2024年04月16日( 火 )

【医療】新型コロナ感染者の重症化予測システム開発 島津製作所、熊本大など

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 島津製作所(京都市)は3月29日、新型コロナウイルス感染症の患者から採取した血液や尿に含まれる「修飾ヌクレオチド」と呼ばれる物質を測定し、重症化を予測できる「修飾核酸分析システム(仮称)」を開発したと発表した。感染確認者を入院、ホテル療養、自宅療養などに割り振る際に役立ち、病床圧迫の解消にもつながる可能性があるとみられる。

 修飾ヌクレオシドを測定して新型コロナウイルス感染症の重症化などを予測する技術は、熊本大学大学院生命科学研究部の富澤一仁教授(分子生理学)らの研究グループが開発した。「修飾核酸分析システム」には、前処理から分析まで全自動の装置が使われる。分析前処理装置メーカー「アイスティサイエンス」(和歌山市)が開発したもので、修飾ヌクレオシドの成分量を6分以内で測定できるという。

 新型コロナウイルスはRNA(リボ核酸)ウイルスの一種。ウイルスの中には化学修飾された多くのRNAが存在し、一方、ヒトの細胞にも化学修飾されたRNAが存在する。これらのRNAは分解されると、最終的に修飾ヌクレオシドと呼ばれる物質になる。修飾ヌクレオシドは血液や尿にも存在するため、質量分析器という装置で幅広く解析できる。

 研究グループは、新型コロナ感染症患者の細胞内の修飾ヌクレオシチドを解析し、コロナウイルス感染によって特異的に上昇する2種類の修飾ヌクレオシチドを突き止め、バイオマーカー(生物指標化合物)として機能することを明らかにした。

 その後、研究グループは患者約200人の血液と尿を解析。その結果、健康な人と比較すると患者の修飾ヌクレオシチドが統計的に有意な差(誤差とは考えられない値)で上昇していることがわかったという。修飾ヌクレオシチドを使う診断の精度は感度(※1)99.3%、特異度(※2)93.33%で、コロナ感染の有無を調べる標準的な検査方法になっているPCR検査とほぼ同程度の精度で診断できる。さらに修飾ヌクレオシチドの測定値が上昇すると患者の重症化も進むことも立証した。島津製作所はこの研究成果を基に、液体クロマトグラフで分離した各成分を分離・検出する計測装置にしたうえで、多くの成分を一斉に分析できるメソッドパッケージ製品として開発した。

 富澤教授らの研究グループによると、測定に必要な血液や尿は約0.1㏄。採取する医療従事者の感染リスクも低く、咽頭ぬぐい液や唾液を採取するPCR検査よりも安全かつ迅速にコロナ感染の有無や重症化予測が可能になるという。ただ、この製品は医療機器として厚労省の承認を得ていないため、島津製作所は承認を待って6月中の発売を目指す。

※1:感度
 検査において、陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率。 ^
※2:特異度
 検査で陰性と判定されるべきものを正しく陰性と判定する確率。感度も特異度のどちらも、検査の信頼度を評価する指標の1つ。 ^

【南里 秀之】

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