2022年05月24日( 火 )
by データ・マックス

第一生命19億円詐欺事件の闇 (10)~第一生命が今すぐ被害者へ保証せよ

 当サイトにて連載する、第一生命保険西日本マーケット統括部徳山分室(山口県周南市)を舞台にした架空金融詐欺事件では、当時80代の元営業社員(元特別調査役)の正下文子が、架空の金融取引を顧客にもちかけて不正に資金を集めていた。判明した被害総額は、約19億円。
 当事者である正下の動向に注目が集まるなか、「私もある意味だまされました」と名乗り出た、関西地方在住の第一生命契約者に取材を行った。

 第一生命契約者の女性Aが再三、力説していた「第一生命の責任は重い。詐欺の被害に遭われた方々に対して、保証することだ」とする意見は、その通りである。

 第一生命は2020年12月22日、「『元社員による金銭の不正取得』事案に関するご報告」という標題で声明を発表している。正下の19億円詐欺事件をはじめ、ほかの第一生命内部者が起こした顧客との金銭授受をめぐる事件についての経過報告などを詳細に示している。

 第一生命は、人事において、正下および吉田美智子母娘に授けられた、特別調査役や上席特別参与などの特権待遇を廃止すると発表。残りの文面では、通り一遍の分析結果と今後の対策について言葉を並べている。その内容は、第一生命のホームページで確認できる。

 報告書の文面には、「経営品質刷新プロジェクト」と称した社内での活動を掲げているが、具体性はほとんど感じられない。事件の責任・処分については、「然るべきタイミングで関係者の処分を実施し公表いたします」としており、危機感が見受けられない。なぜすぐに実行しないのだろうか。

 Aも述べていたように、第一生命が今回の事件を発生させた責任を取り、今後、誠実な対応を行うことは、まったく可能性がないものであろう。「我々は主導していないから、とりあえず謝っておけば良いだろう」という姿勢が現れた声明である。

 第一生命は正下の詐欺に対する被害者への補償について、調停などにより30%の立替弁済として幕を引こうとしている。これは言語道断であり、誠意のある対応を取るべきだ。手書きの証文を用いた古典的な手口による詐欺行為を、早期に発見できなかった第一生命の管理体制こそ問題がある。正下を特別待遇にしたうえで、正下が「何でもできる」風土を社内でつくり上げたことこそ、詐欺事件の元凶である。

 今回の事件は、世の中で頻繁に発生している寸借詐欺の類ではなく、正下が第一生命という絶大な力を有したバックボーンをもって、顧客の心を弄んで巧妙に利用し信用させたという、特殊事情の詐欺である。被害者にも若干の非があったにせよ、第一生命で特別なポジションに位置する正下から契約を迫られたら、誰しもが被害者になってしまうことだろう。

 以前にも述べたが、今回の事件でもっとも責任を取るべき者は正下であることは明白だ。加えて、その事実を知りながら黙認していた長女の吉田、第一生命の責任は重い。

 正下と吉田母娘の動向はわからず、正下と吉田が被害者に補償できる規模の資金を保有しているかどうかについてもまだ不透明である。この状況では、第一生命が被害者全員に被害額を今すぐに満額補償することが必要である。そのあとに、正下・吉田母娘と第一生命の間で話し合えばいいことだ。まずは「第一生命が今すぐ全額を補償せよ」と、Aの取材を通して筆者は確信した。

(了)

【河原 清明】

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