2024年04月20日( 土 )

【凡学一生の優しい法律学】国会不召集、憲法53条違憲訴訟の読み方~東京地裁判決(中)

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東京地裁判決の具体的内容

(1)提訴は「不適法」、「裁判の対象とはならない」との却下判決

 この判決は法律(裁判所法)の解釈問題であるから、論理的に正しいかを知るためには、まず裁判所法の規定を見なければならない。裁判所法の条文を下記に示す。

裁判所の権限
第三条:裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律においてとくに定める権限を有する。 (以下略)

    つまり、「一切の法律上の争訟」が裁判の対象である。裁判所法は日本語を理解する普通の日本人の国会議員により制定された普通の国民に向けた法律であるから、まず条文は「普通の日本人の理解力」で解釈しなければならない。

 法律上の争訟とは、法律に書かれた内容(法律事実・要件と法律効果)についての争訟(あらそい)であるから、まず訴状に書かれた内容についての形式的・外形的な判断が行われる。つまり、主張・要求が証拠や論証によって正当かどうか(これを主張には「理由がある」という)は実質的な判断となる。

 今回の地裁判決は、訴えが形式的・外形的に訴訟要件を満たしていないと判断したもので、主張に理由がない、と実質的判断をしたものではない。これを訴訟法的には要件審理と言い、内容の実質について審理する「本案審理」と区別される。世間でよく聞く、「門前払い」判決、要件審理判決である。

 要件審理は形式外形で判断するもので、外形が「法律上の争訟」の体裁をしていれば要件を満たす。地裁判決はこれを「争いは国家機関同士の争いであるから不適法(つまり法律上の争訟とはならない)と判示した。

 行政事件訴訟法では「機関訴訟」として公的機関(国家機関同士、および地方機関を含めた公的機関)どうしの争訟を規定しており、不適法との理由は理解しがたい。明らかに「法律上の争訟」であるにもかかわらず、裁判拒否の判決を出している。この判決には恐らく多くの学者の批判的見解が専門的に発表されるであろう。それはとりもなおさず、デタラメ判決であることを示しているが、それでも裁判官は平気でこのような判決を出す。

 裁判拒否判決(訴訟却下判決)は「法律上の争訟性」のみの判断であり、原告、被告の法的資格立場を考慮するのは「原告適格・被告適格」の問題となるが、本件の内容から見て明らかに「当事者適格」にはまったく問題はない。国家機関同士だから、という理由はまさに当事者適格についての判断であるから、明らかに重大な誤判である。

(つづく)

(前)
(後)

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