2024年04月20日( 土 )

【凡学一生の優しい法律学】憲法改正の基礎知識(後)

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5 9条改正の歴史的経緯

 戦争放棄条項、その具体的内容の1つである軍事力(戦力)の不保持は、戦勝国が戦敗国に対して「おしつける」(求めるという表現でもおなじで、単なる用語の違いであるが、政治家・評論家にとっては、この表現こそが、無知な国民にもっとも扇情的であり訴求力の大きい表現であり、印象操作といえる)ことは、まったく不当でも国際法違反でも何でもない。東京裁判の国際法違反性とは明らかに本質を異にする。

6 9条改正議論の背景・本質

 ただこの「おしつけ」には現実の国際情勢・共産主義国家群と自由主義国家群の対立というパワーバランス上においては、重大な欠点を有する。それは現実に国の防衛を誰がどうやって行うかという問題である。9条は外国軍隊による防衛を前提とした平和条項であることは明白である。つまり、日本は現在も日米安保条約によって、米国の軍事力の庇護下にあり、この基本的関係は戦後一貫して継続されてきている。そうであれば、9条改正がこの米国の軍事力の庇護下にある状況を変革するものでない限り、まったく無意味な改正ということになる。

 ただし、今後正々堂々と軍事力を強化し、核兵器まで保有する軍事大国(政治家のいう自律国家)になるための第一歩として位置付けるなら、改正には意味があるといえよう。それは同時に平和憲法の理念を捨て去ることを意味する。しかし、アメリカが日本の軍事的属国の実態を放棄するのも現実的ではない。なによりも日米安保条約の破棄が論理的前提となるが、自民党の9条改正論者で同時に日米安保条約の破棄を主張する者は皆無である。むしろ普天間基地移転問題では積極的に辺野古移転を推進し、米国の意向に沿う政策を実行している。

日本国憲法 安倍氏が何処までの政治的展望をもっているのか、その本心を本当に国民に開示するかは、現在までの「嘘」と「弁解」の強弁政治、隠蔽政治をいやというほど見せ付けられてきた国民には懐疑的にならざるを得ない。かつて安倍氏は、誠実な自衛隊員が憲法違反よばわりされる状況は忍び難いと発言したが、当の自衛隊員にはそもそも憲法違反という自覚は存在していないほど、憲法変遷現象が進展しており、あきらかにこの理由は安倍氏の独善であった。

 つまり、9条の文言上の改正は事実関係に何の影響をもたらさない。ただし、9条を解釈合憲とする解釈技術に「自営の為の」という枕詞が考案されてきたが、これが事実上不要・死語になる。そうすると、現在問題となっている「敵基地攻撃能力」の問題も消失するから、一定の軍備拡張は自由な政権政党の政策選択問題となり、日本の軍需産業と蜜月関係にある族議員には利権の拡大となる。ひょっとしたら、米国の軍需産業と地下で手を結んでいるのかも知れず、確実に軍事力拡張が実行されることは明白である。9条が改正され、堂々と軍事力が拡張され、国家予算が兵器整備に投入されるようになってからでは「阻止」は不可能である。徴兵制も心配する声もあるが、自民党が利権のともなわない政策を行うとは思えず、その点は心配無用である。

 9条だけが自民党によって議論されるのは、まさに9条が巨大な利権条文だからでもある。

7 自民党が独裁的な利権政党である憲法制度的理由

 これは現行憲法制度である議院内閣制とそのほかの三権分立否定条文にある。国民が真に国民主権者として憲法改正するなら、この根本的制度矛盾を是正しなければならない。これは日本から利権政治を放逐することも意味する。そのためには平易な日本語で記述された日本国憲法を権威主義的ではないアプローチにより理解することで可能である。はやく日本国民が権威主義の呪縛から解放される日が来ることを強く希望する。

(了)

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