2024年04月24日( 水 )

「観光立国」にコロナ禍の大打撃、問われるインバウンド事業の本質(前)

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 日本は2003年以降、「観光立国」としてインバウンド事業拡大に力を入れてきた。リーマン・ショック、東日本大震災と苦難を受けながらも驚異的な躍進を続けてきたが、コロナ禍によってその状況は大きく変わり、関連企業は軒並み厳しい状況に追い込まれている。

「観光立国」の始まり

【図1】訪日外国人旅行者推移

 小泉純一郎首相(当時)は2003年1月、国際交流の増進および日本経済の活性化を目標とした「観光立国」を提唱。観光立国懇談会を主宰し、10年に訪日外国人旅行者数1,000万人を目指す構想が発表された。訪日旅行促進活動として同年4月、ビジット・ジャパン事業が開始。06年には1963年に制定された旧観光基本法を改正し、観光立国推進基本法が成立し、翌6月には観光立国推進基本計画が閣議決定され、08年10月の観光庁設置とともに、日本はインバウンド事業拡大に向けて本格的に始動した。

 観光立国の実現に関する施策の基本理念には、「地域における創意工夫を生かした主体的な取り組みを尊重しつつ、地域の住民が誇りと愛着をもつことのできる活力に満ちた地域社会の持続可能な発展を通じて国内外からの観光旅行を促進する」ことがあり、サステナブル性を前提にした地方創生がある。

 03年当時の訪日外国人旅行者数は、約521万1,700人(アジア圏から約351万人、欧米・欧州圏から約144万人)。それから08年(約835万人)までは目標の1,000万人に向けて順調な推移をたどっていたものの、リーマン・ショックや東日本大震災などの影響により、その後は低迷。11年は約621万人まで落ち込んだ。

 しかし、12年末からのアベノミクスにより急激な円安が起きたことで、訪日外国人旅行者数は急伸。13年には約1,034万人となった。14年10月の免税制度規制緩和によって、それまで免税販売の対象となっていなかった消耗品(食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品)を含めたすべての品目が新たに免税対象となったことで、アジア圏を中心に訪日外国人旅行者数は急伸。円安の後押しもあり、大勢の外国人旅行者が日本の商品を大量に購入し、自国に持ち帰る様子は各メディアに大々的に報じられ、15年には「爆買い」がその年の流行語大賞に選ばれた。

 さらに、東京オリンピック・パラリンピック開催が決まり、14年6月に「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014」によって訪日外国人旅行者数2,000万人を目指すことが明記された。訪日外国人旅行者数の増加の勢いは止まらず、15年には約1,974万人となり、同年日本人の出国者数(約1,621万人)を上回った。インバウンドがアウトバウンドを超えるのは45年ぶりだった。

インバウンド消費約84%減

 観光庁が20年3月31日に発表した「19年の訪日外国人旅行消費額(確報)」(【図2】)によれば、19年の訪日外国人旅行消費額は4兆8,135億円。輸出規模においては自動車の11兆9,712億円に次いで第2位となり、日本における基幹産業となった。

【図2】2019年の訪日外国人旅行消費額(確報)

(つづく)

【麓 由哉】

(中)

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