2024年04月20日( 土 )

GoTo検査と生活保障が国の役割

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「政府がやるべきコロナ経済対策はGoToトラベルでなく、GoTo検査を優先し、利用要件を備えるすべての個人が生活保護制度を確実に利用できるように制度を抜本改正すべきだ」と訴えた1月28日付の記事を紹介する。

新型コロナウイルス感染症
緊急事態宣言発令中
政府広報

インターネット上のニュースサイトトップページの右側に政府広報の動画が掲載されている。
政府からインターネット事業者に広告料が支払われている。
テレビ、新聞のメディアを含めて、政府は公金を投入する業務の発注者として、メディアをコントロールする。
その一端が垣間見られる。

同じニュースサイトのトップの左側には与党幹部議員の銀座クラブ通いが報じられている。

右側の動画には西村康稔コロナ担当相と尾身茂氏が登場。

「今医療がひっ迫しています。
 話すときはぜひマスクを着用し、
 会食や飲み会は、宅飲みも含めて延期してください。
 極めて深刻な状況です。
 不要不急の外出や移動
 県をまたぐ移動も含め控えてください。
 今すぐ対策を強化することで
 必ず感染拡大を止めることができます。
 感染対策へのご協力
 ぜひともよろしくお願いいたします」
と述べる。

GoToトラベルを全力推進して感染爆発を引き起こしたのは一体誰か。
GoToで県をまたぐ移動を全面推進していたのは一体誰か。
GoToイートで会食を積極推進してきたのではないのか。

「後手後手 小出し 右往左往」
これが菅コロナ対応三原則。

感染拡大を積極推進して、感染が爆発すると緊急事態宣言。
感染が減少に転じるとGoToの再開。
そしてまた感染の爆発。

戦争屋と同じ手法だ。
国民はたまったものではない。

税金を使って、インターネット上のサイトで国民に
「会食や飲み会は、宅飲みも含めて延期してください」
「不要不急の外出や移動は控えてください」
「極めて深刻な状況です
 感染対策へのご協力
 ぜひともよろしくお願いいたします。」

呼びかけておいて、与党の議員はクラブ活動にいそしむ。

自民党国会対策委員長代理の松本純衆議院議員は東京都中央区のイタリア料理店で飲酒しながら食事をした後、銀座のクラブを2軒はしご。
クラブ活動を終えたのは午後11時20分。
公明党の遠山清彦衆議院議員も銀座でクラブにいそしんでいた。

子どもたちがクラブ活動を満足に行えないなかで自民党、公明党の現職議員がクラブ活動にいそしんでいる。
これが自公政治の現実。

菅首相もGoTo全国停止方針を発表した12月14日に、高齢者ばかりの8人による銀座ステーキ忘年会に参加。
忘年会の主催者は二階俊博自民党幹事長。
批判を受けると逆切れする始末だ。

コロナ経済対策としてGoTo事業は間違っている。
どうして1泊4万円の宿泊に政府が2万円の補助を出す必要があるのか。

コロナの感染が収束した段階で、国民の宿泊に際して、1泊5,000円の補助を出すというなら理解できる。
1泊について1枚だけ使用できる1万円の宿泊クーポン券を5,000円で販売すればよいだけのこと。
販売を地方自治体に委ねて、郵便局で販売すればよい。

菅内閣のGoToでは1泊4万円の宿泊を提供する宿泊施設に需要が集中する。
政治権力と癒着するひと握りの宿泊事業者だけに巨大な利益が供与される。
中小零細の宿泊事業者には恩恵が行き渡らない。

第3次補正でGoToに1兆円の予算を計上することを野党は阻止すべきだ
採決を阻止すべきだが、そのような気魄が野党にない。
GoToで感染爆発を招いたことについての責任追及が甘い。

菅首相にGoToの誤りを認めさせ、補正からGoToを撤回させなければ野党は、存在意義はない。
なぜ、GoTo予算計上の第3次補正予算の採決を容認するのか。
野党の対応は適正でない。

野党はGoToに反対して、観光業界の反発を受けることを恐れているのではないか。
そのような日和見対応では政策の歪み、政策の乱れを正すことなどできない。

GoToでは航空便を利用した旅行が補助の対象になる。
1泊旅行なら4万円、2泊なら8万円の旅行に対して政府が半額を補助する。

航空便はGoToで旅客数を著しく取り戻した。
GoTo停止と同時に航空便利用客が激減。
航空便利用者の大半がGoTo利用者であることが明らかになっている。
GoToは航空会社への巨大な補助金投入の手段になっている。

コロナで苦境に直面しているのは航空会社だけでない。
バス会社も極めて厳しい状況に置かれている。
このような事態に対して、特定の者にだけ利益を供与する政策が適正でない。

各省庁は自分の所管の業界を支配するツールとして補正予算を活用する。
結局、コロナ対策の補正予算が各省庁の利権の分捕り合戦になってしまっている。

GoTo事業でも、サービスデザイン推進協議会なる一般社団法人を介して、電通に利権予算が不正に配分されていた事実が明らかにされた。
コロナ対策の貴重な国費が政官業の利権資金に化けてしまっている。

このような不透明予算に国費を投入するなら、一律給付金のほうがはるかに透明、公正だ。
富裕層に給付金を支払うのが問題だとするなら、給付金を課税対象にすればよい。
場合によっては国が前年実績に従って源泉徴収してもよいだろう。
不透明な利権予算よりは一律給付金のほうがはるかに公正な財政資金配分だ。

PCR検査を1回2,000円で実施できることが暴露された。
1億回のPCR予算に必要な財源は2,000億円。
10億回のPCR検査でも財源は2兆円だ。

菅内閣はGoToに2.7兆円もの国費を計上した。
GoToトラベル、GoToイートより、GoTo検査が優先されるべきだ。

検査を広範に実施して感染者を特定する。
この感染者が感染を拡大させることを防止すれば感染を収束できる。

感染研、衛生研が検査独占を目論んで検査拡充を阻止し続けてきた。
この行為が検査数増加にともなう、感染研、衛生研が受け入れる財政資金拡大をもたらしてきた。
その際の検査費用の単価はいくらか。
国会審議で明らかにすべきだ。

コロナ経済対策で何よりも重要なことは、すべての国民の命と暮らしを守ること。
コロナ感染が明らかになりながら、放置され、死に至らしめられるのは、国家による虐殺。
PCR検査を求めるのに検査を受けられず、重篤化して死に至るのも国家による虐殺だ。

GoToにうつつを抜かして、国民を死に至らしめていることは、国会で謝れば済むというレベルの問題でない。
1年間、本当の意味のコロナ対策を何もしてこなかったことを意味するものだ。

生活困窮に際して最後のセーフティネットになるのが生活保護。
しかし、生活保護制度が機能不全の状況にある。
生活保護の受給要件を満たしながら、受給できていない人が8割を超える。

生活保護制度の利用を妨げている最大の理由が「扶養照会」だ。
親族に連絡がゆき、扶養の意思確認が行われる。
しかし、日本国憲法は第13条で国民を個人として尊重することを定めている。

第25条が保障する生存権は個人に対する保障であって、「イエ」制度を前提とするものでない。
同居家族以外に対する「扶養照会」を廃止して、利用要件を備えるすべての個人が生活保護制度を確実に利用できるように制度を抜本改正すべきだ。
その際、生活保護の名称を生活保障に変更すべきである。

政府がやるべきコロナ経済対策はGoToでなく、国民の命と暮らしを守ることを国会は明確にすべきだ。


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植草一秀の『知られざる真実』

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