西鉄高架化､駅前再開発も控える　住宅都市・春日&大野城の今昔（1）

奴国の中心地から大宰府防衛の重要地に

　福岡市の南東部（南区、博多区）に隣接し、ともに福岡都市圏におけるベッドタウンとしての発展を遂げてきた春日市と大野城市。ともに1972年4月に市制施行した両市は、市の人口規模も春日市11万3,291人、大野城市10万1,826人（いずれも2021年1月末現在）と同程度で、JRや西鉄などの鉄道路線が市内を通るなど交通アクセスに優れ、鉄道駅周辺や幹線道路沿いに良好な住宅地が形成されているなど、共通点も多い。また、それぞれの市役所は直線距離で約800mと近く、市役所周辺の中心市街地が連続しており、市民生活やインフラ面、経済活動面でも密接なつながりがある。そんな両市はこれまでどのような歴史を歩んできたのだろうか――。

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　現在の春日市および大野城市の一帯では、約1万年以前の旧石器時代から人間の生活が始まっていたとされており、春日市域の春日丘陵や白水大池周辺、新幹線博多車輌基地（博多南駅）周辺や、大野城市域の乙金山西麓や牛頸山北麓などから石器が出土している。とくに博多車両基地内の門田（もんでん）遺跡および柏田（かしわだ）遺跡から出土した旧石器は400点余りとされ、春日市から那珂川市にかけては旧石器時代から古墳時代に続く複合大遺跡群が形成されていたと推察されている。

　弥生時代になると、我が国最古級の水田稲作遺構として有名な板付遺跡（福岡市博多区）に近い立地もあって、両エリアのほぼ平地全域には水田が広がり、人口や集落が急増。弥生時代前期末には、両エリアを含めた御笠川や那珂川の下流域に広がる福岡平野全体に、政治的統一体として「奴国」が成立したとされており、とくに春日丘陵とその周辺の平地一帯には拠点的集落が出現して、やがて“王”の存在が見られるようになったという。この奴国の中心地とされる一帯には弥生時代の遺跡が密集しており、その筆頭に挙げられる国指定史跡「須玖岡本遺跡」の一部は現在、「春日市奴国の丘歴史公園」として整備。隣接する「奴国の丘歴史資料館」では、春日市内の遺跡から出土した埋蔵文化財などを中心とした民俗資料を展示・収蔵している。

　3世紀中ごろからの古墳時代になると、農業技術や水利技術の向上によって農地が拡大し、農業による経済社会が確立。各地で豪族による支配が相次ぎ、彼らによって春日市域や大野城市域に数多くの古墳や古墳群が造営された。また、5世紀末には朝鮮半島からの渡来人によって、須恵器（古墳時代から平安時代にかけて生産された青灰色で硬い陶質土器）焼成の技術が伝来。6世紀初頭から大野城市の牛頸地区や春日市の惣利地区、太宰府市の大佐野地区では次々と窯場が開かれ、推定300基以上もの窯場から多量の須恵器が生産されたとされており、一説には大野城市の牛頸地区が日本における“窯業発祥の地”ともされている。

　なお、大野城市の市名の由来にもなっている古代山城「大野城」は、663（天智2）年の朝鮮半島での「白村江の戦い」で日本が唐・新羅連合軍に大敗した後、天智天皇の命によって665年に大野山（現在の四王寺山）に築城されたもの。現在の大野城市・太宰府市・宇美町にまたがる同城は、同じく太宰府市・大野城市・春日市にまたがる「水城」（664年築城）と合わせて、唐・新羅連合軍の侵攻に備えて大宰府防衛を目的としたもので、現在はともに「大野城跡」「水城跡」として国の特別史跡に指定（1953年3月）されている。

　一方の春日市の市名の「春日」は、市内春日1丁目にある「春日神社」がその名の由来となっている。同神社は768年に大宰府政庁長官の藤原田麻呂氏が、大和国（現在の奈良県）から春日大明神の分霊を勧請して祀り、「春日神社」として創建したことに始まるとされており、現在も地域の氏神として信仰を集めている。

（つづく）

【坂田　憲治】