地域による協働のまちづくりで「住みよさ」実感できる春日へ(前)
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春日市長 井上 澄和 氏
小さな市域に集約された利便性の高さが魅力
――春日市の強みについては、どのように思われていますか。
井上 本市の強みを一言でいうならば、「コンパクトシティならではの総合的な満足度の高さ」だと思います。
市の面積は、福岡県内どころか九州の市のなかでも最も小さい14.15km2しかありませんが、市内に大きな河川や山はなく、高低差約150mと平坦な地形が多くて自然災害の影響を受けにくいという地理的な特性をもっています。そうした小さな市域のなかをJR、西鉄、新幹線と3本の鉄道路線が通り、春日駅(JR)、春日原駅(西鉄)、博多南駅(新幹線)とそれぞれの駅があるほか、西鉄バスが市内の各エリアを結び、さらに市内公共施設を結ぶコミュニティバス「やよい」が7路線あるなど、交通利便性に優れています。交通面では九州自動車道太宰府ICや福岡空港への距離も近く、大変便利です。
また、福岡市南区および博多区と隣接し、先ほどの交通利便性も相まって昭和40年代ごろからベッドタウンとしての開発が進み、現在では市内のほぼ全域が住宅地となっています。人口は11万3,291人(2021年1月末現在)と県内で5番目に多く、人口密度では九州・沖縄エリアで那覇市についで2位です。市内には2つの総合公園をはじめ、防災機能を備えた総合スポーツセンターや、4館の児童センター、救急指定病院である「福岡徳洲会病院」、筑紫地区で唯一の直営児童発達支援事業所「くれよんクラブ」など、公共インフラや子育て・教育、福祉・医療などの機能が高いレベルで備わっており、これらが市民生活における総合的な満足度を生み出しているように思います。まさに、国土交通省が進めていこうとしている集約型の都市構造「コンパクトシティ」を地で行くまちだといえるでしょう。
住民1人ひとりがまちづくりの担い手
――春日市では、「協働のまちづくり」に注力されているとお聞きします。
井上 本市で進めている「協働のまちづくり」とは、市民と行政とがまちづくりの対等なパートナーとして互いに補い合いながら、それぞれが当事者意識をもって、より良いまちづくりを行っていくものです。
実は、私が市長に就任当初の22年前は、まだ人口が10万人を突破したばかりで市としての活力や勢いが感じられる一方で、住民同士の人間関係というか、地域コミュニティが希薄化しつつあるという問題を抱えていました。そこで、就任2年後の2001年7月から「出前トーク『市長と語る』」と称して、市の幹部職員をともなって市内35地区すべての公民館などに出向き、市民の皆さまと自由な意見交換を行うという取り組みを行ってきました。これは、市の方針をただ一方的に伝えるというものではなく、市の施策についての質問をお受けしたり、地元からのご意見・ご要望をお聞きしたりするような双方向のやり取りです。
ここでは、公開することが市にとって不都合な情報こそ包み隠さず積極的に発信する一方で、いただいた意見は聞き流すことなく真摯にお受けし、施策として具体化できないか検討し、また、できないことも納得いただけるよう説明責任を果たすべく取り組んできました。始めた当初の2~3年は、苦情やお叱りの声が多かったのですが、やり続けてきたことで、まちづくりに対する建設的な意見が増えてくるなど、市民の皆さまの意識もずいぶん変わってきたように思います。これまでの20年間で700回以上開催してきていますが、協働のまちづくりの推進に最も重要である住民との信頼関係の構築に、ようやく手応えを感じているところです。
(つづく)
【坂田 憲治】
<プロフィール>
井上 澄和(いのうえ・すみかず)
1951年4月、春日市出身。西南学院大学経済学部卒業後、76年4月から衆議院議員秘書。87年4月に福岡県議会議員に初当選後、3期12年務める。99年4月に春日市長に初当選し、現在6期目。また、2012年5月の九州市長会副会長就任を経て、18年4月からは福岡県市長会長も務め、現在2期目。関連記事
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