2024年03月29日( 金 )

【凡学一生の優しい法律学】真の民主国家を目指して(5)

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9. 法性決定という概念(つづき)

 ただし、前述のように、この訴訟は国会議員が法的には国家機関であるため、行政事件訴訟法に規定する「機関訴訟」となるが、この法律自体、裁判官によって起草された経緯もあって、国会議員による内閣や内閣総理大臣を当事者とすることを予想していないため、同法7条によって、一般的な民事訴訟として提起することになる。

 ついでながら、菅総理大臣による違法犯罪行為の被害者には団体としての日本学術会議があり、被推薦者6名の民間人学者がいる。ともに法的な被害者として司法権にその救済を求められる。その手続担当者が弁護士であるが、お金でしか動かない弁護士が多数である日本の現状において、真の意味で社会正義を実現するために、訴訟代理人となる弁護士がどのくらい存在するかということも国民は注視しなければならない。

 とくに、6名の被推薦人の学者は、訴訟を提起してまでその地位に恋々とするはずもないため、国民による「勝手連」のような支持母体の存在が必要であり、訴訟にもクラウドファンディングの様式が必要である。国民は、民主主義がコストのかかる制度であることを学習する必要がある。

 加えて、日本学術会議は法人格をもたない団体であるため、訴訟形態は法人格のない社団による提訴となる。従って、日本学術会議は団体の意思決定手続も大変であるが、菅総理大臣の違法行為によって、現在の日本学術会議は法定の人数によって組織されておらず、団体としての存在も意思決定も妨害されている。国民は菅総理大臣の違法行為が、関連する法令の違反も引き起こし、日本学術会議の法的存在さえも妨害している実態を理解しなければならない。

 最後に、国会議員には「抗議の辞任」という最後の手段が残されている。野党議員が全員抗議の辞任をすれば、いかに国民が鈍感無知といっても、事態の重大さや深刻さを理解してくれるであろう。

 しかし、残念ながら、国会議員は辞職による抵抗手段・抗議手段を選択することは絶対にない。それは前述したように、国会議員の地位は金銭的に恵まれ、利権を有する特別な地位であるためだ。

 インターネットで公表された民間調査による国会議員1人あたりに支出される国費は1億1,625万円である。国民が一般的に知っている議員歳費は1,556万円であるため、実際のコストの2割以下の金額しかかかっていないと誤解している国民も多いことだろう。

 たとえば、国会議員は3人の公設秘書を置くことができるが、その費用は年間2,603万円である。早い話、身内を公設秘書にすれば、事実上の議員の収入そのものとなる。もっとも巨額の費用が政党交付金であり、1人あたり4,431万円である。これは直接に議員個人に交付されないが、政党から政治活動費として毎年一定の支給があるため、間接的に支給されるものであり、なるべくその実態が国民に知られないようにしている。

 このように国会議員の地位が巨大な利権となっているため、議員の地位の世襲化が一般化している。このようなお手盛り政治の世界が日本の政治の実態である。政党交付金として最終的に個人に還流する資金でも十分に訴訟を維持できる金額であり、再選のための蓄財とせず、真の意味の政治活動資金として使っていただきたい。

(つづく)

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