反応するがこれはオフサイド。判定に不満顔のフアンマだが、前節と同様に献身的に走り、身体を張るプレーが随所に見られた。22分にはフアンマがDFドウグラス・グローリのロングフィードをペナルティエリア内で受けシュートを放つが、金沢GK白井裕人の好セーブに阻まれ得点には至らない。

前半、エリア内からシュートを放つFWフアンマ
前半、エリア内からシュートを放つFWフアンマ

 一方、金沢も16分、MF藤村慶太のスルーパスをDFホドルフォが受け、ゴール前にシュート気味のグラウンダークロス。FW加藤が合わせていれば、1点もののプレーだった。

 先にゴールを奪ったのは金沢。27分、金沢MF渡邊泰基がDFホドルフォとのワンツーで抜け出すと、ゴール前に低く鋭いクロスを送る。これに走りこんだFW杉浦恭平が合わせ、先制ゴールとなった。ここまで福岡の両サイドバック裏を執拗に突いてきた金沢の作戦が、見事に図に当たった展開だった。

 0-1とリードされた状況で前半を終えたアビスパ長谷部茂利監督は、ハーフタイムに大胆なカードを切る。FWフアンマ、MF増山、MF石津を下げ、FW山岸祐也、MF福満隆貴、MF田邉草民を投入。攻撃のカギとなる両サイドを一気に変える采配だ。

 しかし、ゲームの流れはさらに金沢の攻勢へ。49分、金沢ボールのコーナーキックをFW杉浦がヘディング。コースが変わったボールをDF石尾崚雅が合わせ、ゴール。アビスパは重い2点のリードを背負うことになった。

 こうなると、もうアビスパには攻撃しかない。左サイドのDF輪湖直樹・MF福満の連携、FW山岸のポストプレー、FW遠野のミドルシュートなどで攻め立てるが、いずれも最後の精度を欠く。一方で金沢が福岡のお株を奪う鋭いカウンターを見せて3点目を狙い、試合は迫力のある攻め合いとなった。

 後半も終わりに近づいた84分、アビスパはコーナーキックのこぼれ球をDFエミル・サロモンソンがグラウンダークロス。これにMF田邉草民が倒れこみながらも合わせ、まず1点を返した。

2得点に絡む活躍を見せた田邉草民
2得点に絡む活躍を見せた田邉草民
倒れこみながらシュートを放つMF田邉草民
倒れこみながらシュートを放つMF田邉草民

 ここで畳みかけるように攻めるアビスパは87分、FW遠野が自陣から長いドリブルを仕掛け、左サイドに開いたMF田邉にいったんボールを預ける。田邉はゴール前に走りこんだ遠野にダイレクトでパスを戻し、遠野はそのままシュート。金沢GK白井はボールに触れたものの、ボールはアビスパの執念を乗せてゴールに転がり込んだ。

 2点のビハインドに屈せず同点にまで戻したアビスパだが、勝ち点3を狙ってさらに攻勢に出る。対する金沢も負けじと反撃を見せ、アディショナルタイム5分はまさに決戦の様相を呈した。

 95分、金沢はコーナーキックからヘディングでそらしたボールをヘディングで押し込もうとするが、DF輪湖がライン上で身を挺してクリア。さらに金沢FW加藤がシュートするが、こちらはGKセランテスが右足1本で防ぐ。これがラストプレーとなり、アビスパは入魂の勝ち点1を手にした。

守り切り、抱擁を交わすGKセランテスとDF輪湖
守り切り、抱擁を交わすGKセランテスとDF輪湖

 他会場では、今節の昇格を決める可能性もあった首位の徳島が水戸に0-1で敗れた。一方、3位の長崎は山形を1-0で破り、勝ち点3を追加。この結果、勝ち点は徳島80、福岡75、長崎73となった。また、数字上昇格の可能性があった4位の甲府が敗れたため、今シーズンJ1に昇格できるのは徳島・福岡・長崎の3チームに絞られた。

 新型コロナウイルスの影響で長い中断期間があった今シーズンも、いよいよ残り3試合。次節は13日(日)、ホームのベスト電器スタジアムに京都サンガを迎える一戦だ。徳島は次節ジェフユナイテッド市原・千葉に勝てば昇格決定。また、アビスパが京都に引き分け以下の場合はJ2優勝も決定する。アビスパとしては次節の京都戦、次の愛媛戦を連勝し、J2優勝を賭けて最終節の徳島戦に挑みたい。まずは今週末、ベスト電器スタジアムで応援の拍手を送ろう。

【深水 央】

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