2024年04月20日( 土 )

コロナを寄せ付けない究極のアンチエイジング 寿命1000歳プロジェクト!(4)

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国際政治経済学者 浜田 和幸

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染-拡大も気になるが、連日の感染者数に関する報道の過熱ぶりには「恐怖心」をいたずらに煽っているようにも思われる。将来への不安に苛まれ、日本では自殺者の数が急増していることも無視できない。ネット上では根拠の曖昧な情報が飛び交い、人々を疑心暗鬼の闇に引きずり込む一方である。飲食業や旅行産業では経済的な悪影響も深刻化しており、鳴り物入りの「Go Toキャンペーン」も腰砕けになってしまった。来年の東京オリンピック・パラリンピックにも暗雲が立ち込めている。要は、社会全体を暗い影が覆っているといっても過言ではないだろう。

スピード重視のあまり安全性を軽視?

 世界保健機関(WHO)が期待する開発中のワクチン10種のうち、中国製もアメリカ製も各々4種を占め、残りはロシアとイギリスである。11月に入ってからは大手製薬メーカーのファイザーや新興企業・モデルナによる「ワクチン開発、成功間近」といったニュースが相次いでいる。その都度、製薬会社の株価は急騰し、株式市場全体の景気も押し上げる効果があるようだ。しかし、こうした期待先行の動きには注意が必要だろう。

 なぜなら、これまで世界を襲ってきた感染症に対するワクチン開発には安全性や効果を確認するためには、通常10年の経過観察が必要とされ、どんなに急いでも3、4年の時間がかかってきたからだ。まずは動物実験から始め、徐々に人体への応用が試みられるのが通常のパターンであった。

 ところが、現在進行中のワクチン開発は本年2月ごろから開発が始まり、治験者を対象にした実験が本格化したのは7月末からである。数万人規模での治験が実施されているとはいうものの、急を要するということで、動物実験は省かれてしまった。ましてや後遺症の検証などは行われていない。実は、北朝鮮の金正恩委員長は中国製の不活化ワクチンを提供されたようだが、自らは接種せず、部下を実験台にして効果の程を確認しているとのこと。

 いずれにせよ、ファイザーもモデルナも人工合成した新型コロナの遺伝子の一部を接種する「m(メッセンジャー)RNA」ワクチンによって、開発期間の短縮化を図っているが、これまで人体には使われたことのない技術である。コロナの遺伝子を注射し、体内でたんぱく質を生み出し、免疫を誘導する仕掛けとなっている。これまでmRNAは体内でさまざまな酵素によって破壊され、目標とされる細胞に到達できなかった。この課題をファイザーもモデルナもメッセンジャーRNAを脂肪性の膜で覆うことで解決したという。

 画期的な方法であるが、「スピード重視」のあまり、安全性が軽視されているのではないかが大いに気になる。しかも、安定性が悪いため、冷凍保存が欠かせない。ファイザーの場合はマイナス70℃、モデルナはマイナス20℃で半年が限界。両者とも間隔を空けて、2度の接種が必要となるため、当然、コストも高くなる。しかも筋肉注射であるため、かなりの痛みがともなう。治験者のなかには接種部位がガチョウの卵ほどの大きさにまで腫れあがり、発熱し、猛烈な痛みに襲われたケースもあった。途上国では難しいが、日本の場合には冷凍保存や接種体制を工夫することで、来年には希望する国民の大部分に接種が可能になるという。

 ところで、ファイザーといえば、男性強壮剤「バイアグラ」で有名であるが、今回のワクチン開発で中心的役割をはたしているのは提携企業のビオンテック(BioNTech)である。2008年に創業された新興ドイツ企業で、2019年9月にビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と契約を交わしている。

 そのタイミングが絶妙で、中国の武漢で新型コロナウイルスが発生したとのニュースが伝わる直前のこと。この時期にビオンテックは株式上場をはたしており、ゲイツ財団は「ビオンテックのmRNAワクチンはガンやHIV、また結核の治療薬として大いに期待される」と評価するコメントを自前のHPに掲載していた。ところが、このコメントは現在、なぜか削除されている。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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