2024年03月29日( 金 )

重要な岐路を迎える自治体のRDF発電~家庭ごみ処理施設、廃棄物発電はどうなる?(後)

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 家庭から出るごみの有効活用を目的に生まれた廃棄物発電。1990年代に「ダイオキシン問題」で焼却炉の排出基準が大幅に強化され、ごみ処理の広域化からRDF(ごみ固形燃料)発電所がつくられた。RDF発電はごみの長距離輸送を容易にし、安定発電できるメリットがあり、石川、・広島・福岡で稼働しているが、一方で重要な岐路を迎えている。

家庭ごみのRDF発電のゆくえ

 RDF発電はダイオキシン対策であるごみ処理の広域化により建設されたが、ごみ焼却炉の技術は大きく進歩し、今では小規模の焼却炉でもダイオキシン排出基準を満たすことができる。そのため、各自治体が独自で焼却炉を建設し、地域でごみ処理ができるようになった。

福山リサイクル発電(株)
代表取締役社長の佐藤吉秀氏

 RDF発電所やRDF製造施設の建設・整備費用は当時、およそ半分が行政の補助金で賄われたが、すでに補助金は終了しており、RDF施設が老朽化すると自治体に整備費の負担がかかる。一方、ごみ処理施設(焼却炉)は建設費用の約30~50%に補助金が適用されるため、施設が老朽化した場合にはRDF事業を終了して、焼却処理に移行することが主流となっている。

 福山リサイクル発電所に搬入されるRDFの9割を占める福山市では、JFEエンジニアリングが福山リサイクル発電所の近隣(箕沖町内)に「福山市次期ごみ処理施設」(焼却炉)を建設しており、2024年7月に竣工、同8月から運営を開始する予定だ(運営は20年間の見込み)。このごみ処理施設は発電施設でもあり、家庭ごみ焼却による売電が行われる。今では、小規模なごみ処理施設でも発電設備をもつところが増えているという。

 佐藤氏は「RDF発電は燃料の水分が10%以下のため発熱量も高く安定しており、通常のごみ焼却炉(ストーカ炉)に比べて発電効率が高い。またRDFの重さは通常のごみの半分、大きさは約5分の1になるため、広域輸送しやすいことも特長だ。一方、RDF製造施設は乾燥工程に燃料を多く使うため、燃料コストが運営費に与える影響が大きい」と話す。

 福山リサイクル発電事業は、当初の計画では事業期間が15年であったため、19年3月にいったん事業を終了したが、福山市など市町の意向で運転期間が5年間延長され、24年3月まで稼働する。

 もし、たとえば70~100億円の予算をかけて大規模の改修を行えば、さらに10~15年の稼働延長も可能であるが、RDFを搬入している市町の全額負担となるため、新しいごみ処理施設が完成した後は、RDF発電所を廃止して新しい施設に処理を移行する予定という。

 福山リサイクル発電所とほぼ同時期に建設された三重県の「三重ごみ固形燃料(RDF)発電所」は、19年に事業を終了した。石川県の「石川北部RDFセンター」、福岡県の「大牟田リサイクル発電所」は23年3月末をめどに事業の終了が決まっているという。一方、石川県と福岡県の一部の地域では、RDF発電所を廃止してもRDFの製造を続けると言われている。

 JFEエンジニアリングの19年度の受注高は4,130億円(売上収益5,122億円)。JFEエンジニアリングの受注高の約4割はごみ処理施設と焼却炉の新設・整備などであり、「今後も廃棄物発電やごみ処理事業を主力事業としてシェアを拡大していきたい」(同社)としている。

福山リサイクル発電(株)のRDF発電所

自治体のごみ処理施設はこれからどうなる?

 小都市圏や過疎化が進んだ地域では近隣2~4市町などで事業組合をつくり、家庭ごみの広域収集が行われており、1つの焼却工場にさまざまな地域からごみが運ばれる。以前は、ごみ焼却炉を民間企業が設計・建設し、自治体が運営する「EPC方式」が主流であった。しかし、民間企業が設計・建設とともに15~20年間の運営を担う「DBO方式」が、ここ10年で増えており、全国のごみ焼却炉のうち7割の運営を企業が担っている。

 JFEエンジニアリングは「中小規模の自治体では、ごみ処理施設を整備・運営する資格をもつ人材が不足していることもDBOが増加している理由だ。また、建設時に整備などを含めて発注するため、自治体が運営するよりも整備や運営コストが低減されやすい」と話す。

 全国の廃棄物処理施設は約1,100カ所で、JFEエンジニアリングが運営するのは全国124工場(事業規模は年間約700億円)。全国の廃棄物処理施設の半数にあたる約550カ所でDBOの需要が見込まれているという

 世界で主力となっている日本の環境技術。自治体の処理費用負担などコストの問題があるなか、ごみをどのようにうまく処理し、発電などに有効活用できるのか。これこそ、地球規模での取り組みが欠かせない環境問題の1つだ。国や自治体の取り組みに注目が集まるとともに、「もったいない」という感覚から生まれる日本の環境技術のさらなる進歩も期待されている。

(了)

【石井 ゆかり】

(前)

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