2024年04月24日( 水 )

東京五輪開催は不可能という現実

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「五輪を優先して感染拡大を推進する本末転倒をやめるべきだ。日本政府の対応が遅れても、世界のアスリートが東京に来ることを拒むことになるだろう」と訴えた1月15日付の記事を紹介する。

あまりにもぶざまな政策運営。
年明け後の日本は「緊急事態宣言」の騒動に包み込まれている。

東京都の新規陽性者数が初めて1,000人を超えたのが12月31日のこと。
その数値があっという間に2,000人超えになった。
年明けから2週間が経過したが、1月15日の東京都の新規陽性者数も2,000人を超えた。

感染収束の見通しはまったく立っていない。
感染爆発の主因はGoToだ。
菅義偉首相はGoToに執着して12月27日までGoToトラベルの全国一時停止を実施しなかった。

11月12日に全国の新規陽性者数が3カ月ぶりに過去最高を更新。
11月18日に初めて2,000人を超えた。

11月21日からの3連休に人出が爆発することは目に見えていた。
GoToにブレーキをかけるラストチャンスが3連休前だった。
分科会から「英断を心からお願いする」とまで言われた。

ところが、菅義偉氏はGoTo全面推進を見直さなかった。
11月25日に「勝負の3週間」と述べたが意味不明だった。
「感染爆発に向けての勝負の3週間」だったとしか考えられない。

菅首相は、11月25日の国会質疑でGoToについて答えている。

日本共産党の宮本徹衆議院議員が追及した。
「GoTo事業を見直さず、感染を広げた反省はあるか」

これに対して菅首相はこう反論した。
「GoToトラベルが主要な原因だというエビデンス(証拠)は存在しない」

しかし、GoTo推進が感染拡大をもたらすことは明確に予測できた。

https://foomii.com/00050

私は11月24日付メルマガ記事「反知性主義支離滅裂政策が日本を亡ぼす」に
「11月3連休の人の移動を全面推進したことで、12月中旬の新規陽性者数が一段と激増することが予想される。
その主因がGoToトラブルキャンペーンにあることをあらかじめ告知しておく。
12月中旬に感染爆発状態が広がれば、年末年始の人の移動について、全面的な抑止措置が必要になる。
大津波特別警報を発令しておきながら、GoTo Beachキャンペーンを展開するような非論理性、反知性主義、支離滅裂政策が日本を破綻に追い込む」
と記述した。

菅首相は「GoToトラベルが主要な原因だというエビデンスは存在しない」と述べたが、正しい捉え方は「GoToトラベルが主要な原因ではないというエビデンスは存在しない」だった。

感染症対策の基本は「検査と隔離」。
広範に検査を実施して感染者を明らかにする。
その感染者を宿泊療養施設などに隔離して感染拡大を阻止する。
この方策に政策資源、財政資金を集中的に投下すべきだった。

菅内閣はGoToだけに力を集中し、検査と療養施設整備にまったく取り組まなかった。
そのため、いま、コロナ感染が判明しながら、入院も療養施設での療養も許されぬまま放置されている感染者が6,000人を超える事態が発生している。

その人々のなかから相次いで死者が発生している。
国民の命と暮らしがまったく守られていない。
菅内閣の責任は極めて重大だ。

このなかで、メディアが伝えない重大事実がある。
それは、高校バレーボール大会で多数の感染者が発生したこと。
高校バレーは無観客で実施が強行された。

しかし、大会に参加する選手はマスクをせずに大きな声を発し、互いに密着する。
この状況下で多数の感染者が発生した。
有観客で実施していればさらに感染が拡大したと考えられる。
スポーツ行事のリスクが改めて鮮明になっている。

東京五輪開催を強行しようとする菅内閣はスポーツイベントの実施強行を誘導していると見られるが、国民の命と暮らしを破壊して五輪を優先する姿勢は許されるべきものでない。
現状を冷静に見つめて、速やかに五輪開催中止を決断すべきだ。

菅内閣は会食の際に飛沫が飛ぶことが感染拡大をもたらすと強調している。
菅首相は、東京都が飲食店の営業時間短縮を積極的に行わなかったことが感染爆発の原因であると責任を転嫁することを画策してきた。

大阪府は時短営業を積極的に推進したから感染爆発防止に成功したが、東京都は時短営業を積極的に推進しなかったから感染が爆発し、緊急事態宣言発出に追い込まれた、

悪いのは小池百合子東京都知事だ、と言わんばかりの説明がなされた。
自分の責任を棚に上げて責任を他者に押し付ける菅首相の姿勢は見苦しい。

菅内閣が1月7日に緊急事態宣言を発出した際、菅首相は大阪府については緊急事態宣言発出が必要ないと明言したが、その大阪府から緊急事態宣言発出が要請された。
結局、1週間遅れで大阪府に対しても緊急事態宣言を発出する事態に追い込まれた。

時短営業を早めに要請した大阪府も、緊急事態宣言発出に追い込まれたのだ。
夜の遅い時間に飲食店が営業しているから、感染が拡大しているわけではない。

菅内閣は、夜の飲食店での会食が感染拡大の原因であると説明していたから、この説明を聞いた市民は、夜の午後8時、あるいは夜の午後10時までに飲食、会食すればよいと判断しただろう。

また、菅首相が5人以上での会食を避けるように呼びかけながら、自分は高齢者ばかりの8人でのステーキ忘年会に参加していたことから、会食自粛の必要性は極めて低いと多くの市民が受け止めた。

国会議員は自分たちの会食について、首都圏の1都3県で、午後10時までに4人以下で会食を行うことをルールとして定めようとした。

コロナウイルスが午後10時を過ぎると感染力を高めるわけではない。
朝でも昼でもウイルスの活動は変化しない。

飛沫が飛べば感染が拡大する恐れは高い。
国会議員が範を示す必要があるなら、会食をすべて禁止にすればよいだけのこと。
このような初歩的な対応も決められないのが、現在の国会議員のレベルだ。

「会食するのが国会議員の仕事」などと述べる評論家まで登場する。
国会議員の仕事は「国民のために働くこと」で会食することでない。

こんなことを述べる評論家は、政治家に寿司で接待されることを「仕事」と勘違いするのだろう。
政治家のレベルだけでなく評論家のレベルも低すぎる。

高校生のバレーボール大会開催を強行したのは、政府と癒着するマスメディア。
利権まみれの五輪を推進する悪徳勢力の一部だ。

バレーボール大会実施を強行して、感染を急拡大させた。
マスクなし、大声での発声、密着は感染拡大推進の行動。
会食よりもはるかにリスクが高い。

昨年12月下旬に変異種による感染拡大が警戒されたが、菅首相は外国人の国内流入を遮断しなかった。
「先手先手の対応」と言いながら、ザルの対応を続けた。
スポーツ関連の入国規制緩和も継続していた。
そのザル対応を1月13日になって、ようやく変えた。

東京都に対して緊急事態宣言が発出されたが、大相撲興行が強行されている。
マスのなかの座布団を動かさず、密着を避けての着席というガイドラインもまったく順守されていない。

感染者が発生しても、その存在を隠蔽する可能性も高い。
五輪を優先して感染拡大を推進する本末転倒をやめるべきだ。
日本政府の対応が遅れても、世界のアスリートが東京に来ることを拒むことになるだろう。

五輪延期のために3,000億円もの追加費用を投下することも馬鹿げている。
その金額があれば、日本の全国民にPCR検査を実施できる。
財政資金の無駄遣いをやめて「検査と隔離」に全力を集中すべきだ。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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