2024年04月20日( 土 )

拡大を続ける電子たばこ市場(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 たばこは世界中の人々に親しまれる嗜好品の1つとなっている。たばこの起源はコロンブスが新大陸(アメリカ大陸)に上陸した際に、アメリカ先住民がたばこを吸っているのを見てヨーロッパに持ち込んだものとされる。

 たばこの世界市場の規模は約1兆ドルに達するといわれており、たばこが世界の多くの人々に愛用されていることがよくわかる。しかし、近年になって、たばこに対する否定的なイメージが拡大して、喫煙者数は徐々に減少し始めている。

 世界保健機関(WHO)の統計によると、2018年の世界の総喫煙者数は13億3,700万人と、2000年に比べて6,000万人減少している。喫煙者が減少した原因としては、健康に対する人々の意識の高まりや広告の規制などが挙げられている。世界の喫煙率(男女)は、10年の27.3%から20年に22.8%まで低下しつつある。

 なお、これはあくまで紙巻たばこに関する話であって、電子たばこ(加熱式たばこを含む)の消費量は対照的に世界的には右肩上がりで増えている。電子たばこの喫煙者は、11年の700万人から、16年には約5,000万人に増加した。

 新型たばこには加熱式たばこ、フレーバーのついたリキッドを加熱して蒸気を吸うリキッドの2種類がある。従来の紙巻たばこは、その先端に火をつけるとたばこ葉が燃えて煙が発生していたが、電子たばこが従来のたばこと大きく異なる点は、煙の代わりに発生させた水蒸気を吸引することだ。

 加熱式たばこは電源を入れると加熱ユニットが稼働し、たばこの葉に熱を加えて、ニコチンを発生させる。煙が出ない代わりに、たばこ葉に含まれたグリセリンによって蒸気が発生する。

 電子たばこはカートリッジ内の液体(リキッド)を加熱して蒸気が発生する仕組みで、「オープン・システム」と「クローズド・システム」の2つのタイプがある。オープン・システムでは、蒸気化する液体を利用者が自分で詰め替えないといけない。また、吸い口部分も取り外しができる。

 電子たばこのメリットはたばこを吸う時に発生するとされるタールの量が紙巻たばこに比べて9割以上減り、人体への悪影響が低減できることだ。加熱式たばこ市場は、たばこ市場全体の2割以上を占めるまでにすでに成長している。今後健康を考えて禁煙したい人が増加することを考慮すると、今後ますます成長すると見込まれている。

 電子たばこは従来の紙巻きたばこと製造方法がまったく異なるため、機器メーカーで製造されている場合が多い。中国は、電子たばこ製造の世界シェアの90%以上を占め、電子たばこに関する特許取得数では、世界の87.9%を占めており、他国を圧倒している。中国のハイテク産業の中心地である深圳には、500社以上の電子たばこメーカーがあるという。

(つづく)

(後)

関連記事