2024年04月24日( 水 )

地域による協働のまちづくりで「住みよさ」実感できる春日へ(後)

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春日市長 井上 澄和 氏

エリアの価値を高めるため高架化契機に駅周辺整備を

 ――現在、西鉄天神大牟田線の春日市や大野城市を通る区間で連続立体交差事業――いわゆる高架化が進められていますが、どのような効果を期待されていますか。

春日市長 井上 澄和 氏

 井上 春日市と大野城市を通る区間約3.3kmの高架化は、福岡県が実施主体となって進めており、鉄道線路のほか、春日市の春日原駅と、大野城市の白木原駅と下大利駅の3駅が高架化されます。これによるハード面での事業効果としては、踏切除去による渋滞解消や歩行者の安全性向上、踏切事故の消失、公共交通の利便性向上などを期待しています。高架切替は22年8月の予定となっており、その後、春日原駅の新駅舎が24年11月に完成する予定です。

 また、こちらの高架化事業に合わせて、本市では「西鉄春日原駅周辺整備事業」を進めていきます。これは、駅へのアクセス道路となる春日原駅前線、駅東西の駅前広場および側道4路線の整備を進めていくもので、駅前広場の整備によってバスやタクシーから電車への乗り換えの利便性が向上する効果が期待できます。こちらの事業期間については現在、県と協議を進めているところですが、概ね高架化完了から2年後を想定しています。

 今回の高架化にあたっては、事業延長約3.3kmのうち、春日市域は春日原駅周辺の564mとなっています。そのため本市では、先ほどの西鉄春日原駅周辺整備事業で駅前に快適で便利な空間を創出し、地元住民や地元商店会と協働しながら民間投資を呼び込み、活力や賑わいを生んでエリアの価値を高めていく――。そして、この春日原駅周辺のまちづくりをモデルケースに、市全体を魅力あるまちへと成長させていきたいと思います。

 ――隣接する大野城市との連携については、いかがですか。

 井上 大野城市さんとは現在、西鉄の高架化という大規模事業の成功に向けて連携協力を行っていますが、それ以外にもこれまで、さまざまな事業を共同で実施しています。たとえば、両市が共同で設立した春日大野城衛生施設組合では、リサイクルプラザや浄化センターなどの施設を管理・運営し、不燃ごみやし尿の処理などを行っています。また、那珂川市も含めた春日・大野城・那珂川消防組合消防本部で消防や救急業務を行うほか、筑慈苑施設組合(筑紫野市、春日市、大野城市、太宰府市、筑前町)では火葬場の管理・運営を行っています。

 筑紫地区(旧・筑紫郡)の5市(春日市、大野城市、筑紫野市、太宰府市、那珂川市)ではこれまでにも、さまざまな部門での連携や情報共有しながら、事業を進めてきました。そのなかでも大野城市さんとは、お互いの市役所が見えるほど近く、両市の中心市街地も連続するなど、市民生活や経済活動でも密接に関わっていますから、これからもさらに連携・協力体制を強化していきたいですね。

春日市で暮らすことを市民が誇れるまちに

 ――最後に、目指すべき春日市の将来の姿について、市長の考えをお聞かせください。

子どもたちも地域行事に積極参加

 井上 本市は住みよいまちとして全国的にも高い評価を受けており、日経BP社が全国の20代以上の働く世代約2万人を対象に「住みよさ」について調査した「シティブランド・ランキング-住みよい街2020-」では、全国総合8位、九州・沖縄エリアでは1位という結果になりました。こうした春日市の住みよさに対する評価は、これまで進めてきた地域と行政との協働のまちづくりによる成果だと認識しています。

 ただし、将来的な人口減少や少子高齢化は、本市にとっても大きな課題です。これに対応するため、子育てしたいと思えるような環境の充実や、ファミリー層の転入および定住を促すための教育施策のさらなる充実、高齢者の方々が健康でいきいきと活躍できるまちづくりの推進などに力を入れていき、約40年後の2060年でも市の人口10万人維持を目指します。そして、春日市のさまざまな強みを生かしながら、第6次総合計画で掲げた将来都市像「住みよさ実感都市 かすが〜つながる はぐくむ 支えあう〜」の実現に向けて邁進していきたいと考えています。

 やはり、老若男女を問わず、ここに住めば安心して生活しながら、地域社会のなかでいきいきと活躍できる、そんな市になっていくことが理想ですね。単に交通利便性や住環境の良さだけでなく、地域社会においてお互いの顔が見えるというか、お互いに支え合うことのできる、成熟した温かみのあるまち。それが、今進めている協働のまちづくりの1つの到達点ではないかと思います。そして、ここで育った子どもたちが、進学や就職で一度市外に出て行っても、「いずれ戻って来たい」と思ってくれる。高齢者の方々にも「ここに住んでいて良かったな」と思っていただける。市民1人ひとりがここに住むこと、ここで育つことを誇りに思える、そんなまちにしていきたいと思います。

(了)

【坂田 憲治】


<プロフィール>
井上 澄和
(いのうえ・すみかず)
1951年4月、春日市出身。西南学院大学経済学部卒業後、76年4月から衆議院議員秘書。87年4月に福岡県議会議員に初当選後、3期12年務める。99年4月に春日市長に初当選し、現在6期目。また、2012年5月の九州市長会副会長就任を経て、18年4月からは福岡県市長会長も務め、現在2期目。

(中)

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