2024年04月26日( 金 )

大分ならではの賃貸マンション企画「ちょうどいいマンション」とは(前)

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(株)ジェイ・スペース 代表取締役 橋住 柾風 氏

 大分市内を中心に、賃貸マンションを供給する(株)ジェイ・スペース。2019年に行われたユーミーマンションFC全国大会では、ポイントランキング(受注した坪数から算出)で第3位を獲得し、同時に躍進賞と目標達成賞を受賞した(いずれも18年度実績)。大分で賃貸マンションを供給する意義と組織づくりについて、同社代表取締役・橋住柾風氏に話を聞いた。

福岡の広告代理店社長、大分のデベ社長に

 ――2017年にジェイ・スペースの社長に就任されたとのことですが、その経緯についてお聞かせください。

(株)ジェイ・スペース 代表取締役 橋住  柾風 氏
(株)ジェイ・スペース 代表取締役
橋住  柾風 氏

 橋住 私は、福岡市で分譲マンションに特化した広告代理店を経営しているのですが、土地や不動産情報に触れる機会が多く、以前から実業として不動産に関わってみたいという思いがありました。

 M&Aという選択をとったのは、経営者として10年を超える実績を積んだことで、次の段階に進むべきタイミングだと感じたからです。さらに、これまでの不動産の知識を生かした新しい事業を展開できる “チャンス”であると思い、M&Aという可能性に賭けてみようと決意しました。そして、M&A仲介業者を通じて紹介された企業の1つがジェイ・スペースでした。ユーミーマンションのことは知っていましたし、オーナーとの関係を築きながら同時にまちづくりの活性化にもつながる事業だというところに強く心が動かされました。もちろん未知の領域もあり、慎重にもなりましたが、それよりも挑戦したいという気持ちが勝り、ジェイ・スペースを経営する決断をしました。

 ――M&A後にジェイ・スペースで取り組んだこと、組織や慣習について変えたことはどのようなことでしょうか。

 橋住 外部から来た他人が突然トップになったことで、戸惑った社員もいたと思います。既存のメンバーには誰1人として辞めてほしくなかったので、まずは皆とコミュニケーションを図ることに努めました。当時は社内の雰囲気が暗く、社員のモチベーションや各部署間の情報共有にも問題がありました。しかし、1人ひとり対話を重ねることで、それぞれのパーソナリティーや強みがわかり、1つの組織としてのマネージメントが不十分であることを実感したのです。そして組織を再構築するにはどうしたらいいのか、1人じゃなく、全員で取り組んでいくうちに、社風がどんどん変わっていったのです。

 業務のオペレーションや慣例も大幅に見直しました。それまでの顧客提案は、営業担当ができ上がった計画書をもって行くだけ。直接お客さまと接する営業が、各プロジェクトの全体像を把握していないことに怖さを感じましたし、それでは「仕事を楽しむことはできないのでは?」と思いました。ですから、フレームワークを整理し、営業には事業計画作成などについて、裁量を与えるようにしました。任せることで、それぞれの分野で知見をもった人が増えていき、3年も経つと目標達成への意欲が強くなり、課題解決に向けた知恵を積極的に出し合うようになっていったのです。情報共有や合意形成の流れが明確となり、部署間の連携がとれるようになったことは、活気ある組織になっただけでなく、実際に数字にも結びついています。

 また、DXとまでは言いませんが、オリジナルの基幹システムを導入しました。たとえば、入居者対応など賃貸管理部の細かな仕事内容を営業部のメンバーが見ることができるというものです。そうやって各部署、各人の仕事を可視化したことで相互理解が生まれ、フォローし合うようになり、仕事の効率は格段に上がったと思います。仲間の苦労を知ることで、自然と尊敬や尊重の念が生まれるようなシステムを意識し、皆の意見を取り入れながら構築しました。社内稟議の決裁にも対応して、業務フロー改善にも役立っており、結果として収益力の向上にもつながったと思います。

M&Aきっかけに17年以降は右肩上がり

 ――これまでのマンション開発実績と業績推移について教えてください。

リオ グランデ(大分市萩原) 1LDK-全20戸
リオ グランデ(大分市萩原) 1LDK 全20戸

 橋住 04年の創業から現在までの16年間の開発実績は66棟・966戸です。年間棟数はだいたい5棟前後ですが、ここ数年は戸数の多い物件を開発しているため、19年は117戸、20年は124戸、21年は144戸(予定)とペースを上げています。

 私が社長に就任したのは17年12月でしたが、6月決算まで残り半年という時点で、当時の受注はゼロでした。ですが、残りの半年で5棟を受注することができ、過去最高の受注高を上げました。それから3年半経った今、当時7億円だった売上高は、今期12億2,000万円、来期の受注は14億円以上を見込んでいます。

 おかげさまで受注の増加とともに、採算性も向上してきています。フランチャイズであるメリットを生かし、知識の豊富なユーミーマンション本部に設計を任せることで、社内の経費を抑え、事業提案に注力することができていることも要因として挙げられます。

 ――投資家と入居者から評価されているポイントについて、それぞれお聞かせください。

ZEUS松原(大分市松原町) 1LDK 全20戸
ZEUS松原(大分市松原町) 1LDK 全20戸

 橋住 当社は、企画・開発から販売・管理までをワンストップで行っています。「暮らしやすさ」を第一に考え、常に入居者目線を忘れないことで、投資家へ安定した経営を提供することにつなげています。現在、当社が管理している770戸のうち空き室は9戸で、2月時点の入居率は98%、年間でも97.5%(20年実績)をキープしています。

 最近のトレンドは、2人でも住める広めの1LDK。4階や5階といった比較的低層の物件が多いのですが、ほとんどの物件でエレベーターも完備しており、上階も人気があります。企画を工夫することで、コストを抑えながら使いやすい間取りを用意し、賃料も手ごろな「ちょうどいいマンション」を意識しています。

 管理面では、当社の賃貸管理部の社員が、入退去などの賃貸管理から、メンテナンス業務まで行っています。掃除が行き届いているか、これだけで入居率は大きく変わってくるのです。入居者あっての賃貸経営ですから、マンションは企画だけでなく、メンテナンスなどの管理分野でも入居者目線を忘れてはならないと考えています。

(つづく)

【松本 悠子】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:橋住 柾風
所在地:大分市萩原1-17-9
設 立:2003年4月
資本金:3,700万円
TEL:097-585-5522
URL:https://jey-space.com

(後)

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