2024年04月20日( 土 )

盛り上がりを見せている分散型金融、DeFi市場(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国を代表する仮想通貨取引所の先月のニュースによると、仮想通貨を売買するために必要となる銀行口座の新規開設数が、今年4月に400万に達したという。仮想通貨に対する若者の関心は、昨年イールドファーミング()で話題を集めていたDeFi(分散型金融)市場にも広がり、その市場は成長を続けている。今回は金融の新しいサービスの形態として、銀行を破壊するほどの潜在力をもっているDeFiを取り上げてみよう。

DeFiの仕組み

 DeFiの仕組みとして、暗号通貨融資サービスの代表格であるコンパウンドを例に挙げて説明する。コンパウンドの貸し出しをするときは、まずコンパウンドのページに行き、仮想通貨のイーサリアムを選ぶ。次に貸し出し額を選んだ後、「サプライ(提供)」ボタンを押すと、自分のウォレットからコンパウンドのブロックチェーンに送金が行われて、貸し出しが完了する。

 利率は、貸したい人と借りたい人の需給次第で常に変動する。加えて、貸し出したイーサリアムは、コンパウンドの運営者が預かるのではなく、ブロックチェーン上に保管(ロック)される。保管されたイーサリアムは誰も関与することができず、ブロックチェーン上のプログラムにより管理される。そのため、借りたい人は保管場所から借りるイメージで、当事者しか取引に関与できない仕組みだ。

 この仕組みが理解されたため、DeFiの取引が増加している。DeFi取引所の代表格であるUniswap(ユニスワップ)の取引高が中央集権型取引所のCoinbase(コインベース)の取引高を超えたことがニュースとなった。分散型取引所(DEX)全体の規模が拡大している。

 しかし、このようにDeFi市場が拡大しているものの、DeFiは仮想通貨をベースにしたサービスであり、法定通貨をベースに行われる既存の金融サービスのように、関連する法規制も揃っておらず、当局ではDeFiサービスはまだ正式に認められていない。

DeFiのメリットと課題

 DeFiではプログラムによりすべての取引が実行されるため、コストが安く、スピードも早いというメリットがあり、手数料が高くて実現できなかった小口の取引が実現される可能性もある。加えて、DeFiの各サービスは、基本的にイーサリアムのウォレットさえあれば利用できるため、スマホ1つあれば開設できるという大きなメリットもある。さらに、中央集権型の取引所とは異なり、ハッキングなどで自分の資産がなくなることを懸念せず、安心して預けられる。

 いいことずくめに見えるDeFiには、いくつかの課題もある。まず、DeFiサービスは介入する金融機関が存在しないため、セキュリティなどのトラブルが発生した際には救済されない可能性が高い。昨年は17件のハッキング事故が報告されており、被害金額も1億5,400万ドルに達している。加えて、DeFiの盛り上がりによりイーサリアムの送金手数料は高騰しており、融資金額より送金手数料のほうが高くなるという事態も起こっている。また、DeFiは人の手を使わずにプログラム通りに実行されるため、プログラムにバグ(欠陥)がある場合にもトラブルに巻き込まれる。

 DeFiは、このような課題を乗り越えて金融機関を代替できる存在になるのだろうか。今後の行方が注目を集めている。しかし、規制次第で市場の方向性が大きく変わる可能性もあるため、市場の動向に注意が必要であることも述べておきたい。

(了)

※:分散型金融サービスに資産を貸し出したり、提供したりすることで利益を得る方法。 ^

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