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2021年02月22日 07:00

西鉄「パークサンリヤン大橋」耐震問題訴訟~技術意見書作成者の1人 仲盛昭二氏に聞く(6)

 西鉄の分譲マンション「パークサンリヤン大橋」の耐震問題をめぐる訴訟が2月4日、福岡地裁で第1回弁論が行われた。

 Net IB Newsでは、被告から依頼を受けた弁護士の切望を受け被告側の反証を掲載している。原告である区分所有者と代理人弁護士の了解を得て、裁判のポイントおよび反証について構造設計一級建築士・仲盛昭二氏にインタビューを行った。

(聞き手・文:桑野 健介)

 ――被告設計事務所らは、「本件マンションが福岡西方沖地震により被害が生じていないので耐震性に問題ない」と主張しているそうですが?

 仲盛昭二氏(以下、仲盛) 2005年の福岡西方沖地震は警固活断層の北西部が動いた地震でした。パークサンリヤン大橋の近くにあるのは警固活断層の南東部です。05年の福岡西方沖地震の震度が観測された観測点のうち、パークサンリヤン大橋に近い福岡市南区塩原で震度5弱であり、法令規準を満たしていないパークサンリヤン大橋に大きな被害をもたらすほどの震度ではありませんでした。

 今後、警固活断層の南東部を震源とする地震が発生する確率は高く、地震の強さはマグニチュード7.2程度と予想されています。もし、パークサンリヤン大橋の近くの警固活断層南東部を震源とする地震が発生した場合、震度6強や震度7といった大地震となることが想定されます。そのためにもマンションを適法な状態に戻すべきなのです。

 このようなパークサンリヤン大橋と警固活断層との位置的な関係を無視し、被告設計事務所らが「福岡西方沖地震でも被害が生じていない」と主張をしていることは、合理性を欠いていると言わざるを得ません。

 2月13日夜、東北地方で震度6強の地震が発生しました。幸いにも亡くなった方はいなかったようですが、東日本大震災から10年経過しても大きな余震が続いています。東北地方だけでなく、首都圏やほかの地方でも大地震が発生する確率が高いと言われています。福岡の警固活断層も例外ではないと考えるべきです。

 警固断層帯は、福岡市東区志賀島北西沖の玄界灘から博多湾、同市中央区、同市南区、春日市、大野城市、太宰府市を経て、筑紫野市に至る断層帯です。断層帯の長さは55km程度で、概ね北西−南東方向に延びています。警固断層帯は、過去の活動時期の違いから、玄界灘から志賀島付近にかけての2005年の福岡県西方沖の地震の震源域にあたる北西部と、志賀島南方沖の博多湾から筑紫野市の警固断層にあたる南東部に区分されます。警固断層帯は、断層帯北西部、断層帯南東部ともに左横ずれを主体とし、断層帯南東部では南西側隆起成分の縦ずれを伴います。

 警固断層帯南東部ではマグニチュード7.2程度の地震が発生すると推定され、その際には断層近傍の地表面で2m程度の左横ずれが生じる可能性があります。地震発生の確率には幅がありますが、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになります。

 なお、断層帯北西部の2005年の活動により、断層帯南東部で地震が発生する可能性は、より高くなっているという指摘もあり、そのことに留意する必要があります。

(文部科学省政府地震調査研究推進本部サイトより)

 ――被告の設計事務所らが「震度5弱の福岡西方沖地震で被害がなかった」と主張していても、警固活断層の南東部が動けば、震度6強や震度7といった大地震となる可能性があるということですね。柱の鉄筋が不足しているというパークサンリヤン大橋が大地震に耐えられるのでしょうか?福岡西方沖地震の際に福岡市南区塩原で観測された震度5弱と震度7では、揺れの大きさはどの程度違うのでしょうか?

 仲盛 地震の震度は震度0から震度7までの10段階に設定してあり、震度7以上の大きな揺れでも上限は震度7となっています。もし震度7より上の震度が設定されていれば、熊本地震は震度8だったかもしれないと言われています。

 地震の強さ(エネルギー)を表すのがマグニチュードであり、マグニチュードが1増えればエネルギーは32倍になります。マグニチュードが2増えれば1,000倍です。マグニチュード6と8では1,000倍の差があるのです。

 震度は地上の揺れの大きさを表します。マグニチュート7クラスの地震でも震源が深ければ震度は小さくなり、マグニチュード5クラスの地震でも震源が浅ければ震度が大きくなります。

 気象庁の資料によれば、震度5弱は「固定していない家具が異動したり不安定な物が倒れる」とあります。震度7は「耐震性の低い鉄筋コンクリート造の建物では倒れるものが多くなる」とあります。最低限の耐震性を定めた建築基準法を満たしていない建物は倒壊する危険性が高いといえます。

 マンション全体で柱の鉄筋が7,000本以上も不足している建物が震度7の揺れに対して無傷でいられるとは考えられません。適法な状態に是正しなければ、マンションの居住者に被害が出るだけでなく、区分所有者は近隣の住民に対して加害者という立場に置かれることになってしまいます。こういう事態になることを私は憂いています。

(気象庁の資料)

 ――被告の設計事務所らは、構造計算プログラムメーカーに質問し回答を得たことで、構造計算が正しいと主張しているそうですが?

 仲盛 プログラムメーカーがプログラムの操作について説明することは妥当なことですが、法令規準の適用にまで言及することは越権行為だと思います。また、被告の設計事務所らが、設計から20年以上経過した今の時点でメーカーに問い合わせること自体がお粗末なことです。設計当時にプログラムの取り扱いや法令規準の適用を把握したうえで設計を行っていなければならないからです。提訴された今になってメーカーに質問すること自体が、設計当時、プログラムの取り扱いや法令規準の適用を把握していない状態で構造設計を行っていたことを裏付けるものだといえます。

(了)

※欠陥マンションに関するニュースを特集したサイト「毀損したマンション資産の価値を取り戻すニュース」を開設していますので、こちらもご覧ください。

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