2024年04月20日( 土 )

【IR福岡誘致開発特別連載 31】「かしいかえん」も「アイスアリーナ」も救世主はIR福岡誘致

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阪急電鉄の創業者が残した「都市計画の基本」

 筆者はこれまでに、全国の各IR候補地のなかで、福岡市都市圏だけが既存の交通インフラが唯一充足していると重ねて説明してきた。IR誘致計画で最大の集客力を見込める移動手段は、大量に人々を運ぶことができる鉄道である。

 福岡市都市圏の各鉄道事業者による鉄道網インフラの強みは、統一されている線路の軌道幅(1,067mm)にあると力説してきた。JR九州、西日本鉄道、福岡市営地下鉄は、どの場所でも理論上、相互乗り入れが可能である。実行するかどうかはそれぞれの意志にかかっている。公共の交通機関ゆえに各社は合理的に考えるべきだ。

 1907年に阪急電鉄(当時は箕面有馬電気軌道)が設立され、創始者・小林一三氏は当時、大阪-神戸間を走る阪神電鉄や東京-横浜間を走る京浜電気鉄道、また大阪-京都間を走る京阪電気鉄道から、田舎を走るだけの“ミミズ電車”と揶揄され馬鹿にされた。

 しかし、いざ開業すると、当初計画の2倍の運賃収入となった。宝塚歌劇団(当時は宝塚歌唱隊)劇場や宝塚温泉などの目的地をつくり、沿線(現在の豊中市など)に住宅地も合わせて開発したことが功を奏したのである。

 都市計画の基本となる鉄道路線については、まず目的地をつくり、それに沿った沿線開発を行う。このことは、鉄道会社の関係者なら誰もが知る常識となった。だから西日本鉄道は、かつての宮地嶽線・競輪場前(現在の貝塚駅)から目的地の宮地嶽神社(津屋崎駅、現在の福津市)までの路線を敷き、高度経済成長期の56年にはその途中にファミリーで遊べる施設がある香椎花園駅(チューリップの花園)を新設したわけである。

 しかし、その後、経済・住宅環境が変わり、同路線は高齢者の多い単純な住宅地までの通勤電車となった。若い人々の住宅地は東へ(福間・津屋崎・赤間など)伸びて、高速で走るJR九州の通勤快速に変わっていった。

西日本鉄道や西部ガスは誘致開発事業の推進を

 既報「IR福岡誘致開発特別連載2124」で紹介した通り、IR福岡誘致開発の実現後に、西日本鉄道、JR九州、福岡市営地下鉄の合計収入は年間99億円以上になると試算される。これだけの経済効果が見込まれるのである。

 JCI福岡は昨年、さらに先月と大々的なイベントやプロモーション活動を行い、IR福岡誘致開発事業の具現化を地元財界に訴え続けている。九州経済連合会も共催し、竹中工務店をはじめとするゼネコン各社もスポンサーとして名を連ねている。その努力はいまだ実らず、地元財界関係者の一部は、IR長崎を理由に一切本件に踏み込もうとしない。

 これは、大変嘆かわしいことだ。誰もが長崎ではなく、IRは福岡に誘致すべきだと理解していても、それを言い出す福岡財界の関係者は1人もいない。何かを恐れて傍観しているようだ。

 筆者は、今年12月に「かしいかえん シルバニアガーデン」を閉鎖すると発表した福岡財界の雄である西日本鉄道がイニシアチブをとり、IR福岡誘致開発事業を推進すべきと考える。まずはJCI福岡の関係者に接触することから始めてはどうか。簡単なことではないか。

 6月末で閉鎖する「パピオアイスアリーナ」の運営管理者の西部ガスも同様である。これもIR福岡誘致開発事業が実現すれば、その施設内に米国本場のエンターテインメントとして新たに建設することも可能と考えられる。公共的な事業を担う企業の義務ではないかと思う。絶好のチャンスと捉えるべきであり、良いアイデアはたくさん湧いてくるはずだ。

 阪急電鉄の創始者・小林一三氏を見習いたいと考えるのは筆者だけなのだろうか。そうであるなら、さみしい限りである。

【青木 義彦】

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