2024年04月18日( 木 )

【凡学一生のやさしい法律学】絶望の法治国家(後)

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 明治大学法科大学院教授・瀬木比呂志氏は裁判官を定年退職するに際し、裁判所の絶望的な腐敗状況を細かに記載した『絶望の裁判所』を著している。
 瀬木教授は謙抑的にあえて言及しなかったが、日本国憲法に基づく3権分立の政治制度においては抑制と均衡の不可分の関係から、司法権単独の腐敗という現象は発生しえず、3権すべてが腐敗した状況においてのみ、司法権もまた腐敗しているといえる。つまり、司法権の腐敗と行政権・立法権の腐敗は同時存在の関係にある。その意味で、日本は絶望の法治国家である。

2. 法律学の本質に反する背理の主張

 法律学は、社会正義を実現するためのものであり、公正性と論理性を中軸とする言語による社会統制の技術体系である。そのため、主張論理が背理であれば、それは結果として社会正義に反する誤った議論であり、詭弁であるため、「似非法律論」として非難される。

 日本学術会議法の明文の規定にもあるように、日本学術会議の会員の法的義務行為はいかなる国家機関からも)独立して職務を行うとされている(同法第3条)。これは、会員がその選任においてもほかの国家機関からの統制を受けないことを保障している。内閣(結果として内閣法制局の支持)の見解が、似非法律論であることは明白である。

3. 卑しい似非法律論

 学術会議のあり方を批判することと、今回の推薦無視行為の当否についての法律論とは次元の異なる問題であり、仮に学術会議に何らかの法的瑕疵、違法行為や法の趣旨に反する行為があったとしても、推薦無視の正当化の理由とはなり得ない。推薦された学者は、今から会員になる人であるため、それらの非難の対象者にはなり得ない。

 いまだに「学術会議は問題だらけ」と発言する「学者」(竹中平蔵氏もその1人)が後を絶たない。菅総理大臣の違法行為を援護する目的があからさまであるだけに、「学者」の看板はまさに羊頭狗肉の虚偽表示である。

 とくに、国民の拝金主義に迎合し、学術会議には10億円もの国費が投入されているという言説には、真実を見誤らせるという大きな危険を秘めている実際にはこの10億円は210名の学者の1年間の研究費や事務人件費の合計であり、210名の学者が1年間に支給を受ける給与ではない。

 公表された概略明細によれば、常勤の50名の普通公務員職員の人件費備品費が5億3,000万円、合計2,000名以上の会員と連携会員の会議出席手当て・旅費が3億円、団体分担金1億円などであるため、仮に手当て旅費を給与と見なしても会員・連携会員の1人あたりの支給額は年間15万円である。

 一方、今回、公務員でありながら、国家に忠誠を誓わず、選任者の国会議員に身も心も捧げた公設第一秘書は年間700万円から1,000万円の「給与」を得ている。この公設第一秘書は国会議員の数(衆議院参議院合わせて710名)と同じ人数がいるため、年間50億円以上の予算が投入されている。投入される国費を問題にするなら、費用対効果の視点をもち、正確な数字を国民に示すべきである。

(了)

(前)

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