2022年05月26日( 木 )
by データ・マックス

第一生命19億円詐欺事件の闇(2)~正下文子の長女・吉田美智子との出会い

 当サイトにて連載する、第一生命保険西日本マーケット統括部徳山分室(山口県周南市)を舞台にした架空金融詐欺事件では、当時80代の元営業社員(元特別調査役)の正下文子が、架空の金融取引を顧客にもちかけて不正に資金を集めていた。判明した被害総額は、約19億円。
 当事者である正下の動向に注目が集まるなか、「私もある意味だまされました」と名乗り出た、関西地方在住の第一生命契約者に取材を行った。

「私はもともと教師をしておりました。定年後は塾を開きながら、地域社会に貢献できるボランティアの活動をはじめました。ボランティアの活動は、現在もできる限り行なっており、そのおかげで、たくさんの方々との交流をもつことができました。

 ボランティア活動では、おそらく13年ほど前に、正下さんのご親族のお世話をいろいろとさせていただき、そのなかで、正下さんの長女の吉田美智子さんと知り合うこととなります。

 ご親族のお世話を終わってから後日、吉田さんがわが家に訪問されました。吉田さんは、素敵な身なりで礼儀正しく、丁寧で誠実な女性という第一印象を受けました。話し方も上品であり、大変好感がもてました。会話をしているなかで仕事の話になり、職業について質問すると、第一生命で勤務されていると答えられました。それではせっかくのご縁ですからと生命保険を申し込みました。のちに長男名義の生命保険、孫の学資保険などを、吉田さんを担当として契約しました」

契約書 イメージ プライバシーに関わるため、詳細は割愛するが、女性A本人の生命保険、長男の医療保険、孫の学資保険、自宅の火災保険(第一生命が提携する損害保険会社との契約)、実家(他県)の火災・地震保険など、月々の保険料の支払いが約20万円に上る相応の規模の契約である。

 女性Aは、「生命保険の契約はいいですよ。吉田さんの成績に協力できるのであればと思いました。吉田さんには、私のボランティア活動のお手伝いもしていただいたりするなど、彼女には良くしていただいたのでね」と淡々と語る。

 女性Aは、続けて語気を強め、「ただし、最初に契約したのは、2009年2月8日です。最初の契約時点では、正下さんは、すでに詐欺行為を行っていたのです。当時は、吉田さんのお母さまが、詐欺に手を染めているなんて想像もつきませんでした。吉田さんは、実の母が保険営業のなかで、お客さまを騙す行為を行っていたことは知っていたはずです。09年時点では知らなかったとしても、のちに知ることでしょう。知らない訳がない。よく私と保険の契約をできたものです」と憤りの気持ちを交えながら、思いを吐露した。

 正下が詐欺に手を染め始めたのは、1991年頃のバブルが崩壊した時代である。つまり、女性Aが第一生命と最初に契約した時期は、当然ながら正下の詐欺行為が行われた後である。女性Aは「吉田さんは、一所懸命にお仕事や私のボランティア活動に勤しまれていたので…良心のかけらもなかったのでしょうか…」と述べた。

 吉田は毎年、盆暮れなど半年に一度のペースで、女性A宅へ訪問し挨拶を欠かさず、丁寧に対応していた。吉田が女性Aのボランティア活動を手伝っていたのは、約2年間であったものの、それ以降も公私とも交流していた。

 一方で、吉田の実母・正下はすでに詐欺行為を実行し、被害者および被害額とも莫大になっていたと推察される。吉田はどのような心境であったのだろうか。良心の呵責に苦しんでいたのだろうか。あるいは、「母は母。自分は自分」と開き直って、母の犯罪を知りながら、同じ生命保険の仕事を続けていたのだろうか。

(つづく)

【河原 清明】

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