2024年03月28日( 木 )

企画が強みのアメイズマンション 機会を捉え新規事業にも挑戦

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(株)シフトライフ

「事業にはずみをつけたい」 上場デベロッパーの傘下に

 九州の地方都市では、実家から独立して持ち家を求める若者や、通院に便利なようにインフラが整った街中に住みたいと望む老夫婦が、「2つ目の住宅」としてマンションを購入する傾向が見られるようになってきた。地方都市は大手が進出しにくいこともあり、地場マンションデベロッパー間の競争が続いているが、そのパイオニア的存在が、(株)シフトライフだ。

 安価で立地が良いとして、同社のマンションブランドである「アメイズ」マンションは人気を博し、地方都市を中心に福岡市など九州各地で供給され、これまで好調な販売推移をたどってきた。

 2018年7月期に27億円の売上高、1億円の経常利益と、過去最高の業績を計上していたシフトライフは18年10月、東証ジャスダック上場のマンションデベロッパー・(株)アスコットの完全子会社となった。

 アスコットは東京都内を中心に収益不動産や「アスコットパーク」シリーズの分譲マンション開発を手がけてきた。シフトライフ子会社化の狙いについてアスコットは、投資エリア拡大による収益機会の増加を挙げた。樋口由紀夫社長は当時、「従業員の将来を考えて上場企業の子会社となることを選んだ。子会社化で事業にはずみをつけたい」と話していた。

 東京駅から半径1~1・5km圏内の東京都心で開発されてきたアスコットパークと、九州の地方都市で開発されてきたアメイズ。真逆の開発方針のようにも見えるが、「ニーズに応えるマンション企画」という視点で、互いにシンパシーを感じたようだ。

九州の地方都市で実績 「アメイズ」マンション

アメイズ日田駅前中央

 シフトライフは、樋口現社長と共同創業者によって設立された。一級建築士の資格をもち、建築設計会社や地場マンションデベロッパーを経てシフトライフを共同設立した樋口社長。これまで手がけてきたマンションの企画力に定評があり、安価でありながら「2・5m幅バルコニー」などのような「あったら嬉しい」工夫が同社のマンションには盛り込まれている。

 日田市生まれで、33歳まで同地で過ごしたという樋口社長は、日田について次のように話す。「日田では、前職で企画した物件を含めれば、これまで計3棟のマンション開発に関わることができました。毎年マンション開発ができるような大きなまちではありませんが、温泉もあり自然豊かで水はきれい。福岡市や大分市、熊本市などへのアクセスの良さも魅力です」。

 日田市の中心部であるJR日田駅前から徒歩3分、スーパーマーケット・サンリブ日田の駐車場跡地で同社が開発している「アメイズ日田駅前中央」は、飲食店などはもちろん、スーパーマーケットやドラッグストア、病院、銀行など生活に関わる施設やインフラが周辺にそろっており、一般的な購入層である3人家族などのほか、単身者の購入も目立っているという。郊外型のマンションとしては異例のスピード感で販売が進んでおり、完成前6カ月の段階で、契約済は6割を超える。

アメイズ健軍本町ヒルズ

 21年7月期は、アメイズ日田駅前中央のほか、鍋島藩の城下町として栄えた佐賀市本庄町の「アメイズ佐賀本庄レジデンス」(47戸)が完成予定。22年7月期には、熊本市内最古の神社といわれる健軍神社や商業施設、市電などを近隣に擁する「アメイズ健軍本町ヒルズ」(44戸)の完成も控える。熊本県内でのマンション開発は同社初となり、歴史と自然、交通利便性が強みだ。

「おうち時間」が増え需要に変化 再始動したリノベーション事業
 また、福岡都市圏では戸建住宅の企画も手がけ、これまで太宰府市などで供給した実績がある。さらに今秋からは一時中断していた中古マンションのリノベーション事業を再開する。

 新築マンション開発で培った企画力を生かし、建物の機能やデザイン性に新たな価値を付加することで再生させることは当然として、顧客目線のわかりやすいパッケージ商品として売り出した。

 間取り変更などをともなうリノベーションは、「好きなようにできる」反面、オーダーメイドであるためコスト面で不安が残る。同社のリノベーションは、面積を基準とした定額制とすることで、顧客の不安解消が図られている。リノベーション事業の再始動について樋口社長は、「コロナ禍で在宅時間が増えたことにより、リフォーム・リノベーション需要が高まっています。これを受け、リノベーション事業の再始動を決断しました。新築マンションの価格が高騰するなかで、選択肢の1つとなれば」と話す。

 新築マンションから中古流通やリフォーム・リノベーションなど、「住宅」に関わる事業を幅広く手がける同社は、九州一円を視野に入れつつも、福岡市内での開発にも力を入れていく方針だ。「発想力で、人と街の力に」を掲げる同社が、企画・設計に強みを持つ不動産業者として、価格が高騰する福岡市内のマンション用地でどのような企画を打ち出すのか、また再始動したリノベーション事業がそれをどのように補完していくのか注目したい。

リノベーション例

<COMPANY INFORMATION>
代 表:樋口 由紀夫
所在地:福岡市中央区天神4-8-25
設 立:2006年8月  
資本金:1,000万円
TEL:092-791-6100
URL:https://shiftlife-corp.com


<プロフィール>
樋口 由紀夫
(ひぐち ゆきお)
1956年5月生まれ。大分県日田市出身。80年、九州産業大学工学部建設学科卒業後、建築設計事務所に勤務。マンションデベロッパーを経て、2006年に(株)シフトライフを設立。翌年、代表取締役に就任し、現在に至る。一級建築士、宅地建物取引主任者。趣味は大型バイクでのツーリング。

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