2024年04月24日( 水 )

近隣諸国との友好関係樹立拒絶菅内閣

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「竹島問題で韓国が意義を唱えているが、日本政府が対応を変えずに韓国が東京五輪をボイコットするなら、責めを負うべきは日本政府だ」と訴えた6月4日付の記事を紹介する。

東京五輪の聖火リレールートを表記する日本地図に、日本が領有を主張している竹島の表記があり、国境線を示す線が引かれ、竹島が日本領土である表記として示されている。
このことについて、韓国から異議が唱えられている。
元内閣総理大臣の鳩山友紀夫氏がツイッターでこのことについて触れた。

鳩山氏は6月2日に、
「韓国の大統領選の候補が竹島の日本領の表記を変えない限り韓国の五輪ボイコットもあり得ると発言したそうだ」
「可愛げのない発言だが、アメリカの地図では竹島は韓国領(独島)となっていることをご存知ですか」
「保守派の皆さんは親米なので抗議できないのですか」
などとツイートした。

このことについて、東京スポーツ紙は、
鳩山由紀夫氏 「米国の地図では竹島は韓国領(独島)となっている」
https://bit.ly/3vOj9ZF
を掲載。

記事は、
「(公財)「日本国際問題研究所」によると、サンフランシスコ講和条約が1952年に発効後、53~97年にかけて、起草国である米国政府が作成した航空図11枚で、いずれも竹島は日本領と記してあるという。」
と記述した。

「日本国際問題研究所」は元外務省所管のシンクタンク。
外務省の外郭団体といえる。
日本政府の主張を示しているに過ぎない。

韓国との係争地である竹島問題は、サンフランシスコ講和条約の発効で日本が独立を回復する直前、韓国大統領・李承晩(イスンマン)が国境ラインを宣言し、このなかで竹島を韓国領域と認定した。
日本は独立を回復していない状態にあり、この問題に対し、日本が直接異議を唱えることはできなかった。

韓国・李承晩政権は米国の認知のもとに竹島の韓国帰属を一方的に宣言した。
日本は独立回復後、竹島の領有を主張しているが、竹島=独島は韓国によって実効支配されている。

尖閣諸島については日中両国が領有権を主張しているが、日本が実効支配している。
これと逆の現象が竹島=独島にある。
竹島=独島の帰属について、日本政府は日本領有を主張しているが、米国政府の対応はこれとは異なる。

2008年7月末、米国のブッシュ(子)大統領が竹島=独島を韓国帰属にすることを決したと報じられている。

「米、竹島の帰属先を再び「韓国」へ 大統領が指示」
08年7月31日 10時44分 発信地:ワシントンD.C./米国
https://www.afpbb.com/articles/-/2424698

【7月31日 AFP】
米政府の地名委員会(Board on Geographic Names、BGN)が竹島(韓国名・独島)の帰属を「一部韓国」から「主権未決定」に変更した問題で、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は30日、帰属先を「韓国」に戻すことを決定したと明らかにした。

ホワイトハウス(White House)でアジア各国メディアと行った会見で、ブッシュ大統領は「(コンドリーザ・)ライス(Condoleezza Rice)国務長官にデータベースの見直しを指示した。データベースは7日前の状態に戻される」と語った。

一方で、竹島をめぐる問題は日韓両政府の間で解決されるべきだとも指摘した。

BGNによる竹島の帰属先変更をめぐっては、韓国の韓昇洙(ハン・スンス、HanSeung-Soo)首相が「非常に遺憾」と述べたほか、韓国当局者によると李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)大統領も「激怒」したという。

ブッシュ大統領は来週、韓国を訪問する。(c)AFP

外務省元国際情報局長・孫崎享氏が
『日本の国境問題』(ちくま新書)
https://amzn.to/2TJVpaZ
で明らかにされているが、日本と隣国の領有権問題代表である尖閣諸島、北方4島、竹島=独島問題は、すべて、米国が仕組んだ人為的な紛争事案であると見なすことができる。
日本と中国、ロシア、韓国との間に軋轢(あつれき)が生じるように、人為的に紛争の種が埋め込まれた。

五輪を「平和の祭典」と主張するなら、五輪に紛争の種を持ち込むべきでない。
五輪憲章にも反する。
五輪の地図表記に政治的な紛争事案を持ち込むことは間違っている。
日本が対応を変えるべきだ。

この問題について東京新聞が次の重要事実を指摘した。

組織委の竹島表示、韓国で反発 IOCに対応求める
https://www.tokyo-np.co.jp/article/108445

「【ソウル共同】東京五輪・パラリンピック組織委員会がホームページの日本地図に島根県の竹島(韓国名・独島)を表示していることに、島の領有権を主張する韓国で反発が強まっている。
削除されない場合は「ボイコットすべきだ」との強硬な意見も出ている。

韓国側は、2018年の平昌冬季五輪の際に、日本側の抗議を受けたIOCの勧告に従って、朝鮮半島の地図が描かれた「統一旗」から竹島の表示を削除したと主張。
今回もIOCは同様の対応を取るべきだとの意見が多く、韓国政府は1日、仲裁を求める書簡をIOCに送った」

18年の平昌冬季五輪の際に、日本側が抗議して、IOCの勧告に従って朝鮮半島の地図が描かれた「統一旗」から竹島の表示を削除したことが事実なら、日本の組織委は五輪聖火リレーの地図表記を変更すべきだ。
地図に国境線を引く意味はない。

問題の根源をよく考えるべきだ。
日本の国境問題は、いずれも米国の深謀遠慮で仕組まれた面がある。
反論があるかもしれないが、北方4島、尖閣諸島、竹島=独島の問題で軋轢が生じていることは事実。

尖閣諸島領有権問題については1972年の日中国交正常化交渉の際に議論の対象になった。
このとき、領有権問題については解決を先送りすることが決められた。
いわゆる「棚上げ合意」が存在する。
このことは読売新聞が社説で明言している。

ところが、日本政府はその後、態度を変えて、
「日中の間に解決すべき領有権問題は存在しない」
というようになった。

これを正式に閣議決定したのが2010年6月8日。
菅直人内閣は発足のその日に閣議決定し、尖閣海域の漁船取り締まりを国内法基準に変更した。
このために10年9月の中国漁船衝突事件が発生した。

米国は一貫して尖閣諸島の領有権問題については、中国、日本のいずれの側にも立たないことを明言している。

日本のメディアは、尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であることを米国政府が認めたと大騒ぎして報道するが、何の意味もない。
尖閣諸島は日本の実効支配下にあり、日米安保条約第5条の適用範囲の定義に当てはまるだけのこと。

米国は尖閣諸島の領有権について日本の主張を認めていないのだから、尖閣有事の際に日本側に立つ保証はどこにもない。

菅義偉内閣の加藤勝信官房長官は6月2日の会見で、
「(竹島は)歴史的事実に照らしても、国際法上も、明らかに日本固有の領土」
だと述べて、抗議は一切受け入れられないと反論したことを明らかにした。

加藤氏は、五輪憲章において、国際オリンピック委員会(IOC)の使命と役割として、スポーツと選手を政治的、または商業的に不適切に利用することに反対するとの条項があることが知られていると説明したが、このことは、逆に日本政府の対応修正を求めるものだ。

政治的に対立する問題をあえて五輪聖火リレーの表記に反映させることが五輪の「政治的利用」にあたる。

韓国のスポーツ競技団体を統括し、オリンピック委員会も兼ねる大韓体育会(KSOC)のキム・ボヨン広報室長はロイターに対し、
「独島は韓国領であり、政治的中立性は大会で保証されなければならない。日本の行為は政治的な行動と見なすことができ、こうした行動はオリンピックの精神に反すると我々は考えるため、(IOCに)書簡を送付した」
と語ったと報じられているが、この主張は正論といえる。

そもそも、菅内閣がコロナ・パンデミック下で五輪開催を強行しようとしていること自体が「五輪の政治的利用」そのもの。
日本政府が対応を変えずに韓国が東京五輪をボイコットするなら、責めを負うべきは日本政府だ。

国境問題が、日本と隣国との紛争惹起(じゃっき)を意図して創作された側面が強いという過去の経緯を踏まえ、これら諸国は近隣友好関係構築を目指して、問題を友好的、平和的に解決する努力を注ぐべきだ。

旭日旗の問題にしろ、竹島=独島の問題にしろ、日本政府の対応は料簡が狭すぎる。


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植草一秀の『知られざる真実』

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