2024年04月25日( 木 )

『日本弓道について』(7)筆者の弓歴(後)

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 今年5月に弓道の写真集を出版した。父を師として、42歳から弓を始め、弓歴は30年を過ぎた。弓を初めた頃から30年かけて撮影してきた、名人といわれる先生、弓道大会、弓にまつわる演武や祭などを載せた写真集だ。長年、弓を続けてきた者として、弓についてつづる。

錬士に合格

 弓の仲間と2009年6月、熊本県の植木道場へ審査を受けに行った。錬士の審査は一次を合格すれば二次審査がある。一次審査は1本あたったが、2本目を外した。仲間には「また審査に来るか」とぼやいていた。審査では甲矢、乙矢の2本を射る。2本ともあたるのを束(そく)といい、1本のみあたるのを半矢(はんや)と呼ぶ。

 全員の一次審査が終了すると、一次審査の合格者が張り出される。毎回、受験者の1割近くが合格している。この日の受験者は約150名であった。

 一次合格者の合格通知をもって担当者がやってきた。担当者が合格通知を張る前にチラッと私の受験番号が見えた。「やったー、合格した」。この日は手に汗をかくこともなく、ドキドキすることもなく妙に落ち着いていた。

 二次審査が始まる前に各審査員による面接を受ける。顔見知りの先生にあたればよいと思っていたら、顔が怖い先生にあたってしまった。

 初心者指導法、弓の基本についての質問があった。「君は弓に対する心構えがいいな」と。一次審査のとき、前列が矢を落としてしまった。その処理が終わるまで落ち着いて待った。処理が終わってから私の行射を始めたのである。それを審査員が見ていたのである。「君は金太郎さんの息子かね。お父さんも墓場で喜んでいるだろう」とも。父に助けられた。

 二次審査は持的射礼(もちまとしゃれい)といい、礼法に叶った5人で動作が一致するように動き、順番がきたら跪坐から立ち上がり弓を引くことになる。歩き方、立ち方、座り方とすべて審査される。

 2本のうち1本あたれば合格する(射がよければ)。1本目は的から外れた。2本目は失敗できない。何とか頑張って離すタイミングを粘った。「ここで外してなるものか」。矢は弓から外れて飛んで行った。スローモーションを見ているようであった。「ポン」と音がして何とか的にあたったのである。神がかっていた。

 審査には仲間4人で受験に行ったが、合格したのは私だけであった。錬士へは五段から15年もかかった。審査中に矢を落としたりもした。

 山やスキー場でも絶えず弓のことを考えていた。苦労や失敗が多い分、弓道をたくさん勉強し、写真も多く撮ってきた。その分、指導には熱心になる。どこが悪いと指摘するのはたやすい。どうしたらより良くなるかをアドバスイスすることを心がけている。基本に忠実が筆者の信条だ。

弓を始めてみたい方へ

 弓を引いてポンと矢が的にあたれば、たちまち弓の虜になる。これほど快適なことはない。福岡市で区ごとに体育館があり、弓道場が併設されている。弓道教室が開催されているので、市政だよりを見て申し込んでください。教室では道具も準備しています。

弓道 競技大会 中(あたり)、外れの看的
競技大会では中(あたり)、外れの看的(かんてき)を行う。
決勝では的の中心に近い方が優勝となる(遠近法も採用)。
審査では的のどこにあたってもよいが、あたりが強いとパンと高い音がするので、
音でも射の良し悪しを判断することがある(写真集より)

(了)

福岡市区弓道連盟会員
錬士五段
池田 友行

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