第一生命19億円詐欺事件の闇(9)~底知れる甚大な被害
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当サイトにて連載する、第一生命保険西日本マーケット統括部徳山分室(山口県周南市)を舞台にした架空金融詐欺事件では、当時80代の元営業社員(元特別調査役)の正下文子が、架空の金融取引を顧客にもちかけて不正に資金を集めていた。判明した被害総額は、約19億円。
当事者である正下の動向に注目が集まるなか、「私もある意味だまされました」と名乗り出た、関西地方在住の第一生命契約者に取材を行った。第一生命19億円詐欺事件における、正下文子、その長女である吉田美智子の母娘に関する取材に応じていただいた関西在住の第一生命契約者である女性Aに敬意を表したい。センシティブな案件であり、Aが話すことで自身に何らかの不利益をもたらすことが懸念されたが、「私が知っていることは、すべて話します。私は直接な被害者ではありませんが、間接的な被害者です。多額のお金を詐取された被害者の方々が1日も早く救われて、事件全容を解明するためにお役に立てたら」との取材に応じてくれ、約2時間も話してくれた。
同サイトでも発信しているように、正下・吉田の詳細な人物像も、取材を進めるなかで改めて確認することができた。とくに吉田については、実像に迫る生々しい情報も得ることができた。
筆者はAを取材した後、吉田の自宅とされる場所にも行った。吉田の自宅は、兵庫県有数の高級住宅地の一角にあった。このことから、吉田が一般的なサラリーマンやOLよりはるかに高い年収を稼ぎ出していることが容易に想像できる。生命保険の営業として一生懸命仕事に打ち込んで成果を上げれば、高級住宅街に住めるほどの生活が実現することもわかった。ただし、吉田のケースに関しては、その背景に不透明な事情が横たわっているが…。
正下と吉田は母娘であるが、別人格である。正下が詐欺に手を染めたからといって、吉田も同様の行為におよんでいるのか、と疑うのは早計である。吉田はおそらく直接の詐欺行為はしていない。しかし、母親が多額の資金を顧客から騙し取る詐欺を行っていることを知っていたのは明白だ。
吉田がそのことをいつ頃知ったのかについては不明であるが、知っていること自体は間違いない。女性Aに宛てた吉田の書簡や電話での発言、また吉田をよく知る女性A以外の人物からも言質を取っている。
今回の事件の被害額は約19億円と公表されているものの、まだまだ拡大する可能性が高い。加えて、Aのように、多数の間接的な被害者が存在することも明らかである。彼らは金銭的な被害を受けていないものの、その精神的な苦痛は相当大きなものであると推測される。なぜならば、詐欺に手を染めている人物の長女が担当する保険を契約しているとのちに知ったら「自分も騙されていた」「母親の詐欺を知りながら、平然として営業をするとは…」と憤りを感じるはずだ。
第一生命は、正下・吉田母娘に対して特別な優遇を行っていた。正下は特別調査役、吉田は上席特別参与という役職と待遇により、社内でも相応の身分および手厚い収入が保証されていた。第一生命が認めた人事であり、社外の者が寸評することではないが、契約者の立場としては「母娘揃って、なぜ特別な待遇についているのか」と感じることだろう。
契約者が毎月支払っている保険料の一部は、正下・吉田の両名の給料に反映されている。正下が詐欺に手を染めて、顧客から19億円もの資金を詐取したうえに、通常の給与が支払われていたと知ったら、憤りを感じるのが人情だ。正下・吉田母娘の罪も重いが、第一生命も人事制度に大きな欠陥があったことを認めて、被害者に対して現実的な補償を直ちに行うべきである。
(つづく)
【河原 清明】
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