2024年04月19日( 金 )

J-REITに見る コロナ禍のホテル運営状況

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宿泊主体ホテル

ホテル イメージ 「フレックスステイイン」「スーパーホテル」「コンフォートホテル」などのビジネス・シティホテルを中心に所有するインヴィンシブル投資法人(J-REIT、以下同じ)の国内75物件(図1:宿泊主体)の運用実績によると、客室稼働率は、2月は74.9%(前年同月比▲13.0pt)であったが、コロナ禍で大きな影響を受けて、3~8月にかけて各ホテルを一時休館したため、3月は43.8%(同▲44.5pt)と大幅に低下。5月には25.9%(同▲61.0pt)と底を打ち、6月は都道府県をまたぐ移動規制が緩和されて、36.0%(同▲51.9pt)と上昇した。7月は「Go Toトラベル」が開始され、地方のホテルは観光エリアで稼働率が高まり、40.6%(同▲49.6pt)、8月は43.0%(同▲48.3pt)、9月は47.6%(同▲40.7pt)とやや改善し、10月はGo Toトラベルの東京除外の解除や地域共通クーポンの運用開始により56.8%(同▲31.4pt)と回復の兆しが見える。出張などのビジネス需要も一部で戻り始めた。

 客室平均単価(ADR、図2:宿泊主体)は、2月の8,455円(同▲15.6%)から5月に5,027円(同▲53.0%)と底を打ったが、Go Toトラベルが開始されて8月は9,247円(同▲27.2%)まで上昇し、10月は8,095円(▲20.2%)となった。

図1 タイプ別の客室稼働率

 地域別の稼働率(図3)では、最も回復が早いのは群馬、栃木、香川、青森を含む「その他」で10月は83.8%となった。マイクロツーリズムや首都圏の利用客が戻ったためと考えられる。首都圏(東京23区除く)はコロナの影響が比較的少ない一方、東京23区や関西は訪日外国人客の消失により、回復が遅れている。北海道は緊急事態宣言時に稼働率がとくに低下したが、8月には中部や九州と同水準まで回復した。

 次に、「ネストホテル」「コンフォートホテル」などの宿泊主体・宿泊特化型ホテルを中心に所有する、いちごホテルリート投資法人の運用実績によると、コロナの影響を大きく受けた2~7月の地区別の稼働率(18物件)では、緊急事態宣言の臨時休館や観光需要の減少により、大阪が前年同期比▲74%、東海・中部が同▲63%と大きく低下した一方、臨時休館を行わなかった東京は同▲22%とあまり下がらなかった。ほかの地域では、北海道は同▲37%、京都は同▲40%、中国・四国は同▲46%、九州は同▲42%と大きな差は見られなかった。

レジャー宿泊ホテル

図2 タイプ別の客室平均単価

 「オリエンタルホテル」「ホテル日航」「ヒルトン」などを所有するジャパン・ホテル・リート投資法人の運用実績によると、ホテル(14物件)(図1:レジャー宿泊)の稼働率は、コロナ禍で訪日外国人客や国内旅行客が激減して、2月の65.2%(同▲16.5pt)から3月は29.6%(同▲56.0pt)と大幅に低下。緊急事態宣言の影響で一部のホテルが休館したため、4月に7.4%(同▲83.3pt)とさらに低下し、5月は4.6%(同▲83.8pt)と底を打った。Go To トラベルが開始され、7月は22.1%(同▲66.9pt)、8月は27.2%(同▲63.9pt)、9月は34.8%(同▲49.9pt)と上昇したが、インバウンド消失の影響は大きく、10月は44.5%(同▲43.8pt)と回復にやや時間がかかっている。ADR(図2:レジャー観光)は、2月の1万4,901円(同▲9.5%)から、5月の1万3,943円(同▲23.6%)と下げ幅が小さく、10月は1万5,706円(同▲16.1%)と回復しつつある。

 星野リゾート・リート投資法人の運営実績によると、「星のや」など15物件(図1:ラグジュアリーリゾート)の稼働率は2月の84.5%、3月の76.5%から4月はコロナ禍での休館などで21.8%と大幅に下落した(公開は4月まで)。決算説明資料(20年4月期)によると、星野リゾート運営戦略として「マイクロツーリズム」需要の喚起のため、「4月15日 メディアを通じて提案(提唱)開始」とされ、今はその流れになっている。「(1)近隣市場、(2)関東・関西圏の順に需要が戻る」とされ、「(3)インバウンド」回復はコロナ発生から「約12~18カ月を想定」し、「ワクチン・治療薬の登場後」としている。

 森トラスト・ホテルリート投資法人のうち、運営実績が開示されている「コートヤード・バイ・マリオット 東京ステーション」「同新大阪ステーション」の平均稼働率(図1:大都市観光)は1月の81.0%から、外国人旅行者やビジネス需要の激減により、2月は58.3%、4月は17.5%と大きく低下。5月に20.2%とやや上昇して横ばいが続き、7月にGo Toキャンペーンが開始されてからも、9月まで大幅な回復は見られなかった。

 「大江戸温泉物語」14施設を所有する大江戸温泉リート投資法人の運用実績によると、稼働率(図1:温泉)は2月の86.9%(同+1.1pt)から、3月は62.4%(同▲30.6pt)と低下し、外出自粛による4~6月の臨時休館で、4月は17.9%(同▲69.0pt)、5月は1.1%(同▲83.7pt)、6月は6.0%(同▲80.2pt)と大幅に低下した。しかし、車で訪れる近隣の固定客が中心のため、Go Toトラベル開始で7月は42.3%(同▲46.5pt)、9月54.4%(同▲33.2pt)と伸び、10月はGo Toトラベルの東京除外の解除などで73.9%(同▲9.5pt)と都市部からアクセスの良い立地を中心に大きく回復した。

 ADR(図1:温泉)は、2月の2万5,532円(同▲8.2%)から4月は1万6,712円(同▲44.1%)と大幅に低下したが、6月には2万4,150円(同▲3.7%)と早くも改善し、10月は2万7,768円(同+0.9%)とコロナ前とほぼ同水準となった。

図3 地域別の客室稼働率

【石井 ゆかり】

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