2024年03月29日( 金 )

【天神ビッグバン2020】さらなる容積率緩和や期間延長も コロナ禍で新設オフィス需要に暗雲(6)

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エリア内外で誘発される再開発

建替えが計画されている「ヒューリック福岡ビル」
建替えが計画されている「ヒューリック福岡ビル」

 明治通り沿いのオフィスビル「ヒューリック福岡ビル」も、高級ホテルを核とした大型複合商業ビルへと再開発される。不動産大手のヒューリック(株)が所有する同ビルは、地上9階・地下2階建で、竣工は1960年1月とすでに築60年以上が経過。新たなビルの概要は不明だが、天神ビッグバンによる高さ制限や容積率の緩和などを活用するほか、ヒューリックが展開する高級ホテル「THE GATE HOTEL」が入る見込み。

 また、立地している「天神2丁目南ブロック」では地区計画で新たな地下通路が設置される予定で、新ビルもこの地下通路につながるとみられる。ビルはすでに閉鎖され、解体工事に着手。解体等の工事期間は21年8月末までとなっている。

 天神の“顔”の1つである商業施設「イムズ」(天神MMビル)も、21年8月末までに閉館し、その後に解体および再開発される予定だ。地上14階・地下4階建の商業ビルであるイムズは、89年3月竣工とまだ築30年程度しか経っていないものの、天神ビッグバンの進行にともなって周辺エリアの将来像が変化していくなか、新時代の天神に求められるニーズに応えるべく、再開発により新たな価値を創造していく。新たなビルの計画内容についてはまだ不明だが、所有者の三菱地所(株)と福岡市を含めた関係者との協議の下、都市機能の強化・魅力づくりに寄与することを念頭に検討を進めていくとしている。

2021年8月閉館予定の「イムズ」
2021年8月閉館予定の「イムズ」

 エリア内の天神4丁目にある「都久志会館」は20年11月3日、惜しまれつつも閉館を迎えた。(一財)福岡県教職員互助会が管理・運営する同館は、コンサートやライブなどが可能な多目的ホールのほか、研修・会議などに利用できる貸会議室やアトリエを併設しており、さまざまなイベントや催しに活用されていた。だが、79年3月竣工で築40年以上が経過しており、施設の維持・管理には大規模修繕工事が必要で費用負担が重いことから、閉館を決定。すでに土地・建物の売却先も決定(12月14日時点で買主は非公表)しており、天神ビッグバンの新たな建替えプロジェクトとなるか、今後の動向が注目される。

 同じく天神4丁目にある「日本銀行福岡支店」では、築70年以上が経過して老朽化が進行していたことから、現地建替え工事が進められている。工事は17年10月に着工し、Ⅰ期およびⅡ期に分けて段階的に進められ、Ⅰ期棟はすでに完成。現在は2期棟の新築工事が行われており、全体完成は22年3月末を予定している。

2020年11月3日に閉館した「都久志会館」
2020年11月3日に閉館した「都久志会館」

 天神ビッグバンのエリア内からは外れるが、中洲5丁目の「明治安田生命福岡ビル」(所有:明治安田生命保険)も解体工事に着手している。63年10月に竣工した同ビルは、地上12階・地下2階建て、延床面積約1万9,000m2。天神中心部にも近い昭和通り沿いに面し、福岡市地下鉄・中洲川端駅から徒歩2分という好立地で企業のオフィスなどが入居していたが、築57年が経過し、施設の老朽化が進んでいた。解体工事は21年12月の完了を予定しているが、その後の建替えなどの計画については、まだ決まっていないとしている。

  

 今回取り上げた以外にも、エリア内外では中小規模の再開発が相次いでいる。開始からまもなく6年が経とうとしている天神ビッグバンだが、期間が延長されたことで終了まで残り約6年となり、現在はちょうど折り返し点に差しかかったところだ。だが、20年のコロナ禍によって、オフィス・商業施設・ホテルなどに対する需要が一変。とくにオフィスやホテルの新規開発にとっては、逆風の状況になってしまったといえるだろう。市では天神BBBの優遇策の上乗せなどによって「感染症対策シティ」の取り組みを進めることで、天神ビッグバンの減速を防ごうとしているが、その効果は不透明だ。社会情勢の変化とともに、個々のプロジェクトにおいても計画の見直しを余儀なくされている天神ビッグバンだが、21年の動向も引き続き注視していきたい。

天神ビッグバンエリア

(了)

【坂田 憲治】

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