2024年04月19日( 金 )

盛り上がりを見せている分散型金融、DeFi市場(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国を代表する仮想通貨取引所の先月のニュースによると、仮想通貨を売買するために必要となる銀行口座の新規開設数が、今年4月に400万に達したという。仮想通貨に対する若者の関心は、昨年イールドファーミング(※1)で話題を集めていたDeFi(分散型金融)市場にも広がり、その市場は成長を続けている。今回は金融の新しいサービスの形態として、銀行を破壊するほどの潜在力をもっているDeFiを取り上げてみよう。

DeFiとは

DeFi イメージ 仮想通貨の騰落が話題となっている。韓国では、とくに20代、30代が仮想通貨に熱狂しており、韓国政府は仮想通貨バブルが崩壊する可能性について、警鐘を鳴らし続けている。しかし、不動産投資をするほどの資金もなく、デジタル化に慣れていて、就職もままならない若者が、厳しい現実のなかで選択できる数少ない選択の1つとして、仮想通貨に関心を示しているのは、当然の結果である。

 DeFi(ディーファイ)とは、Decentralized Financeの頭文字を取って略したもので、一般的には「分散型金融」などと訳されている。

 DeFiは、仮想通貨が得意とする送金だけでなく、仮想通貨を利用して融資、投資などのサービスを利用できるようにしたものだ。DeFiは、従来の金融分野のサービスを、ブロックチェーンとそのうえで動くプログラムで人の手を使わずに実現する。そのため、今まで莫大なコストをかけて行ってきた金融サービスを、DeFiなら数十分の一のコストで実現できる。

 DeFiで、お金を貸したい人とお金を借りたい人を直接つなぐ「P2P(Peer to Peer)」 の取引方法が可能になったのは、仮想通貨に内蔵されたある機能のおかげだ。たとえば、仮想通貨のイーサリアムに内蔵された機能である「スマートコントラクト(Smart Contract)」では、すでに入力された条件を満たした際に、取引が実行されるように設計されているのだ。

 このようなDeFiに魅力を感じる企業と個人が増えて、市場はますます成長し、さらに多くの資金が市場に流れ込んでいる。米国のオンライン決済サービス最大手であるペイパルは、今年中にDeFi取引所である「Bullish Global(ブリッシュ・グローバル)」を設立すると発表した。このために用意されている資金は100億ドルだという。

 JPモーガンによると、今年の初めから最近までの間に、DeFi市場規模は150億ドルから650億ドルと5倍近い規模に成長しているという。保証金の金額も731億3,000万ドルと、1年前と比べて76倍ほど伸びていることがわかった。

 このように市場が成長している理由として、収益率が高いことが挙げられる。取引所に仮想通貨をステーキング(※2)すると、少なくとも年10%から、多い場合には年20%の利益が発生する。銀行などと比較できないほど高い収益率である。加えて、仮想通貨を預けたときに取引所から受け取るガバナンスコインを売ると、利益はもっと高くなる。コインが上場したら販売して利益を得ることなどを、イールドファーミングという。

(つづく)

※1:分散型金融サービスに資産を貸し出したり、提供したりすることで利益を得る方法。 ^
※2:仮想通貨を保有しながら報酬を得ることができる仕組み。 ^

(後)

関連記事