「人が中心」森ビルの都市DX、六本木ヒルズなどで都市OSを実装(前)
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都市の中心は「人」
森ビル(株)は、「六本木ヒルズ」(東京都港区)を始めとする「街(ヒルズ)」を舞台に都市のDX(デジタルトランスフォーメーション)を行う。4月5日から「ヒルズネットワーク」を開始。ヒルズネットワークとは、利用者が便利で豊かな都市生活を体験できることを目指した都市のデジタルプラットフォーム(都市OS)で、「街(ヒルズ)」を利用する居住者、ワーカー、訪問者などをサービスの対象としている。
森ビル(株)タウンマネジメント事業部TMマーケティング・コミュニケーション部課長、兼ヒルズネットワーク推進グループ課長・北尾真哉氏は、「当社は、人を中心としたまちづくりを実現するために施設などのハード面だけでなく、便利さや快適さを提供するソフト面も大切だと考えて、これまでもまちづくりを実践してきた。ヒルズネットワークのサービスはその考えの下、最新の技術やシステムを取り入れて構築した」という。
DXというと、ITを中心に据えたまちづくりを思い描きがちだが、森ビルが描く都市の中心はあくまで「人」であり、人が快適で便利に暮らすためにデジタルプラットフォームを使うという位置づけだ。森ビルの住居、オフィスビル、美術館、商業施設、文化施設などの各施設がヒルズネットワークによりシームレスにつながることで、さらに街の利便性を向上させ、利用者の体験の価値が向上することを目指す。
オフィスから「街」へ
森ビルは、オフィス、住宅、商業施設、ホテル、文化施設など多様な都市機能が集まる「アークヒルズ」(東京都港区赤坂、1986年竣工)や六本木ヒルズ(東京都港区六本木、2003年竣工)などの再開発・運営に取り組むなかで、「都市をつくり、都市を育む」という考えの下、便利で豊かな都市生活を提供してきた。とくに六本木ヒルズ以降は、タウンマネジメントの手法により、街に住み、働き、訪れる人々とともに、街と人々をつなげ、街のコミュニティを育んできた。その結果、六本木ヒルズはオープンして19年目を迎えるが、今もその魅力は衰えることなく、国内外から毎年4,000万人以上の人々が訪れ続けているという。
森ビルが都市機能を集積させたコンパクトシティの再開発を行うのは、高度経済成長期に虎ノ門・新橋エリアを中心にオフィスビルの開発を行った経験が活きている。森ビルは創業当初、高度経済成長期を支える効率重視のオフィス単一用途の開発を行っていたが、オフィス中心の街は、居住者が少ないため、休日には活気が失われていくようになった。そこで、86年竣工のアークヒルズを皮切りに、住む、働く、集う、遊ぶなど多彩な都市機能をコンパクトに組み込んだ街をつくることで、いつでも活気があり、多くの人が惹き付けられるまちづくりを目指すようになったのだ。
サービスをオンライン完結
ヒルズネットワークでは、居住者、ワーカー、訪問者など街の利用者に対して、「ヒルズアプリ」からワンストップでサービスを提供している。利用者へ個別に提供される「ヒルズID」から属性や街・施設の利用履歴、位置情報などのデータを使って、1人ひとりのライフスタイルに合うサービスを提供するほか、街のさまざまなサービスをオンライン上で完結できるようにする。
たとえば、利用者の属性や位置情報に合わせて、イベントや店舗などの施設情報を優先表示するほか、居住者は宅配やランドリーサービスの通知をフロントから受け取れるなど、街からのお知らせをアプリで受信できるようになった。また、居住者やワーカー、リピーターなどの属性に応じて、ヒルズの店舗利用時にカードやシールなどで提供してきた優待サービスもヒルズアプリに統合した。さらに、これまで物理的なカード(クレジットカード)で行ってきたポイント付与や利用をアプリ上で行えるようにしている。六本木ヒルズの森美術館の予約、入場もアプリ上でチケット購入や入場用QRコードの表示ができるようになった。
ヒルズでは、さまざまなスピーカーを招いて関心事や仕事、アイデアを発信する「ヒルズブレックファスト」や、スターバックスなどの飲食店テナントやオフィステナントと提携した「キッズワークショップ」、コミュニティイベントなどが行われている。21年の夏以降は、各種イベントの申し込み、決済、入場をアプリ上で可能にするほか、レストランの予約もアプリ上でできるように検討が進められている。
(つづく)
【石井 ゆかり】
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