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2021年07月09日 09:30

山口FG、吉村猛氏の再任を否決 同グループの行く末を占う(後)

 山口フィナンシャルグループ(FG)は代表取締役会長グループCEOだった吉村猛氏を解任。多くのメディアが一斉に報じたが、解任をめぐる真相は藪の中。同グループは生まれ変わることができるのだろうか。独自の情報収集と視点により、同グループを取り巻く課題と今後の行方を分析する。

ふくおかFGの「1強体制」阻止が課題

 【表3】は山口FGおよび傘下3行の経営成績推移表。【表4】は九州の金融グループの経営成績比較表である。

 山口FGの21年3月期の経常収益は前期比78億5,000万円増の1,832億5,500万円(同4.5%増)となっている。経常利益は同3億6,300万円増の369億6,500万円(同1.0%増)。当期純利益は同4億3,400万円減の249億5,700万円(同1.7%減)と、経費節減効果により減少幅は小さい。

 山口銀行の21年3月期の経常収益は同4億3,300万円増の982億9,500万円(同0.4%増)と伸び率は低い。経常利益は同29億9,700万円減の277億5,600万円(同9.7%減)と、傘下行のなかで唯一マイナスとなった。当期純利益も同31億6,100万円減の198億4,000万円(同13.7%減)と唯一マイナスとなり、厳しい状況にある。

 もみじ銀行の21年3月期の経常収益は同39億7,000万円増の476億3,800万円(同9.1%増)。経常利益は同16億6,800万円増の93億2,000万円(同21.8%増)。当期純利益は同10億2,600万円増の73億1,200万円(同16.3%増)となった。

 北九州銀行の21年3月期の経常収益は同17億6,600万円増の174億9,600万円(同11.2%増)。経常利益は同17億6,300万円増の72億2,000万円(同32.3%増)と増加率はトップ。当期純利益も同11億8,400万円増の52億9,400万円(同28.8%増)と大幅に増加している。

 もみじ銀行と北九州銀行が山口銀行の当期純利益の減少をカバーし、山口FGの減益幅を小さくしていることがわかる。

 九州にある地銀4金融グループの21年3月期決算を見ると、当期純利益のトップはふくおかFGで、前期比659億6,000万円減の446億4,700万円(前期比59.6%減)と大幅な減益となっている。

 2位は北九州銀行を傘下に置く山口FGで、同4億3,400万円減の249億5,700万円(同1.7%減)に微減。3位は西日本フィナンシャルホールディングス(FH)で、同21億3,400万円減の180億8,800万円(同10.6%減)。4位は九州FGで、同32億4,900万円減の150億1,200万円(同17.8%減)となっている。

 ここで目に付くのは、ふくおかFGは6割近い大幅な減益にもかかわらず、3位以下の金融グループの2倍以上の収益を上げていることである。ふくおかFGの1強体制をいかに阻止するかが、今後の大きな課題ではないだろうか。

記者会見で吉村氏解任の経緯を説明

 椋梨社長ら3人が急遽、6月25日午後6時から山口FGの本店で記者会見し、吉村氏解任の経緯を説明した。

 解任の理由について、椋梨社長は「吉村氏の新規事業の進め方に対し、リスク認識をはじめとした社内の十分な検討と合意形成を求める声が取締役会から多数上がった」と説明。「取締役会では十分な検討と合意形成を求める意見が多く出され、長時間にわたって議論したが合意点は見い出せなかった。すべての取締役が良識ある判断を行った結果、今回の結論に至った」と最終判断に至るまでの経緯について述べた。

 吉村氏に代わってグループCEOに就いたことについて、椋梨社長は「吉村前会長はグループの改革を主導し、将来への道標として経営計画を策定していただいたと認識している。経営方式に変わりはなく、新体制では対話を重視し、これまで以上に改革に積極的かつスピーディーに取り組んでいく」と抱負を語った。一方、吉村氏の解任に女性問題は無関係との見解を示したという。

 以上は、山口FGの吉村氏の会長再任を否決した経緯である。ここからは、私の推測を含めて山口FGの今後の行方を推測したい。

山口FGのトラウマ

 第一生命保険は20年10月2日、女性保険外交員の金融詐欺事件を発表。その女性外交員とは、西日本マーケット統括部徳山分室(山口県周南市)に勤務していた正下文子元特別調査役である。客に架空の金融取引をもちかけて、不正に資金を集めていたことが判明し、7月3日付で懲戒解雇された。

 第一生命保険は、正下元特別調査役を詐欺容疑で山口県警周南署に刑事告発した。その後の調査で、被害者は3人増の計24人、被害額は9,200万円増の計19億5,100万円に上ると公表。加えて、被害者全員に対して裁判費用を除く全額を補てんすると発表している。

 今回、吉村氏が取締役への降格を受け入れたのは、山口FGのCEOとして刑事告訴されることを避けるためであり、金融当局のお墨付きもあったとすれば辻褄が合う。吉村氏は取締役になっても実権を握っているというのが現状だ。山口FGは【表5】の通り、今も田中耕三氏のトラウマ(筆者著『実録 頭取交替』)から逃げられないでいるというのが、実態ではないだろうか。

 山口FGの吉村氏の解任を知った九州地銀のある幹部は、「北九州銀行は生き残ることが厳しくなったのでは」と話し、その理由として人口動態を挙げた。福岡市の人口は約161万人。一方、北九州市の人口は約94万人。その差は約67万人で、経済力の格差は顕著となっている。

 今回、吉村氏が解任されたにもかかわらず、取締役に残ったこと自体が異常である。CEOに就任した椋梨社長は、吉村氏を退任に追い込むくらいの大改革を断行し、行員のやる気を引き出せる体制づくりに早急に取り組むことが求められそうだ。

(了)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

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