コロナ禍でもホテル開発は続行、観光都市・別府の高いポテンシャル
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コロナ禍で大ダメージ
国内総数の約1割にあたる約2,300もの源泉があり、源泉数および湧出量ともに日本一を誇る世界有数の温泉地・別府市。市内には「別府八湯」と呼ばれる個性豊かな8つの代表的な温泉地があるほか、源泉に由来する青・赤・白などの泉色や間欠泉などの奇観からなる“地獄”を周遊する「別府地獄めぐり」といった定番の観光スポット、温泉の蒸気を使って食材を蒸す「地獄蒸し」などの温泉グルメもあり、こと温泉に関しては、「おんせん県おおいた」のなかでも一際存在感を放っている。多くの市民が宿泊業や飲食業などのサービス産業に従事するほか、間接的なものも含めると観光産業に関わる市民は9割近くにも上るといわれ、名実ともに観光のまちといえる別府市だが、観光産業に特化して成り立ってきたまちだからこそ、コロナ禍によって現在、青息吐息の状況となっている。
(一社)別府市観光協会・専務理事の安波照夫氏は、「正直、大変厳しい状況なのは間違いありません。一時は『GoTo』などの効果でお客が戻りつつある気配もありましたが、感染拡大の第3波や2度目の緊急事態宣言などでまた元通り。今、市内を訪れている観光客の数は、良くて以前の2~3割程度だと思います。5年前の熊本地震の影響もほぼなくなり、インバウンドの恩恵も受けながら、やっと別府の観光産業に光が当たり出した――と思った矢先だったのですがね・・・」と語る。
2016年4月の熊本地震では、別府市内でも震度6弱を観測。人的被害は少なかったが多くの建物が損壊し、観光産業では風評被害などによって大きな打撃を受けた。その後、16年11月に遊園地と温泉を融合させた「湯~園地」などのPR戦略が功を奏したことや、インバウンド特需による外国人旅行客の増加などによって次第に回復。一時は外資を含めた大手ホテルが相次いで別府への進出・投資を発表するなど、観光地としての別府の魅力が国内外から広く認められつつあった。
ところが、コロナ禍によって状況が一変。20年4月の緊急事態宣言中や、GW期間中には、市内の観光施設やホテル・旅館などが次々と休業を余儀なくされた。その後は「GoToトラベル」キャンペーンなどの効果もあって、徐々に観光客が戻りつつあったのだが、感染再拡大や「GoTo」停止、さらには2度目の緊急事態宣言発出などによって、再度ジリ貧に。別府市が公表している20年12月26日~21年1月13日までの年末年始期間中の観光統計の入込調査結果では、観光施設の入場客数が前年同期比で67.0%減、宿泊客数が同67.7%減となるなど、基幹産業である観光産業に多大なダメージを被っている。
依然高い観光ポテンシャル
一方で、「こうした状況下で海外への渡航ができませんので、修学旅行先を国内の大分・別府にというお話はチラホラ出てきています。また、マイクロツーリズムで、福岡や宮崎、熊本などの近県からのお客さまは、次第に戻ってきていただいていると感じます。皆さん、コロナ疲れで『どこかに旅したい』となったときに、近場の代表的な温泉地として、大分・別府を思い出していただけているのではないでしょうか」(安波氏)という意見もある。安波氏の話では、別府を拠点に県内をめぐる貸切バスツアーや、鉄輪などの温泉地のまち歩きツアーなどのニーズが徐々に出てきているといい、コロナ禍をきっかけとして温泉地・別府の良さが再注目されつつあるようだ。
また、19年8月に英国系の高級ホテル「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」(89室)が開業したほか、20年7月に「スーパーホテル別府駅前」(132室)や「別府風雅」(38室)、同年12月に「ガレリア御堂原」(35室)などのホテルが開業。現在も21年夏開業予定の「星野リゾート 界 別府」(70室)や21年末開業予定の「(仮称)ホテル アマネク別府」(266室)、22年春開業予定の「アパホテル〈別府駅前〉(仮称)」(177室)など、コロナ終息後の需要を見据えたホテル開発の動きが、中止されることなく進んでいる。観光コンテンツとして人気の高い温泉を多数擁する別府の観光地としてのポテンシャルは、依然として高いようだ。
そんな別府では昨年9月、官民を挙げて別府温泉観光を促進するキャンペーン「別府温泉 おもてなし再開」を実施した。同キャンペーンには、別府市長・長野恭紘氏をはじめ、別府地獄めぐりや別府温泉 杉乃井ホテル、別府ラクテンチなどの市内施設の関係者だけでなく、大分マリーンパレス水族館 うみたまご(大分市)やサンリオキャラクターパーク ハーモニーランド(日出町)などの近隣の観光施設も参加。「大手を振って『来てくれ』とはまだいえないけれど、せめて『お客さまを待っています』という気持ちだけでも伝えたい」と、全16タイプのCMでコロナ禍にあえぐ別府の状況をユーモアに変えて発信し、話題を集めた。また、社会現象にまでなった超人気漫画・鬼滅の刃にあやかって、市内の八幡竈門神社やかまど地獄といった鬼伝説などのスポットをめぐる「聖地巡礼 鬼ツアー」を企画するなど、流行・トレンドも押さえながら次なる観光客誘致の策を打ち続けている。
「たしかに今は大変な状況ですが、だからこそ『別府は元気!』ということを全国にアピールしていかなければなりません。実は別府ではコロナ前の18年10月に、テレワークと旅行とを組み合わせたワーケーションの取り組みを試験的に実施していました。たとえばコロナ禍の今なら、ホテルや旅館を1室単位で企業の保養所として借り上げてもらい、そこでワーケーションも行う“現代版の湯治”のような企画も考えられます。別府ではこれからも、時代のニーズに合った新たな観光の在り方を模索しつつ、市民が一丸となっておもてなし力にさらに磨きをかけながら、皆さんのお越しをお待ちしています」(安波氏)。
【坂田 憲治】
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