2024年03月29日( 金 )

大西一史・熊本市長に聞く、ポスト震災まちづくりの進捗(2)

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熊本市長 大西 一史 氏

 2016年4月に発生した熊本地震から5年が経過した。震災からの復興は、1つの大きな節目を迎えている。復興のシンボルである熊本城は、天守閣の復旧工事が完了し、4月26日から内部公開がスタートした。JR熊本駅周辺では、同じく4月23日には「アミュプラザくまもと」が開業。駅前のさらなる賑わいへの期待が高まっている。熊本市内を見渡すと、商業施設、バスターミナルなどからなる複合施設「SAKURA MACHI Kumamoto」が19年9月にオープン。街中に防災機能を併せもった新たな拠点が生まれた。熊本市はすでに、震災復興に転じたといえるのか。この節目を機に、今後どのようなまちづくりを進めていくのか。大西一史・熊本市長に話を聞いた。

コロナ禍でも復興着実に(つづき)

 大西 21年度においても、引き続き100億円規模の予算を投入しながら、迅速なワクチン接種に向けた体制整備や、住まい確保が困難な方への支援のほか、事業継続などに取り組む中小企業者や、雇用創出に取り組む企業への支援など、コロナ対策に全精力を傾けていくことにしています。

 このほかにも、陽性が確認された若年層のなかには、中心歓楽街の飲食店などでアルバイトを行っている大学生も多いため、早期発見することで感染拡大を未然に防ぐことを目的として、学内にPCR検査所を設置し、PCR検査を始めたところです。第4波を防ぐ取り組みとして、本市としても積極的に実施しています。

マイクロツーリズムに活路を

 ――コロナ禍での観光振興について、どうお考えですか。

熊本市長 大西 一史 氏
熊本市長 大西 一史 氏

 大西 コロナ禍による市内観光関係の損失額は、236億円程度と試算されています。とくにインバウンド客は前年比99%減となっており、アクセルをまったく踏めない状況です。そのため、本市の観光施策を転換していく必要があります。具体的には、熊本県が進めている「近場で身近な人と一緒に旅する」という「マイクロツーリズム」が非常に有効だと考えているところです。

 Go Toキャンペーンを再開すると、多くの人が全国を移動することによって、感染が急拡大することが懸念されますが、マイクロツーリズムの場合、感染が急拡大することは考えにくいわけです。インバウンドが望めない以上、マイクロツーリズムで消費を回していくのは理にかなっており、さらにこの機会に地元が持つ魅力を再発見することで、地域観光資源をブラッシュアップすることも期待できます。そのようなことから、本市としても、県の取り組みに上乗せした支援策を実施するなど、まずは県内を対象としたかたちで、マイクロツーリズムのプランづくりの検討を現在進めているところです。

 そして、少し先の話にはなりますが、22年3月から約2カ月間、「第38回全国都市緑化くまもとフェア」の開催を予定しています。もともと熊本の震災復興を全国にアピールするためにと考えていたイベントです。また同じ年4月には、「第4回アジア・太平洋水サミット」も予定しています。この2つは、熊本市にとってビッグイベントになりますので、何としても成功させたいと考えています。

 とくに、都市緑化フェアは、花や植物などの生産者を元気づけるきっかけにしたいという思いがあります。本市としても、市長記者会見のときや市庁舎内でなるべく花を飾るなど、熊本産花きの消費拡大を支援しているところです。

まちなかループバスのルート(熊本市HPより)
まちなかループバスのルート(熊本市HPより)

【フリーランスライター・大石 恭正】

(つづく)


<プロフィール>
大西 一史
(おおにし・かずふみ)
1967年12月、熊本市生まれ。92年に日本大学文理学部心理学科卒業後、日商岩井メカトロニクス(株)に入社し、94年に退職。内閣官房副長官秘書を経て、97年に熊本県議に就任(5期)。2014年12月に熊本市長に就任し、現在2期目。

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