2024年04月21日( 日 )

レオパレス21をソフトバンク系投資ファンドが傘下に、狙いはOYOへの転売か(中)

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 経営再建中の賃貸住宅大手レオパレス21(以下、レオパレス)を救済したのは、孫正義氏が率いるソフトバンクグループ(SBG)系の米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)だった。早くも、SBGが出資するインドの格安ホテルチェーンOYOに転売するのではないか、との観測が出ている。すでに、OYOはレオパレス21の創業者がつくったMDIを買収している。SBGの総帥・孫正義氏の狙いを検証する。 

ソフトバンクとの合弁会社OYOホテルでトラブル続出

ホテル イメージ OYOは2019年に、SBGの通信子会社ソフトバンクなどと日本のホテル運営会社を、SBG傘下のZホールディングス(ZHD)と不動産賃貸会社を立ち上げた。だが、出足からつまずいた。

 日本法人「OYOホテルジャパン」は19年4月に「2020年3月までに日本最大のホテルチェーンになる」と宣言して日本での事業を始めた。正式名称はOYO(オヨ)ホテルズアンドホームズ。AIを活用したインド発の格安ホテル運営会社である。全国50カ所で100施設以上を運営、20年3月までにさらに100施設の開業を目指すとしていた。

 ところが、SBGと合同で設立した日本法人のフランチャイズ(FC)となった既存の中小ホテルとのトラブルが相次いだ。契約後に日本法人から売上の「最低保証」が一方的に減額されたり、期限内に支払われなかったりするケースが、少なくとも21件あったと報じられた。

 OYOホテルはインドや中国で質の低い格安ホテルをFC化し、稼働率を上げる仕組みを取り入れて急成長した。もともと、質の高い日本の中小ホテルが、OYOのビジネスモデルになじむのかと疑問視されてきた。売上を保証する「最低保証」がきちんと支払われなかったのだからお粗末すぎる。

ZHD(旧・ヤフー)は出資を引き揚げる

 ZHD(旧・ヤフー)は、OYOホテルズアンドホームズとの合弁関係を解消した。当時のヤフーが19年3月から始めた不動産賃貸サービス「オヨ・ライフ」の運営会社オヨテクノロジー&ホスピタリティージャパン(東京都千代田区)に3割出資していたが、19年11月に株式をオヨ側に売却した。

 オヨ・ライフは、敷金・礼金・仲介手数料は無料、契約手続きはすべてスマホで完結。不動産屋に出向くことはおろか、紙でのやり取りも一切なし。ネットでホテルの宿泊予約をするように、即座に部屋を借りられるというのがうたい文句だった。だが、部屋の確保や稼働率に苦慮。複数のオーナーから契約をめぐる苦情が寄せられて、わずか9カ月で合弁を解消した。

 日本で立ち上げた法人2社がうまくいかず、OYOホテルズアンドホームズは、ホテル事業を手がける「OYOホテルズジャパン」と、不動産賃貸の「OYOテクノロジー&ジャパン」を統合して、効率化を図ることにした。ホテルは200軒以上で約6,000室、不動産賃貸は約4,000室を取り扱う。

 OYO本体に投資ファンドを通じて出資しているSBGは、2社の統合後も引き続きOYO本体の経営を支援する方向だ。

OYO、レオパレス21の創業者が立ち上げたMDIを買収

 そうした動きがあるなか、19年9月に、SBGとOYOホテルズ&ホームズの合弁会社が、レオパレスの創業者・深山祐助氏が設立した賃貸住宅会社のMDI(東京都中央区)の株式80%を取得して、傘下に組み入れた。

 深山祐助氏は1945年7月生まれで、長崎県壱岐市の出身。拓殖大学商学部貿易学科を卒業。大学時代はボクシングに明け暮れた。73年、28歳で不動産仲介会社ミヤマを設立。85年に都市型アパート「レオパレス21」事業を開始した。入会金と年会費を支払えば、敷金・礼金なしで他のレオパレスに住み替えられるシステムを打ち出して、これが大当たり。89年に社名をMDIに変更、株式を店頭公開した。

 不動産取引の仲介を止め、アパート営業に特化したことでバブルの傷を負わなかった。敷金無料型の賃貸アパートをオーナーから一括で借り上げ、長期の家賃保証をうたう「サブリース」商法で成功した。2000年に社名をレオパレス21に変更。04年3月に東証一部上場をはたした。

 好事、魔多し。絶好調の時期には、えてして落とし穴が待っている。06年 5月、深山祐助社長が、入居者から徴収したサービス手数料のうち計48億6,500万円を社長個人名義での不動産投資や知人の会社の運転資金に充てるなどの不正流用が発覚した。この金は、入居者から、据え付け家具や家電の無償修理サービスのために集めていた共済事業の積立金の一部。それを私的に使い込んで、深山氏は引責辞任に追い込まれた。

(つづく)

【森村 和男】

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