2024年04月25日( 木 )

長尾治療院・長尾良一氏のコロナ対策

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福岡大学名誉教授 大嶋 仁 氏

佐賀県唐津市にある長尾治療院には
全国から患者が訪れる

 長尾良一は佐賀県唐津市の鍼灸院・長尾治療院の院長である。知る人ぞ知るその道の達人。肩書きに「日中特種鍼法研究会会長」とあるが、伊達ではない。 

 「日中」とあるのは、日本式の鍼法と中国式の鍼法の両方をマスターしているということ。「特種鍼法」とは特殊な鍼法という意味ではなく、日中の伝統医学を総合した鍼法といった意味である。日本の大半の鍼灸師が日本式しか知らないのに、中国医学の鍼法までマスターしているとは驚きだ。しかも、その効き目のすごさは、一度は体験すべきものがある。 

 長尾氏によれば、漢方医学と中国医学は違う。漢方は日本化した中国医学で、「中医」と略して呼ばれる中国の伝統医学とは若干どころか、大きく異なるようだ。その両方に共通する根本理念を把握し、自在に手わざを展開して今日に至ったという。医者が難病奇病といい、もう手の施しようがないと見放した患者を氏は何度も治癒しているのだ。 

 ここでは長尾氏のような達人がどのようにコロナ対策を考えているか、紹介したい。以下は、長尾氏が語ったコロナ対策の概要である。 

 コロナへの対策は、マスクをするとか、密にならないとか、あるいはワクチンを接種してもらうとか、そうした消極的な方法では足りない。なにより、コロナウイルスにさらされてもそれに抵抗できる身体をつくるという積極性が大切なのだ。というのも、手や顔を清潔に保とうとすると、ウイルスの方もそれに応じて自己を強化する。そういうわけで、かつてはうがいで済んだのに、それでは足りないという事態になるのだ。 

 では、ウイルスに負けない身体をつくるにはどうしたらいいのか。まずは生活習慣の改善。中医的発想を取り入れることである。中医的発想とは、病気は薬で治すものではなく、本来身体がもっている力で治すという発想である。元気とは元の気という意味で、それを取り戻すことが大事なのである。 

 では、鍼灸治療はどういう役目をはたすのか。この治療は、なにより今言った「元気」を取り戻すのに役立つのだ、と長尾氏はいう。現代的な言葉でいえば、身体の免疫性を高めるのが鍼灸治療の目的なのだ。 

 鍼灸治療はまず腸の働きを良くする。腸の働きは免疫性の七割を占めるので、なにより腸がよく働くようにするのだそうだ。また、「三里」と呼ばれる腿のひざ下の部分に灸を据えれば、一気に白血球が増え、これがいわゆる抵抗力となる。そういうわけで、鍼治療と灸治療を合わせて施せばウイルスに負けない身体づくりができるというわけだ。 

「患者を健康にしたい」という強い気持ちで
治療に当たる長尾良一院長

 長尾氏は「コロナ、コロナ」とそればかり考え、消極的になるのが一番こわい。消極的になると身体全体が萎縮し、精神も萎縮し、うつになり、元気を失う。そうなると、ますますコロナに負けてしまう、と強調する。 

 一方、コロナだけでなく、どんな病気にも負けないようにしなくてはならない。コロナに気を取られ、別の病気にかかっては元も子もない。空気中にはコロナ以外にも万病の素がたくさんある。それらに負けないように免疫性を高めておく必要がある。そのためには、積極的になることが必要だ。 

 以上が長尾氏のコロナ対策の概要である。コロナ、コロナとそればかりに気を取られずに、積極的に健康を増進させ、どのような病原菌にも対処できる身体づくりが大切だということだ。言われてみれば当たり前、しかし昨今のニュースなどではなかなか聞けない話である。 

 長尾氏は中医学を西洋医学の言葉で説明してくれる。これは私たちには大変ありがたいことであり、それほど私たちは西洋医学に浸りきっていることに気づかされる。 

 とはいえ、長尾氏は必ずしも西洋医学と対抗しようと思っていないこともよい。これからの医学には双方の乗り入れが必要で、これまで以上に互いに接近し、情報交換をしていかなければならないと悟らされた。 

 さて、今回長尾氏のコロナ対策を取り上げて文章を書いたのは、世の中のコロナ言説があまりにも長尾氏のいうところの「消極性」に傾いているからだ。コロナウイルスが生命体なら、私たちも生命体なのだが、そのことが忘れられて、感染者数、感染度、ワクチンといったところにばかり目がいっているのである。しかも、コロナ以外はウイルスでないかのように、ほかの病原菌は忘れられている。これはやはり異常なことではないだろうか。 

 今のままだと、人類は「コロナか経済か」という二者択一に追い込まれ、動きがとれなくなる。しかし、それより前に、まず身体を考え、いかにその身体が機能して健康状態を保ち続けるか、それを考えるべきである。よく睡眠をとり、よい食事をし、深く腹式呼吸をし、生きている実感を取り戻さねばならない。 


<CLINIC INFORMATION> 
長尾治療院 日中特種鍼法研究会本部 
所在地 :佐賀県唐津市西城内6-7 
TEL :0955-72-7243 
受付時間:午前8時~10時30分、午後1時30分~6時(要予約) 
休診日 :日祝祭日(臨時休診あり)
URL :http://nagao-chiryouin.jp/


<プロフィール> 
大嶋 仁
(おおしま・ひとし) 
1948年鎌倉市生まれ。日本の比較文学者、福岡大学名誉教授。 75年東京大学文学部倫理学科卒業。80年同大学院比較文学比較文化博士課程単位取得満期退学。静岡大学講師、バルセロナ、リマ、ブエノスアイレス、パリの教壇に立った後、95年福岡大学人文学部教授に就任、2016年に退職し、名誉教授に。

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