2024年04月19日( 金 )

【天神ビッグバン2020】さらなる容積率緩和や期間延長も コロナ禍で新設オフィス需要に暗雲(1)

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天神ビッグバン

感染症対応シティに向け、当初期限を2年間延長

 老朽化の進行などにより更新期を迎えたビルを、規制緩和などによって付加価値の高い新たなビルへの建替えを誘導することで、新たな空間と雇用を創出しようという福岡市のプロジェクト「天神ビッグバン」。同プロジェクトがスタートしてから、まもなく6年が経とうとしているが、その間、いくつかの大規模なビル建替えプロジェクトが進行。天神の街中では商業施設の閉館や解体などが相次ぎ、1つの時代の終わりとともに、また新たな時代の始まりに向けての端境期を迎えている。

 そもそも天神ビッグバンは、新たな空間と雇用を創出するために、国家戦略特区をトリガーとして福岡市が2015年2月に始動したプロジェクト。天神地区において、「グローバル創業・雇用創出特区」による「航空法の高さ制限の特例承認」を獲得したことに加え、福岡市の独自施策として「容積率の緩和」を実施し、都市機能の大幅な向上と増床を図っていくというもの。さらに、雇用創出に対する立地交付金制度の活用や創業支援、本社機能誘致など、ハード・ソフト両面からの施策を組み合わせることで、アジアの拠点都市としての役割や機能を高め、新たな空間と雇用を創出していこうというプロジェクトとなっている。対象となる範囲は、天神交差点から半径約500mの、約80haのエリアだ。

 また、天神ビッグバンでのビル建替えを促進するため、福岡市では16年3月に、魅力あるデザイン性に優れたビルにインセンティブを付与する「天神BBB(ビッグバンボーナス)」を創設した。24年12月末までの天神ビッグバン期間中に竣工予定で、魅力あるデザイン性に優れたビルとして天神BBBの認定を受けると、容積率緩和制度の拡大や、テナントの優先紹介、地域金融機関による専用の融資商品、行政による認定ビルのPRなどのさまざまなインセンティブを受けられることになる。これにより、天神地区におけるインテリジェンスビル(スマートビル)への建替えを一層促進し、高質なオフィス・商業空間と都市景観の創出を図るとともに、憩いと賑わいのある新たな天神のまちづくりを加速させる狙い。

 これらの取り組みにより、当初は24年までに30棟の民間ビルの建替えを誘導し、延床面積を1.7倍に拡大するとともに、雇用を2.4倍に拡大。それにともない、約2,900億円の建設投資効果と、建替え完了後からは新たに毎年約8,500億円の経済波及効果を見込むとしていた。

 ところが、20年に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が発生したことで、状況が一変。今後、感染症時代に対応した安全・安心なまちづくりが重要になってくることから、市は20年8月、従来の建替えによる耐震化やオープンスペースの創出・活用などに加えて、ビルの「換気」「非接触」「身体的距離の確保」「通信環境の充実」などの取り組みを誘導する方向性を新たに打ち出した。

 具体的な取り組み例としては、CO₂濃度センサーやタッチレスエレベーター、顔認証入退エントランス、非接触検温センサー、空気清浄・エアシャワー、人数検知による入室分散管理などの導入や、全館Wi-Fiやローカル5Gなどによる通信環境の充実、大規模なフロアプレートやエレベーターの大型化・台数追加などによる身体的距離の確保などが挙げられている。

 これらの取り組みを実施するビル計画に対しては、市独自の容積率緩和制度を拡充することで、容積率が最大50%上乗せされる。これらを推進することで、より国際競争力が高く、かつ安全・安心で魅力的なまちづくりにチャレンジし、福岡市を“Withコロナ”や“Postコロナ”時代にふさわしい、世界に先駆けた「感染症対応シティ」へしていきたい考えだ。

 なお、この新たな変更にともない、天神BBBの竣工期限が26年12月末まで延長。天神ビッグバンのプロジェクト期間も、当初の予定より2年間伸びたかたちだ。完了まで残り約6年となった天神ビッグバンにおける、2020年の主な動きを振り返ってみよう。

天神ビッグバンエリア

(つづく)

【坂田 憲治】

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