2024年04月21日( 日 )

東海第2原発、再稼働差し止めの判決~避難計画不備で住民の人格権侵害を指摘

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 水戸地裁は18日、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働に関して、運転差し止めを命じた。

水戸地裁(水戸地方裁判所ウェブサイト)

 東海第2原発は、半径30km圏内の避難対象地域に全国最多の94万人が暮らしている。これらの30km圏内にある14自治体のうち、「広域避難計画」を策定しているのは、鉾田市(人口約1万人)、笠間市(約3万人)、常陸大宮市(約3万人)、久慈郡大子町(約100人)、常陸太田市(約5万人)などの人口の少ない5自治体にとどまる。一方、人口約27万人の水戸市をはじめ、日立市(約18万人)、ひたちなか市(約15万人)など人口の多い地域では策定されていない。

 水戸地裁は、実現できる避難計画が策定され、計画を実行できる防災体制が整っているというにはほど遠く、住民の生命や身体に深刻な影響を与えることになりかねないため、人格権侵害の危険性があるという判決を下した。

 これらの避難計画の策定が進んでいない理由の1つに、原発事故が発生し避難が必要となった場合、人口密集地の自治体では一定期間内に住民が避難できるよう、渋滞対策を行って避難手段を確保することが困難なことがある。また水戸地裁は、現行法では、原発周辺が人口の密集地域であっても、効力のある避難計画を策定できるかをめぐって疑問があるとしている。

 一方、裁判で大きな争点となった地震の想定では、原発が受ける可能性がある最大の揺れを評価する「基準値振動」が1,009ガルとされており、これより大きい揺れに襲われる可能性があるため過小評価されているという原告の住民側の主張について、水戸地裁は「判断に誤りや欠落があるとは認められない」という判決を下した。また、耐震性や津波の想定などが不十分とした住民側の指摘も認められなかった。

 東海第2原発は2011年の東日本大震災の津波で被害を受けて以降、運転を停止している。一般的には、再稼働に際しては原発が立地する自治体の了解が必要であるが、東海第2原発にでは、東海村のほかに周辺5市(水戸市、ひたちなか市、日立市、常陸太田市、那珂市)に事前了解権を拡大した「茨城方式」が導入されている。実質的には6自治体のうち1つでも了解しなければ再稼働を進めない方式を、周辺自治体の意向で構築していることでも知られている。

【石井 ゆかり】

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