2024年04月25日( 木 )

東北新社NTTの次はテレビメディア

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「国会における虚偽答弁、虚偽発言に罰則を設けるべきだ」と訴えた3月10日付の記事を紹介する。

「国民から疑念を抱かれるような会食、会合に応じたことはない」
「山田広報官から抗議の電話を受けた事実はない」
日本語の言い回しに注意が必要だ。

2012年3月9日に自民党が
“The Fax News”
で「TPPについての考え方」を発表した。

このなかに、
「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。」
と明記された。
しかし、自民党が推進したTPPにはISD条項が盛り込まれた。

ISD条項とは、外国政府の差別的な政策により何らかの不利益が生じた場合、投資家(Investor)である当該企業が相手国政府(State)に対し、差別によって受けた損害について賠償を求める(Dispute)権利を与えるための条項。

その裁定は世銀傘下の仲裁センターが行い、国家といえども、その決定に服さなければならない。
従って、ISD条項は国の主権を損なうものだ。
自民党公約はISD条項が国の主権を損なうものだから、合意しないと読み取れる。
ところが、自民党はこれを否定した。

「国の主権を損なうようなISD条項」に反対するが、「国の主権を損なわないようなISD条項」には合意すると主張した。
結局、TPPにISD条項が持ち込まれた。

「人の命を奪うような殺人を許さない」
として、
「人の命を奪わないような殺人」は許容するというのと同じ。

総務省官僚が受けた違法接待問題が拡大し続けている。
谷脇前総務省総務審議官はNTTなどからの接待を受けたことの有無について、
「東北新社以外から違法な接待は受けていない」
と答弁していた。

ところが、NTTからも接待を受けていたことが明らかになった。
山田真貴子前内閣報道官も同じ。
総務省は違法接待問題について調査を行い、その結果を国会に報告してきたが、その調査も虚偽であったことが判明している。

国会は国権の最高機関だ。
しかし、国会における発言、答弁に虚偽が散りばめられている。
国会審議そのものが冒とくされている。

国会での質疑においては「修飾語を付した事実確認」をやめるべきだ。
「今朝、ごはんを食べたか」
「今朝、ごはんは食べていない」
では事実を確認できない。

「今朝、食事をしたか」でもだめ。
「食事はしていない」が「パンと牛乳は口にした」というかもしれない。
「今朝、何らかのものを口に入れたか」
と聞くしかない。

武田総務相は3月10日の参議院予算委員会で
「国民から疑念を抱かれるような会食、会合に応じたことはない」
と答弁したが、立憲民主党の白真勲氏が
「国民に疑念をもたれなくても会食した事実はあるか」
と問うと、
「どなたと会ったか聞かれてすべて答えるのもいかがなものか」
として答弁を拒絶した。

重要なことは事業者と会食または面会の事実があるのかどうかだ。
「疑念をもたれる」という修飾語を付ければどうにでも言い逃れできる。
武田良太総務省が辞任に追い込まれる日は遠くないだろう。

中央官庁の公務員までもが、国会で虚偽答弁を平然と行うようになっている。
永田町の堕落、霞が関の堕落は目を覆うばかり。
その背景に安倍内閣の堕落があった。
国会で平然と虚偽答弁を繰り返した。

桜を見る会前夜祭における飲食は参加者各個人とホテルによって契約が交わされた。
安倍事務所は一切関与していない。
安倍晋三氏は繰り返した。

ところが、実際には安倍事務所がホテルと契約し、支払いを行っていた。
前夜祭の費用は参加費で賄いきれず、安倍氏の資金管理団体が不足分を負担していた。

政治資金規正法違反、公職選挙法違反事案だ。
政治権力と癒着する検察は安倍晋三氏を不起訴にしたが、検察審査会に審査が申し立てられた。

検察審査会は二度の起訴相当議決で安倍晋三氏を起訴すべきだ。
安倍氏は「息を吐くように嘘をつく」と言われた。

内閣総理大臣が平気で嘘をつき通す姿を見て、公務員は安心して嘘をつくようになった。
佐川宣寿元財務省理財局長も嘘をつき通した。
その陰で、何の罪もない前線の職員が死に追い込まれた。

日本の病巣が政治屋と官僚機構の幹部に宿る。
NHKに抗議の電話を入れていないかもしれないが、NHK関係者に何らかの連絡を入れた可能性は否定されていない。

NHK会長は「抗議の連絡は受けていない」と述べたが、連絡が何もなかったかどうかについて答えていない。

総務省幹部は衛星放送について会話したかどうかについて問われて
「記憶にございません」
と答えていた。

実際には衛星放送に関する生々しい会話がなされていた。
音声データという決定的証拠が突き付けられるまで真実を語らない。

「記憶にございません」は嘘にならないぎりぎりの逃げ道だ。
それでも「息を吐くように嘘をつく」よりははるかにましだ。

国会における発言について、虚偽答弁を容認する現在の法体系を修正すべきだ。
国会における虚偽答弁、虚偽発言に罰則を設けるべきだ。
そうでなければ、国会は無法地帯になる。

?の上に嘘を塗り固めて答弁がなされる。
疑惑は晴れず、野党は追及を続ける。

同じ問題に長時間をかけるのはけしからんと主張する者がいるが、けしからんのは、嘘をつき続ける議員、大臣、公務員だ。
法改正に時間がかかるなら、虚偽答弁が許されない証人喚問を多用すべきだ。

証人喚問を軽々に用いるべきでないとの主張があるが、国会が嘘まみれになっているのだから、国会浄化のために証人喚問の多用はやむを得ない。
公務員も証人喚問で招致すべきだ。

追及をする側も、修飾語なしの質問をし、修飾語なしの答弁を求める必要がある。
答弁する側は、修飾語なしで、事実をありのままに述べるべきだ。
多くの疑惑は週刊誌が決定的証拠をつかんでいることによって明らかにされている。

週刊誌報道がなければ、何の追及も実現していないという面が強い。
重大問題が明らかになり、国会で追及することになっても、テレビ放送が行われないこともある。
予算委員会審議はすべてテレビ中継を行うべきだ。

与党が首を縦に振らないなら、野党は審議拒否で対抗すべきだ。
与党が批判するなら、国民に、「与党がテレビ中継を拒絶している」から審議拒否を行うと説明すべきだ。

国民はテレビ中継を拒絶する与党を批判する。
東北新社による違法接待問題はNTTに波及したが、次はNHKとテレビ、新聞のマスメディアによる違法接待問題に移る。

テレビ局幹部による違法接待の事実が明るみに出れば影響は甚大だ。


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植草一秀の『知られざる真実』

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