2024年04月26日( 金 )

鎌倉・空き家再生ファンドで住民参加型のまちづくり(中)

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「参加型」クラウドファンディング

 エンジョイワークスは鎌倉、葉山、逗子で空き家や空き店舗などのリノベーションを行うほか、全国では他社のリノベーション事業もサポートしている。まちづくりはその土地に住み、地域の事情に精通している地元住民が主導したほうが、多くの人にとって住みやすいまちになるためだ。空き家再生事業では、クラウドファンディングによる資金調達も行っている。

内成棚田

 (一社)糸島半島エコツーリズム協会(福岡市西区)が主催する「二見ヶ浦プロジェクト」では、地元ならではのお店や風景をE-bike(電動自転車)で回るアクティビティを企画し、海岸沿いの空き物件となっている海の家や倉庫をその拠点として改築するサポートをエンジョイワークスが行っている。これらの物件は、2021年夏頃に改修が完了する予定だ。

 また、大分県別府市の山間地で休耕田となっている「内成棚田」では、アフターコロナを見越して棚田の観光事業もサポートしていく予定だ。千年続いた棚田の歴史を守るプロジェクトに興味をもってもらい、不動産、建築、店舗運営などプロジェクトに関わる参加者を募るイベントを開催している。内成棚田の景観維持とコミュニティ醸成に向けて、今後もイベントを開催し、プロジェクトの認知度が高まり参加者が増えてきたら、多くの予算をかけてエリア全体に宿泊拠点を整備する予定だ。

鎌倉の古民家、旧村上邸

 さらに、全国の古民家などをリノベーションして利活用する場となる「ハロー!RENOVATION」のウェブサイトでも、再生事業や施設運営をサポートする参加者や再生ファンドの投資家を募っているところだ。

 ハロー!RENOVATIONの投資型クラウドファンディングでは、利回り2~4%(運用期間4~5年)の案件が多いが、松島氏は「利回りの高さに注目するのではなく、プロジェクトに参加することに意義を感じて投資するケースが多い。コンセプトに共感してファンとなり、町おこしに自分も関わりたいという応援の思いだ」という。

 ハロー!RENOVATIONでは、歴史のある鎌倉の古民家を企業研修、地域コミュニティ施設に改修する「旧村上邸再生利活用ファンド」(総出資額900万円)、古い蔵を宿泊施設に改修する「葉山の空き蔵ファンド」(総出資額600万円)、長野県の古い蔵をレストランに改修する「松本和泉町伍蔵 再生ファンド」(総出資額200万円)など、7つの投資型や購入型ファンドを運営している。

右:松本和泉町伍蔵外観/左:松本和泉町伍蔵内観
右:松本和泉町伍蔵外観/左:松本和泉町伍蔵内観

 旧村上邸再生利活用ファンドの投資家は、その半数が鎌倉市民とやはり地元が多いが、建築家・黒川紀章氏設計のカプセルビル(東京都中央区)をマンスリーカプセルに改修する「中銀カプセルタワービル保存再生ファンド」(総出資額350万円)のように独自性のある建物では、地元に限らず全国から投資家が集まるという。

 松島氏は「コロナ禍でむしろ共感できるプロジェクトに投資・応援したいという意欲が高まり、クラウドファンディングの需要が伸びている。宿泊施設などが厳しい状況のため、ハロー!RENOVATIONのファンドでは、投資家と一緒に打開策を考えていく。事業運営も参加型で進めている」という。

中銀カプセルタワービル
中銀カプセルタワービル

(つづく)

【石井 ゆかり

(前)
(後)

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