来春、青果市場跡地再開発が完了「博多SOUTH」はどう変わるか!?(2)
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エリア一帯に残る古代「奴国」繁栄の痕跡
古代~中世の福岡・博多は、冷泉津と呼ばれる博多湾の入り江が深く湾入しており、現在よりもずっと内陸側に海岸線が食い込んでいたとされている。JR竹下駅の西側、那珂川を挟んだ対岸に位置する南区塩原の地名に入っている「塩」などに、今より海が近かったころの名残がある。
そうしたなか、博多SOUTH一帯は那珂川の河口付近に広がる肥沃な平野だったとされ、古代から多くの人が暮らしていた形跡が残されている。その代表的なものが、日本で稲作が開始された最初期の遺跡として、国の史跡にも指定されている「板付遺跡」(板付2・3丁目)だ。板付遺跡は、弥生期を代表する遺跡の1つであり、江辻遺跡(福岡県粕屋町)についで日本でも最初期の環濠集落でもある。ここでは環濠をめぐらせた集落跡や水田跡が発見されたほか、甕棺墓から銅剣や銅矛なども見つかっており、当時の有力者が同地で台頭していたことが推測されている。なお現在、板付遺跡には広場や竪穴式住居、貯蔵穴、墓地などが復元されているほか、隣接して展示施設「板付遺跡弥生館」なども建てられており、展示物や収蔵物から当時の生活の様子をうかがい知ることができる。
この板付遺跡の周辺には当時、複数の集落が広がっていたようで、諸岡遺跡(諸岡4丁目)や那珂遺跡(那珂6丁目)、那珂休平遺跡(那珂4丁目)、金隈遺跡(金の隈1丁目)、宝満尾遺跡(東平尾3丁目)、比恵遺跡(博多駅南5丁目)、三筑遺跡(三筑1丁目)などの数々の遺跡のほか、東光寺剣塚古墳(東光寺町1丁目)や今里不動古墳(金の隈2丁目)などの古墳も見つかっている。古墳のなかでユニークなのは、古墳時代初期の前方後円墳であり、九州で最も古い古墳とされる「那珂八幡古墳」(那珂1丁目)で、小高い山のようになった墳頂には「那珂八幡宮」という神社が建立されている。神社がいつ建てられたのかは定かではないが、全国に八幡信仰が広がったのが鎌倉期以降であり、同古墳からも鎌倉時代の土師皿や石鍋などが出土しているため、おそらく鎌倉期の建立だと推察される。古墳の前方部分は大部分が削平されてしまっているが、社殿の立地する後円部分は比較的良好なかたちで現存。いずれにせよ、古墳のうえに建つ神社という、ユニークな組み合わせの遺跡だ。
なお、こうした博多SOUTH一帯に残る遺跡群は、同エリアから春日・大野城域までの福岡平野全体を支配していたとされる政治的統一体であり、金印で知られる「奴国」の痕跡のようだ。文献上に現れる日本最古の国家とされる奴国がこの博多SOUTHに存在したというのは、いかにこの場所が古代から稲作に適した肥沃な土地であったかを示すと同時に、何だか歴史的なロマンを感じずにはいられない。
(つづく)
【坂田 憲治】
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