2024年04月25日( 木 )

ドメスティックバイオレンスで日本マクドナルド元社長・原田泳幸逮捕の衝撃!~日本版カルロス・ゴーンの異名をもつ「壊し屋」(5)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」(何でも食う犬さえそっぽを向く)ということわざがある。夫婦喧嘩は一時的ですぐに和合するものだから、他人が仲裁に入るのは愚かであるという意味(『広辞苑』より)。夫婦喧嘩の果てに、日本マクドナルドホールディングス(株)の原田泳幸(えいこう)元会長兼社長が逮捕された。「プロ経営者」として一世を風靡したスーパースターが、ドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)によって失脚の時を迎えようとしている。原田氏の「プロ経営者」の足跡をたどってみよう。

ベネッセで経営者人生初の挫折を経験した

 原田泳幸氏は2014年6月、通信教育大手(株)ベネッセホールディングス(以下、ベネッセHD)の会長兼社長に就いた。ベネッセの創業者、福武總一郎最高顧問から招かれたのは、ベネッセがビジネスモデルの転換期を迎えていたからだ。ベネッセは中高生向け通信添削講座「進研ゼミ」を柱に成長を続けてきたが、通信教育業界ではタブレット端末を利用した学習が人気を集めており、「進研ゼミ」に替わる新しいビジネスモデルを託したのである。

 だが、就任直後に約3,500万件の個人情報漏洩事件が発覚した。グループ会社の派遣社員が不正に持ち出したのが原因であるが、この漏洩事件が経営に与えた打撃は大きかった。信用を失った「進研ゼミ」の会員数が激減。2期連続の最終赤字に陥り、16年5月引責辞任に追い込まれた。

 会見では「道半ばで断腸の思いだ」と詰め腹を切らされた無念を口にしたが、その経営手腕を疑問視する声が多かった。ベネッセは、幼児のころから利用してもらい、小学、中学、高校、大学に至る受験生活の長期の信頼関係を築くビジネスモデルだ。だが、原田氏の流儀は、そんな息の長いビジネスには、そもそも向いていない。あくまで短期決戦型だ。

 しかも、本領を発揮するのは「壊し屋」であって、企業を再生する「リフォーム屋」ではない。ベネッセで経営者人生初の挫折を経験した。

台湾茶「ゴンチャ」の国内400店達成を目指す

 それから3年以上の歳月が経った19年12月1日、台湾発のティー専門店「ゴンチャ(Gong cha)」を運営するゴンチャジャパン(東京・渋谷区)の会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)に原田泳幸氏が就任した。「プロ経営者」は、今度は台湾茶のトップに招かれた。

 ゴンチャは06年に台湾で創業。日本には15年に東京・渋谷に国内1号店をオープンし、近年のタピオカブームの先駆けとなった。世界17カ国で1,300店舗の台湾ティーカフェ「ゴンチャ」を展開するゴンチャグループを、米国のプライベート・エクイティファンド、TAアソシエイツが買収した。

 TAは、グループ会長にマクドナルドのアジア太平洋地区を担当したピーター・ロッドウェル氏を、日本法人のトップにマクドナルド出身の原田氏を起用。原田氏は、ゴンチャグループのグローバルシニアリーダーシップチームメンバーに就任した。マクドナルドOBコンビで、台湾茶カフェのグローバル展開を加速させる。

 原田氏が社長に就いたとき、ゴンチャは51店舗だったが、店舗網を急拡大。目指すは台湾茶のスタバ版だ。昨年7月に開催したゴンチャジャパンの成長戦略の説明会で、原田社長は「数年以内に国内で400店体制を目指す」と宣言した。

 原田氏は、タピオカのイメージが強すぎることに危機感を抱き、昨年10月16日、初のフードメニューとして、3種のおかゆを発売した。コーヒーメニューも全店舗に広げた。タピオカ依存からの脱却を急ぐ。

プロ経営者の評価はゴンチャの成功にかかっている

 それにしても、なぜ台湾茶なのか。『bizSPA!フレッシュ』(20年1月25日付)のインタビューで原田氏はこう語っている。

 マクドナルド時代の部下が、GCJ(ゴンチャジャパン)の社長就任の話をもちかけられて、私のところ相談にきたんです。「じゃあ一緒にゴンチャを見に行こう」と店舗に足を運んだんですよ。そうしたら「この会社は伸びるぞ」と肌で感じました。(中略)何より私が1990年にアップルへ入社した当時の状況そっくりで、将来性のある会社だと確信した。なので、元部下に「その話は、前向きに考えたほうが良い」と助言しましたね

 結局、元部下はこの話を受けなかった。今度は、原田氏自身にゴンチャグローバルの役員から、社長就任のオファーの話が舞い込んだ。その役員も、かつてのマクドナルド時代からよく知る間柄だ。

▼関連記事
原田泳幸 関連記事一覧

 原田氏がゴンチャの経営を引き受けた理由がよくわかる。アップルに似ていると確信したこと。原田氏が経営者としてもっとも輝き、自身が誇りにしているのが、アップル時代だ。そのアップル時代に成功した手法が代理店戦略だ。ゴンチャを得意の代理店戦略で、短期間に急成長させることに奮い立ったということだ。

 プロ経営者としての原田氏の評価はゴンチャの成功にかかっている。だが、妻へのドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)で逮捕された。覆水盆に返らず。すべては水泡に帰した。

(了)

【森村 和男】

(4)

関連キーワード

関連記事