2024年03月30日( 土 )

【凡学一生の優しい法律学】日本政治文化の死~安倍元総理の「秘書に騙された」は虚偽証言の続きか、「桜を見る会」問題(後)

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(3)配川被告人の行為の具体的分析検討

 安倍事務所による宴会費補てんは、4年前から明らかになっている。通常、大規模な宴会をホテルに予約する場合、安倍事務所とホテルとの間で、予定人数と費用の概算が事前合意されなければならない。しかし、宴会参加者を「来る者拒まず」としていた安倍事務所は、事前に確定した人数をホテルに告知することは不可能であったため、現実の補てん額もぎりぎりまで不明である。場合によっては、余裕をみた人数で予約した可能性がある。

 そこで、宴会終了後の実際の支払いの段階での具体的な費用の確定が、1つの問題点となる。詳細が不明であるため、配川は余分の概算数で予約したものと仮定すると、実際に参加した後援会会員から集めた会費は事実上、無意味となる。いずれにせよ、安倍事務所はホテルからの請求額を支払うことに何らの変わりがない。

 したがって、安倍元総理が国会で説明した「会員から徴収した会費をそのままホテルに手渡した」という事実すら存在しない。この4年間に開催された4回の宴会は、すべてがそうである。補てんをしていないという嘘は、それ以外にも手渡しを仲介したのみという安倍元総理の証言も、虚偽証言であることを論理的に証明した。

 安倍元総理は補てんの有無のみでなく、会費の流れについてまで配川に虚偽の説明を受けていたことになり、そこで重大な疑問が生じてくる。安倍元総理は、配川に会費の流れまでなぜ聞く必要があったのか。安倍元総理が「補てんをしたのか」と尋ねたことに対し、配川は「補てんはしていません」と答えたため、安倍元総理が会費の流れについて配川から説明を受ける必然性はまったくない。安部元総理が会費の流れまで説明できたこと自体が、事前に想定された問答の回答として用意していたものと考えるほかない。

 安倍元総理が、配川に騙されたとされる時期が問題である。この重大な矛盾は今回の事件の流れにあるのではなく、過去3回の事件の経緯のなかにある。たとえば4年前の補てんの事実の経緯を分析すれば、安倍元総理は最新の記者会見においてさえ依然として虚偽証言をしていることが判明する。それは、補てんした金員の原資についての説明である。

 安倍事務所は今回、補てんの事実を認め、政治資金収支報告書を修正した。しかし、その原資が問題である。補てん金額が突然に出現したため、収入との不整合が発生する。安倍元総理は会見で、それは個人資金からの捻出であり、その個人資金については包括的管理権を配川に与えていたため、何の出費にあてられたかまでは把握していなかったと弁明した。しかし、この説明が、政治資金規正法の法制とは根本的にまったく無関係であることをマスコミは理解できない。もちろん、政治家が個人的に正当な業務行為で得た賃金・給与などは純然たる個人資産であり、政治資金規正法の収入には当たらない。

 一方、政治家が自分の資金管理団体に寄付をすることで、その資金は政治資金となる。いったん政治資金となった金銭は収支報告義務者が誰であれ、その資金の管理の最終責任は政治家個人にあり、秘書にまかせきりで何も知らないという弁解自体が許されない。

 政治家は、報告責任者の作成した収支報告書の説明を受け、自ら納得して最終責任を負うものであり、収支報告書虚偽記載罪というのは、報告義務者にのみ偶然に成立する身分犯として規定された「身代わり犯人」制度にすぎない。安倍元総理は各年度の終了後に、報告義務者である配川から確実に報告を受けて、それを了承している。そのため、毎年度、安倍元総理と配川との間で「騙し行為」が存在しなければ、安部元総理が今年度のみ騙されたという主張自体があり得ない。

(4)今後に残された問題

 配川には犯人蔵匿罪の嫌疑が残っており、安倍元総理には配川に対する虚偽記載命令指示を含む、本人自身の政治資金規正法違反の嫌疑がある。そして何よりも、政治資金収支報告書に記載できなかった宴会費の補てん、つまり、公職選挙法違反の嫌疑が残っている。弁護士有志や市民有志による安倍元総理に対する告発は続くだろう。それにともない、日本の検察審査会の闇が浮かび上がってくる。

 それにしても、日本の野党はなぜ全員が議員辞職してでも、国民に信を問う行動に出ないのだろうか。

(了)

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