2024年04月18日( 木 )

【地場ゼネコン特集】加速する財務基盤強化 次年度以降は体力勝負の持久戦か(後)

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 当社が行ったゼネコン・デベロッパー調査によると好決算を出す企業が少なくなかった。しかし、3月以降のコロナ禍のなか受注予定だった新築・改修工事の計画が延期、白紙になるケースが見られた。受注形態や、受注先によっては21年以降にコロナの影響が出てくるのは必至だ。各社にはコロナの感染状況を睨みながら戦略を立てていくことが求められる。

マンションデベロッパー売上高

 売上高は、20社中10社が前年より増加となった。1位2位はともに北九州を拠点に事業を展開しているI社とJ社。I社は北九州を拠点としながらも、福岡市のほか広いエリアでマンションを供給し3年連続して1位を堅守。J社はマンションだけでなく戸建や中古マンションなど幅広い商品展開を行い、前年比約23億円の増収で300億円を突破。1位との差を約1億円に縮めている。3位にダブルスコアの差をつける両社が地場企業としては抜きん出た。

 4位のK社は前年の大幅減収の反動があるとはいえ2倍以上の増収となる145億円を計上した。100億円突破した企業は5社で前年より1社増加。投資用首位のL社は約60億円の増収を遂げて100億円企業に復帰した。

 売上高伸び率で目立ったのは、100%以上の増収を遂げたK社とL社。両社とも前年減収だったとはいえ、もともと売上規模は大きいながらも大幅な増収を遂げ実力の高さを示した。10%以上の増収をはたした企業は7社で前年より1社増加した。

売上総利益/率

 売上総利益は、20社中11社が前年より増加となった。上位2社は売上高ランキングと同じである。1位のI社は売上高を落としながらも粗利を伸ばすなど、原価高騰が続くなかでも採算性を向上させている。

 売上総利益率に関しては、20社中13社が前年より増加となった。トップのM社は連続1位を続け、前年より1.73%上昇させ40%台を突破した。売上高は15位、粗利も12位と規模を追わず、安定した利益と財務内容を継続している。粗利率が30%を超えたのは5社、15%以下は1社もなかった。建築コストの高止まりが指摘されるなか、各社が対策を講じていることが浮き彫りとなった。

経常利益/率

 経常利益は、20社中9社が前年より増加となった。1位は売上高トップのI社で、経常利益でも1位となるなど、安定した収益性を見せつけた。2位は売上高4位で2倍以上の増収を遂げたK社。3位は新規分譲を開始したN社。

 経常利益率で見ると、1位はN社で前年比トップの22.11%の上昇となっている。20%台は2位のK社まで。なお、前年は20%台が1社もなかった。前年比増加した企業は8社、減少に転じたのは12社と二極化の傾向がみられており、2社が経常赤字となり、前年より1社増加した。

当期純利益/率

 当期純利益は、20社中9社が増収となった。上位2社のI社とK社は20億円を超える利益を叩き出した。20社の当期純利益平均は4億7,457万円。前年比1億4,916万円となっている。経常利益と同じく赤字は2社だった。

 当期純利益率1位はK社。前年比143%の15.77%と高い利益率を確保した。10%超えは1社のみ。当期純利益率平均は4.01%で前年比0.68%増加となった。前年比減少に転じたのは12社。5%以上を確保したのは7社で前年より1社増加。

借入依存度

 借入依存度は平均48.28%で前年に比べ4.76%減少した。1位のO社のみが20%以下だった。50%以上の企業は9社で前年より3社減少した。全体的に見れば、有利子負債の圧縮傾向が見て取れるが、多額の資金を要する業種特性や金融機関の情報が仕入れに活かされることもあり、総じて相応の資金を有する企業が多い。

自己資本比率ランキング

 自己資本比率に関しては、20社中16社が20%以上を保っている。1位のP社のみ60%超えの62.75%。2位から4位までが50%台で拮抗している。10%を下回ったのは2社で前年より2社減少した。借入金を活用する一方で各社計上した利益を内部留保へ積み増しに回している。

(了)

【内山 義之】

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