2024年04月16日( 火 )

“オール古賀”の取り組みで持続可能な明るい未来に向けて(後)

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古賀市長 田辺 一城 氏

新規開発や企業誘致で市の産業機能を強化

 ――今在家(いまざいけ)地区と新原高木(しんばるたかぎ)地区とで検討を進められていますが、新たな産業団地の開発はいかがでしょうか。

竣工したばかりの玄望園土地区画整理事業
竣工したばかりの玄望園土地区画整理事業

 田辺 本市は九州自動車道の古賀ICをはじめ、国道3号や国道495号などの大動脈が通る交通の要衝であり、市内の産業団地には多くの企業に立地していただいています。そうしたなか20年12月には、九州自動車道・古賀SA西側に位置する「玄望園(げんぼうえん)」の土地区画整理事業が竣工し、約28.2haという広大な敷地にもかかわらず、すでに全区画で入居事業者が決定している状況になっています。やはり本市は、福岡県はもとより九州のなかでも非常に重要な物流の拠点機能を担う場所だと思っていますので、この玄望園の竣工は、本市にとっても福岡県にとっても、非常に重要な一歩を踏み出せたのではないかと思っています。

 こうした産業機能の強化は本市にとって重要な課題の1つですが、開発の重要エリアに位置付けている今在家地区と新原高木地区ではこれまで、なかなか具体的な行政手続きには入っていませんでした。そうしたなか今在家地区では20年夏に、都市計画決定に向けた行政手続きに入りました。現在、今年4月の市街化区域編入等の都市計画決定に向けて事務手続きを進めていますが、非常に大きな一歩を踏み出せたと思っています。

 一方の新原高木地区については、以前は開発に対しての地元の皆さんの機運が縮小していたのですが、最近は再び前向きな雰囲気が醸成されてきております。市行政としても、この地元の機運をしっかりと支えながら、次のステップにつなげていけるようにしなければならないと思っています。

 そのほかの市内での開発の動きでは、青柳地区にある「古賀グリーンパーク」の周辺を活性化させるべく、企業誘致の取り組みを進めています。ここはもともと、道の駅の整備に向けての調査・検討を行っていたところで、19年8月末に道の駅の整備は行わないという決断をしました。とはいえ、市として観光や物産、情報発信などの機能は強化していかなければなりません。そこで、グリーンパーク内の物産館「コスモス館」の機能強化を図りながらも、周辺には工場体験や見学などの“コト消費”としての観光の視点を取り入れた企業の誘致を打ち出して、現在進めているところです。いずれはここも、古賀駅周辺などの中心市街地と連携させながら、本市の強みである工業力に“コト消費”を掛け算していく新たな取り組みで、それぞれに人の交流が生まれる場をつくっていきたいと思います。

デジタル化を推進し新たなまちづくりを

 ――2021年に、とくに注力していきたいことは何でしょうか。

古賀市長 田辺 一城 氏
古賀市長 田辺 一城 氏

 田辺 極めて重要だと思っているのが、デジタル化の推進です。本市に限らず行政が不得手としている分野ではありますが、コロナ禍を受けて社会の価値観も変容するなかで、是が非でも進めなければならないと思っています。実は本市では、コロナ禍の当初から試験的にテレワークの導入を進めてきましたし、教育現場においても、20年8月上旬には市内の中学3年生を対象にタブレットを配布するなど、国の「GIGAスクール構想」よりも先行して取り組みを進めています。こうした先駆的な実証の成果を踏まえながら、21年度には全庁的なテレワーク導入や市民サービスの提供でのデジタル化を進めていくほか、さらなる業務効率化に向けて、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)やその先のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入に向けての取り組みを進めています。

 また、デジタル化は交通インフラにおいても進めています。現在の市内の公共交通はJRや西鉄バスを“幹”に、コガバス(古賀市公共施設等連絡バス)やタクシーなどが“枝”として市民の移動を支えていますが、今後はよりきめ細やかな移動を可能とする方策を考えていかねばなりません。20年6月には地域公共交通網形成計画を初めて策定し、今後はこの計画に基づいて、市内の公共交通ネットワークをより改善・充実させていこうとしていますが、福岡市の西区壱岐南地区や東区のアイランドシティ、宗像市日の里などでAI活用型オンデマンドバスの実証が始まっていますので、こうした知見をしっかりとスピーディーに得ながら、本市においてもその有効性をきちんと考えていく。それは21年の非常に重要なテーマの1つだと思っています。

 ほかに(株)正興電機製作所さんを中心に、警備の(株)にしけいさん、(株)NTTドコモ九州支社さんと古賀市の4者連携で5Gを活用して、遠隔地と結んだ仮想空間上での会議や遠隔作業支援を取り入れた「リモートファクトリー」の取り組みを始めています。本市としては、このリモートファクトリーの実証に参画させていただくことで情報を得て、それを先に述べた中心市街地の活性化など、まちづくりにしっかりと活用していきたいと思っています。

 ただし、このデジタル化を推進するうえで非常に重要な課題が、高齢者の方々を中心としたデジタル・デバイド(情報格差)の解消です。デジタル化は今後、防災や福祉の視点でも非常に重要になってくると考えていますが、行政がいくら整備を進めても、市民がきちんと使えなければ意味がありません。こちらもきちんと対応していきたいと思います。

 ――最後に、古賀市の将来の姿について田辺市長の“夢”を語ってください。

 田辺 やはり、中心市街地だけでなく、小野地域や青柳地域も含めた市全体が元気になっていることが一番です。元気という表現は漠然としているかもしれませんが、やはり若い方々を中心に多くの世代がこのまちで暮らし、交流し、市民の皆さん1人ひとりが地域で活躍しながら市民の力でまちが元気に盛り上がって、古賀市が持続可能な明るい未来へとつながっていく――。そうした古賀市になってほしいですし、していきたいですね。そのために、市民の皆さんや市職員の皆さん、市内外の事業者の皆さんなどの力を結集し、“オール古賀”で頑張っていきたいと思います。

古賀市役所
古賀市役所

(了)

【坂田 憲治】


<プロフィール>
田辺 一城(たなべ・かずき)
1980年5月、古賀市出身。福岡県立福岡高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、2003年に毎日新聞社入社。11年4月に福岡県議会議員に初当選し、2期務める。18年12月に古賀市長に就任。現在1期目。

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