2024年03月19日( 火 )

別府市のマンション設計偽装~大分県は早急に県内の建物調査を行うべき(2)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 構造設計一級建築士・仲盛昭二氏が所有する大分県別府市の分譲マンション「ラ・ポート別府」について、2021年1月25日付けの仲盛昭二氏からの文書に対して、回答期限の2月8日を過ぎても広瀬大分県知事からの回答はなかった。大分県内に、建築基準法令を満たしていない建物や耐震性が劣る建物が存在している可能性が高いという指摘に対して、大分県の対応はあまりに無関心すぎるのではないか。仲盛氏に事情と意見を聞いた。

(聞き手:桑野健介)

大分県内のSRC造の建物の設計を調査すべき!

 ――仲盛氏が所有している別府市のマンション「ラ・ポート別府」に関して、大分県知事や別府市長に質問書を送付され、回答を得られていますが、建築確認を行った大分県知事からの回答はなかったそうですね。

 仲盛 私は、大分県が建築確認を行ったマンションが建築基準法令や規準を満足しておらず、耐震性に問題があると指摘しました。大分県が建築確認の審査においてラ・ポート別府と同じように見落としていた可能性が高いので、大分県内の他の鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物についても調査を行い、建築基準法令や規準を満足していない建物は是正をすべきであると意見を述べているのです。

 ――大分県は「建築確認済証および完了検査済証を交付」と回答しています。確認済証が交付されていれば、法令や規準を満たしていると思われますが、ラ・ポート別府では何が問題なのでしょうか。

 仲盛 07年以前の特定行政庁における建築確認の審査は、構造審査担当者も数年で異動するので十分な知識や経験を積むことができない上、審査日数は限られているという実態であり、構造計算書の中身を詳細に審査することに限界がありました。そのような背景から、分譲マンションの構造計算書の偽装が発覚した「姉歯事件」が起きたのです。姉歯関連の耐震強度が不足した建物についても建築確認済証や検査済証は交付されていました。この実例からも「違法建築物であっても、審査ミスにより建築確認済証が交付されていること」「検査済証が、建築基準関係規定に適合することを証明するものではないこと」は明白です。

 ――姉歯関連の耐震強度が不足した建物にも確認済証が交付されていたということは、審査が不完全だったということですね。

 仲盛 建築確認は性善説が前提となっており、特定行政庁や確認検査機関は構造計算の偽装などないという前提で審査を行っていました。この性善説を前提とした建築確認審査を利用したのが姉歯事件でした。国は、姉歯事件をきっかけに、建築基準法や関連法規を改正し、審査を厳格化しましたが、ラ・ポート別府が設計されたのは法改正よりも、かなり前になります。

 ――大分県の回答で「当時の書類が残っていないため詳細は不明だが、建築確認申請当時の基準を満たしていた」という部分も気になります。「当時の書類が残っていないのに基準を満たしていた」と断言できるのでしょうか。また、建築確認申請の書類が保存されているかどうかは、建物の耐震強度や適法性と直接関係ないと思います。

 仲盛 役所の書類には保存年限があり、建築確認申請書については、当時は5年となっていました(現在は15年)。先ほど述べたように、耐震強度が不足していた姉歯関連の建物についても確認済証や検査済証が交付されていた現実があるにもかかわらず、大分県が「建築確認の書類はないが基準は満たしていた」というのは、まったく根拠のない回答であり、筋が通っていません。「基準を満たしていた」と断言するのであれば、図面や構造計算書などの根拠が必要であることはいうまでもありません。

 建築確認申請書の正本は行政庁に保管され、保存年限を過ぎれば廃棄されますが、副本は所有者(マンションであれば管理組合)が保管しています。調べようと思えば、所有者から確認申請書の副本を借りれば調査することが可能です。大分県が副本を借りて調査を行わない理由は、調査をすれば大分県が困る結果となるからです。

 ――なぜ、大分県は「当時の書類が残っていないため詳細は不明だが建築確認申請当時の基準を満たしていた」と憶測にもかかわらず、断言しているのですか。

 仲盛 ラ・ポート別府は1991年の竣工から20年以上経過しており、不法行為で損害賠償を請求されることがないので、大分県はいくら不誠実な対応をとっても構わないと考えているからこそ、このような「子どもだまし」の回答をしているのです。しかし、法的に不法行為が追求されないからといって、大分県民に対する特定行政庁としての責任を免れるものではありません。

(つづく)

【桑野 健介】

※欠陥マンションに関するニュースを特集したサイト「毀損したマンション資産の価値を取り戻すニュース」を開設していますので、こちらもご覧ください。

(1)
(3)

関連記事